当時ヒットしていた日本の漫画『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ作)からインスパイアされた可能性もありますが、乗っ取られた軍艦が主題になる以外は共通点はありません。
『沈黙の戦艦』シリーズ第1弾とは言うものの、正式な続編は『暴走特急(原題:Under Siege 2)』セガールの主演作のほとんどにこの邦題が付く事となったことによる食い違いで、次作ではありますが『沈黙の要塞』は別物の映画です。それだけ、この映画のインパクトは大きかったし、大ヒットでもありました。
ストーリーは、ウィリアム・ストラニクス(トミー・リー・ジョーンズ)が率いるテロリストの一味に乗っ取られた戦艦ミズーリで、ケーシー・ライバック兵曹(スティーブン・セガール)の元特殊部隊・現コックが逆襲するというものです。
しかし、このころはまだ、セガール一人の独壇場ではなく、セガールと仲間たちが協力してテロリストたち相手に戦うという場面もあって、砲撃シーンなどでは一味が一丸となってミズーリの主砲を撃ってテロリストたちの逃走用潜水艦を撃沈するという展開になっています。
『ダイ・ハード』の戦艦ミズーリー版海洋版みたいなもんで、とにかくコック長ケーシー・ライバック兵曹の大活躍です。無駄のない流れるような動きで30人のテロリストたちを、手際よく片づけて行くセガールのクールさに魅了されてしまいます。その瞬殺技の切れ味は、まさに必殺仕事人も顔負けのウルトラ級です。
そのためか『ダイ・ハード3』(1995年)には、この映画が公開され大ヒットしたことで、当初海上を舞台とした作品にしようとしたのが大幅に変更されたという逸話があるそうです。
おきまりのアクション(殴り合い)が、たくさんありますが1シーンが短くくどくありません。こんだけ殴れば気絶するやろと思うほど延々と殴り合いが続くのが多い中、さっぱりと次に移って気持ちがよろしい。
スティーブン・セガールのアクションはさすがに合気道高段者、体幹がブレずスイスイとこなしています。それだけにどこか物足りなくも感じるのは、観るもののわがままなのでしょうか?
カウンター・ヒーローのトミー・リー・ジョーンズとクリル中佐(ゲイリー・ビジー)が素晴らしく良く、どちらも血も涙もない冷血漢ですが、どことなく憎めないところもあって、特に若き日のトミー・リー・ジョーンズは遅咲きの名優といっても過言でない演技をしています。ただ、何もハード・ロッカーで役を嵌めなくてもよかったのではないかとも思いもしますが。
また、ゲイリー・ビジーの女装もグロテスクに素晴らしく、とにもかくにもコメディーでもあるまいしここまでの悪ふざけに、喝采を贈ります。
この映画がヒットしたことで、セガール主演の映画が日本公開される際には「沈黙の~」という邦題が付けられることが定番化しています。『沈黙シリーズ』と呼ばれていますが、これはセガール主演であることをアピールするための商業上の理由であり、ストーリーも繋がっていませんし、セガールの役名も全く違うものとなっています。正式な続編の『暴走特急』には何故か「沈黙」が付いていませんが。
この映画、強すぎるとか、そんなことあり得ないとか、言わずにスピーディかつスタイリッシュなアクションを単純に面白く楽しめばいいのではありませんか?!