映画『八十日間世界一周』豪華絢爛好き放題の世界旅行です?!
この映画『八十日間世界一周(Around the World in 80 Days)』は、1956年にアメリカで公開された映画です。第29回アカデミー賞にて作品賞を始めとした5部門を受賞しました。
目次
1.概要
フランスの作家、ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)の同名小説を原作としています。1872年、主人公のフォッグは20,000ポンドの賭けに勝利すべく、気球・鉄道・蒸気船などを利用して80日間での世界一周を目指します。
大プロデューサーとして知られたマイク・トッド(Mike Todd)がプロデュース、イギリス出身の若手監督マイケル・アンダーソンが監督し、配給はユナイテッド・アーティスツ社でした(現在はワーナー・ブラザーズが版権を保有)。
トッド自身の肝煎りで開発された「トッドAO方式」でワイドスクリーン撮影された大作で、日本を含む世界各国の多彩な風景をカラー撮影で楽しめる観光映画に仕上がっています。
主演のフォッグ役には、イギリス紳士的風貌の持ち主である名優デヴィッド・ニーヴン、パスパルトゥー役には「カンティンフラス」のニックネームで知られた世界的コメディアンのマリオ・モレノ、アウダ役は新進女優であったシャーリー・マクレーンがそれぞれ充てられました。
数十人の有名な俳優が部分部分に入れ替わり立ち替わり登場したので、観客にとっては「スターを探せ」ごっこを楽しむことができ作品の魅力を高めました(たとえば、端役に過ぎない酒場のピアノ弾きがフランク・シナトラであったというようなお遊びです)。大俳優等がちょい役で出演することをこの作品以来「カメオ出演」というようになりました。
なおストーリーはほぼ原作に準じていますが、イギリス風ユーモアの要素が加味されて、フォッグの言動がさらに誇張されています。
2.ストーリー
1)プロローグ
放送ジャーナリストのエドワード・R・マローが、ジュール・ヴェルヌの小説”月世界旅行”を映像化したジョルジュ・メリエスの映画”月世界旅行”(1902年)を紹介しています。
その後、マローは人類の科学進歩を語り、この物語がジュール・ヴェルヌの”八十日間世界一周”であることを伝えます。
2)1872年、ロンドン
「リフォーム・クラブ」の会員であるフィリアス・フォッグ(デヴィッド・ニーヴン)は、使用人としてパスパルトゥー(カンティンフラス)を雇いました。
クラブに向かったフォッグは、イングランド銀行から大金が奪われた話をメンバーであり銀行の頭取のゴージャー・ラルフ(ロバート・モーレイ)としていた際、犯人の逃亡は可能であり、80日間あれば世界一周も可能だと断言し、2万ポンドを賭けるというフォッグは直ちに出発すると伝え、戻るのが9月21日土曜日の午後8時45分であることを確認しました。
屋敷に戻ったフォッグはパスパルトゥーを呼び、10分後に世界旅行に出発することを伝えました。
3)パリ
旅行社に向かったフォッグは、どの交通手段にするかを検討し、支店長ガッセ(シャルル・ボワイエ)が所有する気球を買い取ることにしました。
4)スペイン
フォッグはパスパルトゥーを伴い気球で飛び立ち、アルプスを越えて南フランスのコートダジュールに向かおうとしましたが、気球を降下させたフォッグは、人々の通訳をするパスパルトゥーから、その場がスペインだと知らされるのでした。
マルセイユに行くつもりだったフォッグは、船を所有しているというタンジールの豪族アフメド・アブドゥッラー(ギルバート・ローランド)と交渉するために酒場に向かいました。
フォッグから事情を聴いたアブドゥッラーは、船を提供する代わりに見事なダンスとカポーテ振りを披露したパスパルトゥーの闘牛が見たいことを伝えました。
翌日、闘牛場に姿を現したフォッグは、闘牛士(ルイス・ミゲル・ドミンギン)に促されるパスパルトゥーを見守りました。
怯えるパスパルトゥーでしたが、彼は見事な立ち振る舞いで観客の歓声を受け、満足したアブドゥッラーはフォッグに快く船を提供しました。
5)ロンドン
今回の件の賭けは話題となり、フォッグが既にスエズ運河に到着したことが分かり、彼の負けに賭けているクラブのメンバーは肩を落とすのでした。
6)スエズ運河
イングランド銀行襲撃事件を捜査するスコットランドヤードのフィックス刑事(ロバート・ニュートン)は、世界一周の途中だと言う到着したフォッグを犯人と疑いました。
フィックスは、フォッグが乗船する「モンゴリア」船上でパスパルトゥーに近づき、旅の真の目的を探ろうとすします。
7)ボンベイ(現ムンバイ)
カルカッタに向かおうとしていたフォッグをフィックスは監視します。
街で牛を見かけたパスパルトゥーは、闘牛の真似をしたために民衆の怒りを買い追い回され、汽車の出発にかろうじて間に合いました。
その後、汽車は停車してしまい、フォッグは、グレート・インディアン・レイルウェイ職員(ロナルド・コールマン)から、線路がここで終わっていることを知らされるのでした。
時間を稼いでいたため余裕のフォッグは、像に乗り目的地に向かいました。
夜になり、ある儀式に遭遇したフォッグらは、夫を失ったアウダ姫(シャーリー・マクレーン)が生贄で焼かれることを知り彼女を助けようとします。
アウダ姫は焼かれる寸前でパスパルトゥーに救い出され、フォッグらはその場を離れました。
その件はロンドンにも伝わり、一旦は逮捕されたフォッグは釈放され、その後、香港に向かっていると思われました。
ビルマ(現ミャンマー)のラングーン(現ヤンゴン)を通過した頃、アウダ姫はフォッグに心を寄せるようになりました。
フィックスは、フォッグが香港で船を乗り換え横浜に向かうことを知りました。
8)香港
フォッグはアウダ姫を連れてホテルに向かい、蒸気船のチケットを手に入れに行ったパスパルトゥーに近づいたフィックスは探りを入れます。
自分が刑事でありフォッグを逮捕するとパスパルトゥーに伝えたフィックスは、彼に協力を求めました。
主人を裏切るわけには行かないパスパルトゥーでしたが、飲まされた酒で意識を失い連れ去られて船に乗せられました。
翌朝、カーネティック号のスチュワード(ピーター・ローレ)に起こされたパスパルトゥーは、1人で船に乗っていることを知り焦ります。
パスパルトゥーの行方が分からないまま、フォッグはアウダ姫とフィックスと共に別の船で横浜にを目指しました。
9)横浜・鎌倉
先に横浜に着いたパスパルトゥーは、所持金もなく食事もできず、曲芸小屋を見つけてもぐり込みました。
到着したフォッグは、カーナティック号とサンフランシスコ行きの船を確認してパスパルトゥーを捜しました。
フォッグの推測通り曲芸師になっていたパスパルトゥーを見つけたフォッグは、サンフランシスコに向かいます。
パスパルトゥーは、フィックスに銀行強盗と疑われているのを知りながらフォッグがそれを気にしていないとアウダ姫から言われました。
10)インターミッション(休憩)
その後、世界中にフォッグがアメリカに向かったという報道が伝わります。
11)サンフランシスコ
同じ船に乗っていたフィックスに再び出くわしたフォッグは、汽車で大陸を横断してニューヨークに向かおうとしました。
先住民やヴァファローの群れに遭遇した汽車は、度々停車しながら東に向かいます。
崩れそうな橋を無事に通過し落石をの逃れた汽車の中で、フォッグはサンフランシスコ以来、自分の行動にケチをつけるスタンプ・プロクター大佐(ジョン・キャラダイン)と決闘をすることになりましたが、その時、汽車は先住民に襲われ、フォッグらは応戦するもののパスパルトゥーが落下してしまいます。
機関士が襲われて汽車は暴走し、パスパルトゥーは通りがかった幌馬車に助けられるものの、スー族に捕えられてしまいました。
12)カーニー砦駅
フォッグは騎兵隊に協力を求め、パスパルトゥーを助けようとしました。
パスパルトゥーは火炙りになるものの、間一髪でフォッグらが現れて救出されました。
立ち往生したフォッグらは、トロッコに帆を張り鉄道で東に向かいました。
13)ロンドン
フォッグがニューヨークで船に乗り遅れたという情報を知ったクラブのメンバーは、彼が銀行強盗である確信を得たという警察の報告を受け、メンバーは、中米に向かったと思われるフォッグが、逃亡を図ったとも言いました。
14)大西洋
その頃、フォッグは蒸気船「ヘンリエッタ」で航海を続けますが、燃料の石炭が切れてしまいます。そこで、フォッグは船長(ジャック・オーキー)から船を買い取り、船体を壊して燃料にして前進します。
再び燃料がなくなりフォッグは、愛用のハットと傘を釜に投げ込んだものの、直後に陸を確認したフォッグは、船長に船を返して上陸しました。
15)逮捕
祖国に戻ったフォッグだったが、銀行強盗の罪でフィックスに逮捕されてしまいますが、真犯人が見つかったため、フィックスはフォッグに謝罪して彼を釈放しました。
16)大逆転
屋敷に戻ったフォッグは、全財産をつぎ込んだ賭けに負けたことでショックを受けるのですが、アウダ姫はフォッグを励まし、素晴らしい時を過ごせたことを感謝して、自分を妻にしてほしいことを彼に伝えました。
気を取り戻したフォッグはアウダ姫を抱き寄せ、牧師(フランク・ロイド)を呼ぶようパスパルトゥーに指示します。
牧師の家に向かったパスパルトゥーは、今日が期限の日であることに気づき、それをフォッグに伝えました。
17)間一髪
フォッグは何かの間違いだと考えますが、自分達が東に向かったため時差があったことに気づきました。
フォッグとパスパルトゥーはクラブに向かうために馬車を拾いますが、御者(ジョン・ミルズ)のしゃっくりが止まらなくなり進めません。
馬車を降りてクラブに向かったフォッグは時間に間に合いますが、女人禁制のその場にアウダ姫が現れ、すぐにその場から去るようにと言われたアウダ姫は、フォッグに理由を聞きました。
18)エピローグ
フォッグは大英帝国の終わりを意味すると答え、その時、窓からパスパルトゥーが現れました。
クラブ・メンバーのラルフは、”これで終わりだ・・・”とつぶのでした。
3.四方山話
1)主題テーマ曲
ヴィクター・ヤング作曲、ヴィクター・ヤングオーケストラ演奏による主題テーマ曲「Around the World(英語版)」は、映画音楽として知られているだけでなく、格調高く優雅な曲調が「世界旅行」のイメージに合致していることから、テレビやラジオなどで旅行を表現するジングルにしばしば使われています。
たとえば、『兼高かおる世界の旅』のテーマ曲やフジテレビ系列で1997年〜2006年に放送されていたサスペンスドラマシリーズ『スチュワーデス刑事』のメインテーマ曲などがその例です。
近畿日本鉄道では、2016年より同社のCMソングや近鉄名古屋駅での伊勢志摩方面行き特急列車の発車メロディ、近鉄電車テレフォンセンターの電話保留音として使用されています。
2)訪問国
あくまで物語上の訪問国で、いくつかの国の撮影はスタジオで行われたほか、別に収録した風景画像を編集して行われました。
イギリス(ロンドン、リバプール)
フランス(パリ)
イタリア(ブリンディシ)
スペイン(マドリード)
エジプト(スエズ)
イギリス領インド帝国(インドおよびビルマ)
イギリス領香港
日本(横浜、鎌倉)
アメリカ(サンフランシスコ、中西部、ニューヨーク)
3)カメオ出演
a)ロンドン
駅長:ジョー・E・ブラウン
娼婦:ハーミオン・ジンゴールド
娼婦の連れ:グリニス・ジョンズ
御者:ジョン・ミルズ
牧師:フランク・ロイド
b)パリ
旅行者:マルティーヌ・キャロル
ムッシュ・ガッセ:シャルル・ボワイエ
デニス・ファレンティン:トレヴァー・ハワード
ヘスケス・バゴット:ノエル・カワード
浮気女:イヴリン・キース
御者:フェルナンデル
c)スペイン
アフメド・アブドゥッラー:ギルバート・ローランド
アブドゥッラーの手下:シーザー・ロメロ
闘牛士:ルイス・ミゲル・ドミンギン
d)インド
鉄道職員:ロナルド・コールマン
ボンベイ警察長官:レジナルド・デニー
フランシス・クロマティ:セドリック・ハードウィック
e)香港
蒸気船会社事務員:チャールズ・コバーン
タリー:メルヴィル・クーパー
f)太平洋
スチュワード:ピーター・ローレ
g)サンフランシスコ
サロンのホステス:マレーネ・ディートリヒ
酒場のピアニスト:フランク・シナトラ
酒場の用心棒:ジョージ・ラフト
酒場の酔っ払い:レッド・スケルトン
ヒンショー:ハーコート・ウィリアムズ
スタンプ:ジョン・キャラダイン
h)アメリカ横断鉄道
車掌:バスター・キートン
アメリカ機動隊長:ティム・マッコイ
i)大西洋
舵手:ヴィクター・マクラグレン
船長:ジャック・オーキー
一等航海士:アンディ・ディヴァイン
j)エキストラ
キャロル・ホワイト、ジェス・フランコ
k)ナレーター
エドワード・R・マロー
4)挑戦状
WHO WAS SEEN
IN WHAT SCENE...
...AND WHO DID WHAT
誰がどのシーンで
何をしていたでしょう
エンドロール初頭でと観客に問いかけますが、残念ながらあまりに昔で、今や物故された俳優さんばかりでもあり、殆どお手上げ状態ですが、時々は見知った顔に心動かされます。
5)アカデミー賞
1950年代半ばの作品にして、その映像の美しさは驚きであり、主人公らの個性も生かされた見事な娯楽作には仕上がっていて、アカデミー作品賞を受賞した作品にしては内容が薄い、というところが気になりますが、当時としては画期的な世界中を旅する冒険映画、純粋なコメディ・エンターティメントとして見応えがあります。
第29回アカデミー賞では、作品・脚本・撮影(カラー)・編集・音楽賞を受賞し、監督・美術(カラー)・衣装デザイン賞(カラー)がノミネートされました。
この頃、四半世紀の歴史を迎えた「映画芸術科学アカデミー(アカデミー賞主催)」も、少々砕けた作品に最高の栄誉賞を与えたというところでしょうか。
4.まとめ
海外旅行など夢のまた夢だった時代、見事な映像で各国の名所などを巡るストーリーと、旧作映画に登場する超豪華な出演者探しなども楽しめました。
あまりにも有名なヴィクター・ヤングのテーマ曲も心地よく、作品は観たことはなくても、誰でも耳にしたことのある名曲ですね。