凸凹玉手箱

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映画『ボルケーノ』と『ダンテズ・ピーク』火山噴火パニック映画のせめぎあいです!!

『ボルケーノ』は、サントリーの缶コーヒーBOSSのCMにおいてお馴染みのトミー・リー・ジョーンズ主演で、『ボディガード』のミック・ジャクソン監督の1997年4月公開のアメリカのパニック映画です。

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面白いことにこの年1997年2月に、『ダンテズ・ピーク』と言う火山噴火パニック映画が公開されています。こちらは「5代目ジェームズ・ボンド」のピアース・ブロスナンと『ターミネーター』シリーズのサラ・コナーのリンダ・ハミルトン主演で『ホワイト・サンズ』他のロジャー・ドナルドソン監督の映画でした。

 

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どちらも、1億ドル前後の製作費をかけた大作映画であり、名の知れた俳優のキャスティングで素材が同じでよくぞ2ヶ月やそこらの差で公開に踏み切ったものです。どちらもそれなりに楽しめる映画に違いはありませんが、どちらもよっぽど自信があったのか、どちらかがケンカを売っているのか解りませんね。

 

ただ、観客の評価としては、火山・噴火・地震・溶岩とほぼ同じ素材ではありますが、それに対処する登場人物の扱いが違っていて、調理方法の変化で好き嫌いの味がでてくるもののように思われます。

そして、興行収入の方は『ボルケーノ』は1億2千3百万ドル、『ダンテズ・ピーク』が1億7千8百万ドルと後者に軍配が上がっています。

   ボルケーノ

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さて、『ボルケーノ』のストーリーは、アメリカに海岸の大都市ロサンゼルスの中心部に突如出現した火山と、それに立ち向かう人々の姿をSFXを駆使して描いています。

中度の地震が続く中、地下鉄工事現場で作業員が事故死する事件が発生し、死因は蒸気によるものだとされましたが、市の危機監理局(Office of Emergenxy Management)局長であるマイク・ローク(トミー・リー・ジョーンズ)は、この街に忍び寄る未曾有の恐怖を感じていました。

そして地震学者のエイミー・バーンズ(アン・ヘッシュ)は地下での調査中、同僚を失いながらもここで火山活動が行われている事を突き止めました。しかしながら時すでに遅く、エネルギーを蓄え過ぎた溶岩流は遂にタール池から噴出し、周囲の建造物や椰子の木々を燃やしながらウィルシャー通りに溢れ出はじめました。

ロス市内は、火山弾が降り注ぎ、地獄と化します。このまま溶岩が流れると避難場所が危険だと判断したロークは通りに堤防を塞き溶岩流を止める事を決定します。次々と資材が運び込まれ、警官や消防士らの協力で堤防が築かれ難を逃れました。

続いて大勢の被災者が担ぎこまれ、ロークの娘も避難している病院に溶岩が流れ込む恐れが出てきました。今度はビルを倒壊させて溶岩流の流れを変えて海に向かわせることになりました。はたして迫り来る溶岩流に彼らは勝つことが出来るのでしょうか?

     ダンテズ・ピーク

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ダンテズ・ピーク』については、地質学者のハリー・ダルトンピアース・ブロスナン)は、上司のポール・ドレイファス(チャールズ・ハラーン)から連絡が入り、ノーザン・カスケードに属しているダンテズ・ピークで奇妙な記録が観測されたと連絡が入って休暇を切り上げ、先陣を切ってダンテズ・ピークに乗り込みました。

ダンテズ・ピークはマネー・ダイヤモンド誌から「人口20000人以下で全米で最も住みやすい街」第2位に選ばれて、町を挙げてのお祭り騒ぎの最中でした。そこでハリーと町長のレイチェル・ワンド(リンダ・ハミルトン)は挨拶を交わしました。

その後ハリーと同じ調査チームに所属する他のメンバーも到着し、最新鋭の機械を使って本格的な調査が開始されたのですが、噴火が差し迫っていると断定できる程明確な証拠は掴めませんでした。


結局ハリー達は撤収する事になり、前日の夜、最後の挨拶でレイチェルの自宅で蛇口を捻ると、蛇口から茶褐色に澱んだ液体が出てきました。ハリーはその水の臭いを嗅ぐと眉間に深い皺を刻み、慌ててモーテルで眠っていたポールを叩き起し、「決定的な証拠が出た」と蛇口から出てくる茶褐色の水をポールに見せました。ポールはただ愕然とし、ハリーのチームメンバー達もダンテズ・ピークの異常な兆候を掴み、ポールは州兵の出動を要請しました。

翌日保安官は街の人々に、高校の体育館で説明会を開くと告知し、レイチェルもハリーも町の人間も誰もが緊張した面持ちで説明会に参加した。レイチェルに促されてハリーが説明をしようとした矢先に、立っているのが難しい程の大きな地震が町を襲い、慌てて体育館の外に出てダンテズ・ピークを見上げると山は頂上から噴煙を上げて噴火し始めていました。

ここから、火山弾と溶岩流の執拗な追求から、ダンテズ・ピークの住民とハリーとレイチェル一家の逃避行が始まりました。

 

ダンテズ・ピーク            ボルケーノ

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日本でも、実際に1991年6月3日の雲仙普賢岳火砕流の様に多くの死傷者を出した火山活動がありましたが、さてこの二つの映画の設定の真偽について検証してみます。

 

ダンテズ・ピーク』については、モデルとなった火山は,アメリカのカスケード地方にある、1980年に大噴火を起こしたセントヘレンズ山と思われます。

セント ヘレンズ山は、富士山に似た安山岩質溶岩や、火砕岩からなる円錐形の成層火山でしたが、山体内へのマグマの貫入で変形が進み、大地震が引き金となって崩壊、プリニー式噴火、火砕流、ブラスト、岩屑なだれが発生しました。

ダンテズ・ピーク』に描かれた火山活動と比べて,溶岩噴泉と流れの速い溶岩流を除いてよく似ています。また映画の最後で映されるダンテズ・ピークは崩壊後の山容は セントヘレンズ山そっくりです。

ダンテズ・ピーク』は、アメリカ地質調査所カスケード火山観測所が考証に協力していて,個々の火山活動を描くという点では,致命的な間違いはそうなさそうです。それでもややおかしなところ,誇張されているところなどがありますが、なにせ映画ですから。

 ダンテズ・ピーク

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『ボルケーノ』のほうは,『ダンテズ・ピーク』に比べ火山学的にやや荒唐無稽な描写が多く,科学考証という点ではあまり高い評価を与えることはできません。遠い昔、ベスビオス火山のポンペイ埋没などもありましたが、ちょっと首をひねるような描写が目につきます。やはり映画ですから。

ただ、いかにも疑問に思われるいきなりの溶岩噴泉は,必ずしも間違いではありません。単成火山であっても火砕丘がほとんど成長せずに、溶岩流を流しただけの火山というものも、東伊豆単成火山群などにあります。単成火山ではありませんが,ハワイのリフトゾーンとか伊豆大島の側火山にも,スコリア丘がほとんど成長せずに,溶岩噴泉と溶岩流を流す活動をしたものがあります。

また、溶岩流の上に落ちただけで,半ば一瞬に蒸発してしまうというシーンなどは,誇張が過ぎる描写のひとつと言ってよく、ハワイなどでは 表面だけが黒く固化した溶岩流の上を、ピョンピョン飛び跳ねるように歩く ことができたこともあるようです。

    ボルケーノ

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こうしてみると、『ダンテズ・ピーク』は、ド派手なトミー・リー・ジョーンズ大活躍の『ボルケーノ』よりも忠実に製作し、リアリティに溢れていて良い作品で見応えはありましたが、物語としては、ひたすら逃げ惑う『ダンテズ・ピーク』に対して、迫りくる大惨事を予見するような困難にチームと民衆が一致して立ち向かう『ボルケーノ』をどちらかと言うと支持します。

 

火山噴火予知の難しさと結果の怖さを描いた『ダンテズ・ピーク』と、果敢に危機に対処する『ボルケーノ』との違いはありますが、おもしろいことに、2015年にニューヨーク誌のオンラインサイト「Vulture」が発表した「映画史に残るパニック映画」では、この二つの映画が第16位を分け合っています。ちなみにこのランキングでは第1位は『タイタニック』でした。