凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『ハンニバル』エスカレートするカニバリズム、ますます悍ましくなってきます!!

この映画『ハンニバル(Hannibal)』は2001年のアメリカ・イギリス・イタリア合作映画で、『羊たちの沈黙』(1991年)の続編にあたります。

監督はリドリー・スコットに代わり。クラリススターリングが、ジュリアン・ムーアに代わりましたが、レクター博士アンソニー・ホプキンスが代わりなく演じてます。

目次

 

 


1.紹介

猟奇的なシーンが多く、日本公開時はR-15指定されました。グロテスクな場面が非常に多い作品で、一般受けするかとの不安があったのですが、1作目を遥かに上回る興行成績を記録し、全世界で約3億5000万ドルを超す大ヒットとなりました。


2.ストーリー

1)プロローグ

殺人鬼ハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)の魔の手を逃れた、大富豪メイスン・ ヴァージャー(ゲイリー・オールドマン)は、 レクターが収監されている施設の看護師バーニー(フランキー・R・フェイソン)を屋敷に呼び寄せ情報を得ました。

FBI特別捜査官クラリススターリング(ジュリアン・ムーア)は、DEA(麻薬取締局)やAFT(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)と協力して、麻薬密売人の女を追い詰めます。

激しい銃撃戦の末、指揮を執っていたスターリングは、子供を抱いていた女を射殺しました。

 

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2)失地回復と復讐

銃撃戦で多数の犠牲者を出したことで、スターリングは、遺族やFBI内部、そしてメディアから激しい非難を浴びます。

10年前に、レクター博士の助けで上院議員の娘を救い出し、猟奇殺人事件を解決して話題になったスターリングでしたが、今回の事件で告訴されてしまいます。

レクターの4番目の犠牲者で、生き残った唯一人の男ヴァージャーは、スターリングの窮地を救うため、司法省に圧力をかけ、スポークスマンのポール・クレンドラー(レイ・リオッタ)を派遣させました。

政界などに多大な影響力を持つ、ヴァージャーの大邸宅に呼び出されたスターリングは、彼の主治医コーデル・ドゥームリング(ジェリコ・イヴァネク)に迎えられます。

 

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異常な趣味を持っていたヴァージャーは、レクターの患者でもあり、彼の指示に従い自ら顔面の皮膚を削ぎ落とし、今はおぞましい姿になっていました。

ヴァージャーは、手がかりとなるレクターの腕のレントゲン写真をスターリングに渡し、彼女がレクターを逮捕して汚名を返上するための手助けをしようとします。

それは、ヴァージャーのレクターに対する復讐でもありました。


3)賞金目当て

看護師バーニーに接触したスターリングは、施設のチルトン医師が盗聴していた、レクターと自分との会話テープを入手します。

一方、イタリア、フィレンツェで、リカルド・パッツィ警部(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は、司書長フェル博士と名を変えて潜んでいたレクターに、失踪した前任者について質問をしますが、 手がかりはつかめませんでした。

 

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やがて、スターリングの元に、自分の事件に復帰したのかという内容の手紙がレクターから届きます。

FBIの10大犯罪者リストに入れられた、 レクターからの挑戦状とも言える手紙を受け取ったスターリングは、その発送先を特定できません。

便箋についていたスキンクリームの匂いから、手がかりを得ようとしたスターリングは、ヨーロッパの特定した地域から香水店の防犯カメラ映像を入手しようとしました。

パッツィは、署内でFBIから映像の提供を求められていることを知り、彼はその中にフェル博士を見つけます。

フェルを監視したパッツィは、彼がカフェでグラスなどに指紋を残そうとしないことを不審に思いました。

その後パッツィは、FBIの10大犯罪者リストの中にある”ハンニバル・レクター” がフェルで、300万ドルの報奨金を出す者(ヴァージャー)がいることも知りました。


4)危険な接近

その頃スターリングは、映像テープの依頼が遅れているフィレンツェの警察に郵送を催促します。

報奨金を手に入れようとしたパッツィは、犯人の指紋の提出が必要だと知ります。

パッツィは、スリにレクターの財布を奪うよう指示し、腕のブレスレットを掴ませ指紋を入手しようとします。

レクターはスリに気づき彼を刺し殺しますが、パッツィは指紋を手に入れ、ヴァージャーは送られた指紋を確認しました。

イタリアのサルデーニャで、ヴァージャーは、地元の殺し屋に連絡を入れ、レクターを豚に食わせてしまう計画を練っています。

報奨金の前金を手に入れたパッツィは、妻アレグラ(フランチェスカ・ネリ)とオペラ鑑賞にでかけ、会場でレクターに出くわします。

香水店のビデオ映像を確認したスターリングは、パッツィが自宅のパソコンからFBIのデータベースにアクセスしたことに気づきます。

そしてスターリングは、パッツィに連絡を入れ危険を知らせ警告しますが、パッツィは、レクターを殺し屋の手に渡すために罠にかけようとします。

しかし、パッツィは逆に拘束されてしまい、妻アレグラを食すると言ってレクターに脅迫されました。レクターは、自分をヴァージャーに売ったことをパッツィに白状させますが、そこに、彼の携帯電話にスターリングから連絡が入ります。

スターリングとの束の間の会話を楽しんだレクターは、パッツィの内臓を切り裂きバルコニーから吊るしました。

 

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殺し屋一人の命も奪い、レクターは悠然とバルコニーから監視カメラに向かい手を振るのでした。

その後、クレンドラーはヴァージャーと裏で手を組み、スターリングを休職に追い込みます。

その頃、レクターはスターリングとヴァージャーに関係するクレンドラーに目をつけ、クレンドラーの家に侵入し、電話の通話記録を持ち去ったレクターは、調理器具と手術用具を手に入れました。

スターリングの家にも侵入したレクターは、眠っている彼女に危害は加えず、現れた形跡を残し立ち去るのでした。


5)飽食の宴

レクターはスターリングに電話をかけ、彼女をワシントンD.C.のユニオン駅に誘き出します。しかしレクターは、スターリングを尾行していたヴァージャーの雇った殺し屋に捕らえられてしまいました。

ヴァージャーの元に連れて行かれたレクターは、飢えた豚の餌食にされそうになりました。その場に現れたスターリングにレクターは救われますが、彼女は銃撃されてしまいます。

レクターは、ヴァージャーを豚の餌食にするよう主治医コーデルに指示時を出しました。ヴァージャーは豚に食い殺され、レクターはスターリングを抱きかかえ,その場から逃亡するのでした。

 

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クレンドラーの家で,スターリングの傷を治療したレクターは、帰宅し彼に襲い掛かり眠らせます。

モルヒネで朦朧とするものの、傷も癒えたスターリングは、クレンドラーと食卓につきました。

レクターは、既に切開してあったクレンドラーの頭蓋骨を取り除き、脳ミソを料理し彼に食べさせます。

 

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その様子に動揺するスターリングは、レクターの隙を見て彼に襲い掛かり、二人は揉み合いになり、スターリングはレクターに手錠をかけますが、警察の到着が迫ってきて、彼は自分の手首を切って姿を消しました。


6)エピローグ

レクターは逃亡する機内で、彼の横に座った子供が、自分の持参した食事に興味を持ったため、調理したクレンドラーの脳を食べさせるのでした。

 

 

3.四方山話

1)ヒロイン役

クラリス役は、「同じ役は引き受けない」として断ったジョディ・フォスターに代り、ジュリアン・ムーアが担当しました。

原作と映画では結末が大きく異なります。これは降板したジョディ、彼女の代役としてクラリス役を引き受けたジュリアンの両者から難色を示されたため結果、制作側が妥協する形で結末を変更することになりました。


2)原作との相違点

原作との決定的な違いはラストシーンにあります。

映画版では、クラリスは朦朧とする意識の中でも忠実に職務を遂行しようしましたが、

原作では、クラリスは傷を治療された後、レクターに解けることのない暗示をかけられて洗脳され、一緒に暮らすことになります。

そして彼女を訪ねてきたクレンドラーは、クラリスとレクターと会話をしながら、自身の脳を調理され、知能が低下していき殺されます。

レクターは幼いころに妹が殺害され、自分も知らぬうちに妹に肉を食べさせられていたことがトラウマになっています。その妹の面影をクラリスに求めており、一方クラリスも幼いころに殉職した父の死をレクターの治療によって乗り越え、共存関係を築くのです。

その後、レクターとクラリスは共に失踪し、数年後に南米で目撃されました。


当初、映画版の脚本もそのようになっていたのですが、「羊たちの沈黙」でクラリス役を務めたジョディ・フォスターは、本作のオファーを受けた際に「クラリスが洗脳されて終わる」という結末を知り、降板したと言われています。

また、代役となったジュリアン・ムーアもこのラストには納得せず、結果として制作サイドが妥協をして原作とは大きく内容が異なる結末となりました。

これが前項の内訳です。


3)レクター博士のプロフィール

①知力

非常に高度な知的能力で、専門の精神医療に関する豊富な知識だけでなく、高等数学、理論物理学、古文書学、美術、古今東西の歴史にも非常に詳しい。

②語学

語学にも通じており、イタリア人のパッツィが違和感を全く抱かないほど自然なイタリア語を操ります。

スラング

会話の中でスラングを多用し、相手を挑発したり感情を操ろうとしたり、煙に巻こうとします。『ハンニバル』での「Would you like a popper?(もっとハイになりたい?)」とか「Okie Dokie!(OK!と同意)」、「TATA(バイバイ)」など。

話術が非常に巧みで、ウィル・グレアムの弁では「弁舌が専門用語とスラングだらけでわけがわからない」「会話で人を煙に巻く癖がある」といいます。

④身体能力

知力だけではなく身体能力も優れていて、並外れた膂力の持ち主。青年時代に身に付けた剣術の心得もあります。

⑤嗅覚

対面している人物が普段使用している化粧品などの匂いを嗅ぎ分けて、そのブランドや銘柄を正確に言い当てるほどの動物的嗅覚を持ちます。

他人の身に着けている時計の皮バンドの匂いを嫌がったり、フィレンツェで「サンタ・マリア・ノヴェッラ」のオリジナル・コロンを使い、同店でクラリスに贈る石鹸を購入するなど香りにも造詣が深い。


4)カニバリズム

カニバリズム、人肉嗜食とは、特殊な心理状態での殺人に時折見られる人肉捕食等のことで、緊急性がなく、かつ社会的な裏づけ(必要性)のない行為です。

多くは猟奇殺人に伴う死体損壊として現れ、文明社会では、直接殺人を犯さずとも死体損壊等の罪に問われる内容であり、それ以前に、倫理的な面からも容認されない行為(タブー)である食のタブーとされます。

本作においては、幼少期、彼の妹が殺された際に、知らずに自分も妹の肉を食べさせられていた事がトラウマとなり、カニバリズムの根源となっています。自分だけでなく他者にも知らせずに人肉料理をふるまいます。


4.まとめ

本作のヒットの要因は、メイスン・ヴァージャーほかハンニバルの犠牲者を実に魅力的に描きだしたことでしょう。ポール・クレンドラーなんてわかりやすいすけべ度が最高です。

しかしながら、メイスン・ヴァージャーはここまでくると、ゲイリー・オールドマンでなくてもいいような気がします。