凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『チェンジリング』この映画が実話であることが衝撃です!!

この映画を観て、警察関係者の振る舞いにほとんどすべての人がイライラと胸糞悪い気分を持ったと思いますが、お話は1920年代後半の話です。しかもきちんと被害者の意趣返しもできていて、イライラの解消もできるようになっています。

 

それにしても、監督としてのクリント・イーストウッドの偉大さを改めて認識されました。もちろんこの映画以前にアカデミー監督賞を『許されざる者』(1992年)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)と2回も受賞しているので今更ながらなのですが、人の気分をこのぐらい胸糞悪くできるのは、才能と技術がないとできません。もちろん脚本や俳優のおかげもあるでしょうが、それを生かすも殺すも監督次第ということになります。

 

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アンジェリーナ・ジョリーはヒロインのクリスティン・コリンズを熱演し、アクション女優のイメージしかなかったのを一変させました。また、グスタヴ・ブリーグレブ牧師を演じた、ジョン・マルコヴィッチは『コン・エアー』での極悪人サイラス・グリッソムの強烈な印象が頭を離れず、正義の味方、クリスティンの救世主として登場するのですが、イメージを払拭するのが大変でした。

 

この様に、この映画はとんでもない実話をとてつもない映画職人たちが、見事に再現したしたともいえ、犯人のゴードン・ノースコットを演じた、ジェイソン・バトラー・ハーナーや、クリスティンを精神異常者に仕立てた、J.J.ジョーンズ警部のジェフリー・ドノヴァンも観客の苛立ちや嫌悪感を誘い出す見事な演技を見せてくれました。

 

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お話は、1928年のロサンゼルスで起こった実際の事件です。ヒロインのクリスティンは、電話会社に勤務するシングルマザーで息子ウォルターを残して仕事に出かけますが、帰宅すると息子は姿が見えません。

クリスティンはロサンゼルス市警察に捜査を依頼し、事件は世間の注目を集めますが、同時に人々は当時、不正が横行する警察に事件を解決する能力があるのか疑問視していました。5か月経ち、ロス市警のジョーンズ警部からウォルターを保護したと連絡が入り、クリスティンは彼に連れられて駅に向かいました。

 

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そこには市警の手柄をアピールしたいジェームズ・E・デーヴィス市警本部長(コルム・フィオール)や大勢の記者が集まっていましたが、あろうことか再会した息子は全くの別人でした。クリスティンの訴えは無視され、ジョーンズ警部は体面を取り繕うため、「とりあえず息子として扱って欲しい」と言い含められ、そのまま記者の取材を受けることになりました。

クリスティンはしかたなく少年を連れて帰宅しますが、失踪前に測ったウォルターの身長が7センチも低いことに気付き、ジョーンズ警部に再捜査を依頼します。しかし、捜査ミスが発覚することを恐れたジョーンズ警部は、逆に「息子がいない自由な日々を手に入れようと育児放棄しようとしている」と彼女を責め立てます。ジョーンズ警部は警察の嘱託医に診断書を作らせて少年がウォルターであることを公式に報告し、事件の解決をアピールします。

 

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一方、警察の不正を追及して市民運動を率いているブリーグレブ牧師が協力を申し出てきました。クリスティンは息子が別人であることを証明するために、歯医者の診断記録や学校の担任の証言をもとに別人である証拠を集め、それを記者たちに渡そうとします。

しかし、それを知ったジョーンズ警部はクリスティンを「精神異常者」としてロス市警御用達の精神病院に隔離してしまいます。クリスティンは、彼女と同じように市警に逆らって隔離された被害者たちと知り合い、市警にとって都合の悪い人物が精神異常者として拘束されていることを知ります。

同じころ、市警のレスター・ヤバラ刑事(マイケル・ケリー)は、カナダの警察から照会のあった不法入国者の少年サンフォードを拘束して強制送還しようとしますが、彼は従兄ノースコットに強要されて少年たちを殺したことを告白します。

サンフォード少年は、ノースコットが20人にも及ぶ少年たちを拉致して強姦・殺害したと告白し、犠牲者の中にウォルターと思われる少年も含まれていることが判ってきました。

ヤバラ刑事は、ジョーンズ警部の捜査中止命令を無視して犯行現場の養鶏場にサンフォード少年を連れて向かい、そこで犠牲者の人骨を発見します。報道で事実を知ったブリーグレイブ神父は精神病院に行き、クリスティンが懲罰の電気ショックを受ける間一髪で助け出します。

ノースコットは指名手配され、逃亡先のカナダで拘束されロサンゼルスに送還されましたが、捜査ミスが判明したことで責任を追及される立場になったデーヴィス本部長とジョーンズ警部、さらに市長選挙への影響を懸念する市長は事件の早急な幕引きを図ります。

 

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クリスティンはブリーグレイブ神父と弁護士サミー・ハーン(ジェフ・ピアソン)に依頼し、精神病院に隔離されていた被害者たちを解放し、市警に対して訴訟を起こしました。市警は世間の批判をかわすためにノースコットの裁判を聴聞会と同じ日程で行いますが、世間は市警の腐敗体質を糾弾します。

結果、ジョーンズ警部は無期限の停職処分を受け、デーヴィスは本部長を更迭され、市長は選挙への出馬を取り止めざるを得ず、同時にノースコットには死刑判決が言い渡されます。しかし、ノースコットはウォルター殺害について明言せず、人骨も個人の特定ができなかったことから、クリスティンは息子の生存を信じて捜索を続けました。

 

2年後、ノースコットの死刑執行を2日後に控えた日に、ブリーグレイブ神父から「ノースコットが面会を求めている」と聞かされたクリスティンは、彼が収監されているサン・クエンティン州立刑務所に向かいます。面会したクリスティンは、息子殺しを問い詰めますが、ノースコットははぐらかすばかりで、納得のいく答えは得られません。翌日、ノースコットはクリスティンや犠牲となった少年の遺族が見守る中で絞首刑となりました。

 

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更に、事件から7年後に、ノースコットの処刑に立ち会った被害者の家族から「息子が見つかった」という連絡が入りました。クリスティンは市警本部に向かい、ヤバラ刑事の被害者の少年に対する尋問に立ち会います。少年は「ノースコットの養鶏場から逃げる際にウォルターに助けられた」と証言し、両親との再会を喜びますが、ウォルターを含む逃げた少年たちの行方は分からず、逃げ切れたのか捕まって殺されたのかも不明のままでした。

 

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クリスティンはこのことで、ウォルターが彼女の教えた通りの正しい行動をとったことに喜び、また、何処かで生きていることに一縷の望みと光明を見出して、生涯をかけて息子を探し続けました。

 

今では、あり得ないような警察の悪行ですが、1920年代であればそんな無法もあり得たのでしょう。そこに果敢に立ち向かった健気な母親の姿が感動を誘いました。