映画『バニーレークは行方不明』渋くて面白い!サスペンス・サイコ・スリラーです?!
この映画『バニー・レークは行方不明(Bunny Lake Is Missing)』は、イヴリン・パイパーの同名小説の映画化で、監督オットー・プレミンジャー、出演はキャロル・リンレーとローレンス・オリヴィエなど、1965年のイギリスのサスペンス映画です。
目次
1.紹介
主人公が行方不明者を探すという同様のプロットの映画としては『バルカン超特急』、『フライトプラン』などの他、度々映画では登場しますが、本作も、謎の失踪劇をテーマに、鬼才オットー・プレミンジャーが放つホラー色のサスペンスです。
ごく普通に見える兄妹が、時間の経過と共に二重人格者に変貌していく怖さと、乱れぬペースで捜査を続ける警視の冷静さとの対比が、事件を引き起こす犯人の異常さをより強調されて描かれる、見事な演出となっています。
2.ストーリー
1)プロローグ
ニューヨークで暮らしていたシングルマザーのアン・レイク(キャロル・リンレー)が娘のバニー(スーキー・アップルビー)を連れてロンドンに引っ越してきます。
雑誌記者である兄のスティーブン(キア・デュリア)がこちらで仕事をしているため、彼女も彼を頼って生活の拠点を移すことにしたのです。
アンは兄の上司の家に一旦滞在した後、新しいアパートに引っ越してきました。
2)怪しい大家
その日、バニーを「リトル・ピープルズ・ガーデン・プレスクール」という保育園に連れていきます。電話で聞かされていた待機部屋に娘を置いておき、給食係の女性(ルーシー・マンハイム)にそのことを告げると、アンは引越し先となるアパートへ戻りました。
ちょうど荷物が運び込まれるところでしたが、そこに同じアパートに住むウィルソン(ノエル・カワード)という老人がやってきます。チワワを抱き、絶えず喋り続けるこの老人はアパートの大家でした。
「自分は有名人だ」と自慢する彼はアンにちょっかいを出そうとしますが、アンの方では適当にあしらうのでした。
3)姿の見えないバニー
荷物の片付けと買物を終えると、アンは再び保育園へゆきました。大勢の子供が母親に連れられて帰っていきますが、バニーの姿が見当たりません。
どこを探してもいないため、アンは、次第にパニックになっていきました。給食係の女性に話を聞こうとしますが、彼女は料理のことで文句をつけられたと思ったのか姿を消していました。
保育士たちに文句を言いいますが、バニーの存在すら知らない彼女たちは戸惑うばかりです。埒が明かないと考えたアンはスティーブンに連絡しました。彼はすぐにやってきて、保育士の許可を取り、アンを連れて園内を探索します。
最上階へ行ってみると、そこにはこの保育園の共同経営者であり、引退していたエイダ・フォード(マティタ・ハント)という老女がひとりで暮らしていました。バニーのことを聞いてみるのですが、要領を得ない答えしか返ってきませんでした。
4)バニーを探して
園内にはバニーはいないと考えたスティーブンは警察に通報しました。ニューハウス警部(ローレンス・オリヴィエ)とその部下たちが保育園にやってきます。警察犬も動員され、大掛かりな捜査が開始されることになりました。
警察が給食係の女性を見つけ出し、話を聞きますが、彼女は「女の子の姿など見ていない」というばかりです。さらにアンがアパートの部屋に戻ってみると、バニーの持ち物がすべて消えていました。
目撃者がいない上に、持ち物まで見当たらないというので、ニューハウス警部はバニーの存在自体がアンの幻想かもしれないと思い始めます。
警部はスティーブンにも話を聞きますが、彼も実際にバニーと会ったわけではなく、アンから姪の話を聞いているだけでした。
アンは、四面楚歌の状況で精神的に追い詰められてきます。ところが夜になって突然、バニーの人形を修理屋に出したことを思い出しました。
夜も遅いというのにアンは人形修理店を再訪し無理やりバニーの人形を取り戻すと、後から駆けつけたスティーブンに「これがバニーがいる証拠よ」といって手渡します。
5)意外な犯人
しかし、スティーブンはライターでその人形を燃やし、アンを殴って気絶させるとそのまま病院へ、どうやらスティーブンがこの誘拐事件の犯人のようです。
アンはしばらく気を失っていましたが、すきを見て病院を脱走し、そのままスティーブンの家へ向かいます。
家にこっそり入って窓から部屋をのぞくと、彼がバニーの持ち物を暖炉で燃やしていました。そして外へ出たスティーブンは車のところへいき、トランクを開くとそこに気を失っているバニーがいました。
6)異常な愛情
スティーブンは、その体を持ち上げ、家の中に連れて行きます。ネクタイを外すとそれでバニーの首を絞めようとしました。
アンの愛情を独占しようという余りに、邪魔者になるバニーを排除したかったのです。堪らずに止めようとしたアンの言葉に耳も貸しません。
しかし、アンが子供に話しかけるように「一緒に遊ぼう」というと素直に従いました。かくれんぼをするうちにアンはバニーを連れて逃げようとしますが、スティーブンは油断なく彼らを逃しません。
続いてブランコで遊んでいるうちに、真相に気づいたニューハウス警部と部下たちが駆けつけます。たちまちスティーブンは逮捕されました。
7)エピローグ
ようやく解放されたバニーを前にして警部は「やっと会えた」と笑顔で告げます。しかし兄が逮捕されたアンの顔は暗いままなのでした。
3.四方山話
1)タイトルデザイン
オットー・プレミンジャー作品には欠かせない、ソウル・バスの、洗練されたタイトルデザイン、特に、小さな子供または人形にかたどられた切抜きが閉じられて終わるエンディングのアイデアは、シンプル且つインパクトのある、彼独特のセンスで表現されています。
2)ローレンス・オリヴィエ
ローレンス・オリヴィエの、地味だが、沈着冷静で的確な捜査を続けるニューハウス警部役の、説得力ある重厚な演技は、対照的にパニック気味のアンの演技を引き立てて、いつもながら素晴らしいものでした。
その物腰や語り口、さらには自然な眼差しなど、どれをとっても、最高の演技者の風格が漂う名演を見せてくれています。
3)テレビ画像出演
パブに置かれたテレビに当時の人気ロック・バンド『ザ・ゾンビーズ』が映っています。この歌詞が事件のヒントになっているのも工夫されています。
「イブニング・ニュース」紙主催の「ハートビート・コンテスト」で優勝して、デッカ・レコードと契約。1964年にシングル「シーズ・ノット・ゼア」でデビューし、全英12位、全米2位を記録し、大ヒットとなりました。
日本においては、『オデッセイ・アンド・オラクル』収録曲の「今日からスタート(This Will Be Our Year)」が、2017年に放映されたゼクシィのCMソングとして起用されています。
4.まとめ
トラファルガー広場やビッグベン、建物、庭、いかにもの英国の警察、保育園と、英吉利国らしさ、シニカルな会話と、ちょっとしたヒントもあちこち散りばめられています。
小さなことをきちんと積み上げたセンスの良さと、意外な結末は、真面目な創りを感じさせ、面白さを際立たせてくれています。