凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『Shall we ダンス?』は傑作ハートフル・コメディです!!

この映画は1996年(平成8年)1月27日に公開されましたが、翌1997年の第20回日本アカデミー賞では以下の様に各賞総なめとなりました。

   最優秀作品賞 周防正行
   最優秀監督賞 周防正行
   最優秀主演男優賞 役所広司
   最優秀主演女優賞 草刈民代
   最優秀助演男優賞 竹中直人
   最優秀助演女優賞 渡辺えり子
   新人俳優賞 草刈民代
   最優秀脚本賞 周防正行
   最優秀音楽賞 周防正行
   最優秀照明賞 長田達也
   最優秀美術賞 部谷京子
   最優秀編集賞 菊池純一
   最優秀撮影賞 柏野直樹
   最優秀録音賞 Kiyoshi Toneyama

しかしながら、助演男優賞でもう2名、徳井優田口浩正助演女優賞でもう1名、草村礼子を追加したいほどでした。

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普通なら草刈民代助演女優賞でしょうが、この映画の特殊性にガチにマッチングし、その美しい立ち姿、切なげな表情、儚さを感じさせる華奢な体型とこの人以外のキャスティングはなく、この映画を成功させた一つの要素にほかありません。

 

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竹中直人は気持ち悪さを余すところなく発揮し、渡辺えり子も憎たらしさと優しさを上手に出していて最優秀助演賞は当然の成り行きと言えるでしょう。

 

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この二人がいなければ、徳井優田口浩正に助演賞をくれてやりたいところで、主役の周りでわちゃわちゃと騒いで盛り立て、それでいてちゃんと存在感もありました。

 

大事なのは草村礼子の役どころで、すべてのおもろい俳優たちを菩薩の様に包み込んで、やはりこの映画になくてはならないところをきっちり押さえていてこれも助演賞ものに違いありません。

 

この映画のヒットは、当時巻き起こっていた中高年のダンスブームを過熱させ、町にはダンスホールのあるお店がたくさん増え、ダンス教室も盛況でした。

そして、伝統的なやり方にこだわらず、自分なりにダンスを楽しむやり方を作り上げていったのでした。石原裕次郎でルンバを踊る国は、世界広しといえど日本だけだったかも知れません。

 

今ではダンスはカッコイイものだと認識されていますが、「邪な動機ではじめたんでしょう?」「ダンスなんかやっていて何の意味があるの?」とか「ダンスで食べていけるの?」とか、ダンスを蔑んだような発言をしばしば耳にします。

 

結局それはダンスを踊ったことのない人の言葉なんで、どれだけ練習しているか、自分と向き合っているか、よいダンスをしたいという思いでぶつかり合っているかが大事になります。

 

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まさにこの映画は、ダンスを真面目に踊っている人の心情を描いていて、見事な演出と達者な俳優のおかげで、ダンスを踊ったことのない門外漢にも伝わってきます。

 

後日リメイクされた、リチャード・ギアJ.LOことジェニファー・ロペス版の『Shall We Dance?』(2004年)に比べると当時は少し安っぽく感じた日本のオリジナルが、それでもいかに優れていたかが良くわかります。

 

確かに見た目はゴージャスなリメイク版ですが、草刈民代の気高い雰囲気、役所広司扮する主人公の淡い恋のすがすがしさ、家庭をもっている男の微妙に揺れ動く心など、繊細な心理描写は圧倒的にこちらのオリジナル版の方がよくできています。

 

リメイク版はほとんどオリジナルを踏襲していました。一見、純日本的な映画の様に認識していましたがアメリカでも評価されたところから人や感情の普遍性に到達していたのでしょう。そうなると、日本アカデミー賞で各賞を総なめしたのも当たり前で、この映画、世界に冠たるものと言っても差し支え無いものとなりますね。

 

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余談ですが、ちょっと気になったのは「あなたのダンスは気持ち悪い」を2回使ってることで、竹中直人はそれでいいとしても田口浩正のは、「あなたのダンスは汗臭い」ぐらいで良かったのではないでしょうか?