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「99.9 -刑事専門弁護士-」と「リーガル・ハイ」のコミカル法廷ドラマ比較

最終回を終えた「99.9-刑事専門弁護士-」と続編が待たれる「リーガル・ハイ」とは、そこここにコミカルな場面を入れていて、法廷ドラマの中でもちょと異質な点で共通しています。
ふざけすぎ(!)との声もあるようですが、もちろん時事問題や法曹界事情も織り込んで、ここぞというところで本筋に入ってくる、そのコントラストも魅力です。ただ、あまりにおふざけの時間が長いようになってきた様に感じなくもないですが...。

 

 目次

 

 

法廷ドラマとジャンル付けすると、目につくものだけでも以下のようにたくさんあります。主人公が2代、3代と替わって続いているものまであります。トリック、どんてん返し、メロドラマ、サスペンス、社会正義他、ドラマのあらゆる要素を盛り込むことができるのも、支持される要因でしょう。

事件(1978年 - )                若山富三郎、他
赤かぶ検事奮戦記(1980年 - )          フランキー堺、他
都会の森(1990年)              高嶋政伸 
七人の女弁護士(1991年 - )           賀来千香子
家栽の人(1993年)              片岡鶴太郎
正義は勝つ(1995年)             織田裕二
最後の弁護人 (2003年)              阿部寛
離婚弁護士(2004年 - 2005年)         天海祐希
マチベン(2006年)              江角マキコ、他
新マチベン 〜オトナの出番〜(2007年)     渡哲也
ジャッジ 〜島の裁判官奮闘記〜(2007年)    西島秀俊
告発〜国選弁護人(2011年)          田村正和
リーガル・ハイ(2012年 - )           堺雅人
グッドパートナー 無敵の弁護士(2016年 - )   竹野内豊
99.9-刑事専門弁護士-(2016年 - )         松本潤

  

 

1.「リーガル・ハイ」   フジテレビ

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1)概要:

訴訟で一度も負けたことがない敏腕弁護士の古美門研介と真面目で正義感の強い新米弁護士・黛真知子の2人が繰り広げるコメディタッチの法廷ドラマです。取り扱う裁判は刑事裁判もありますが民事裁判が多く、現代の社会問題を裁判を通じて昇華させ、見事にコミカルなエンターテイメントにしています。

第1期 2012年4月
第2期 2013月10月
脚本 古沢良太

2)主人公 古美門研介(堺雅人

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キャラクター:得意の口八丁で相手を言いくるめて有利な証言を集め、相手がぐうの音も出ないほどに理屈を並べ、完膚なきまでに論破するのを手法としています。「判例に頼るな、判例を作れ!」が信条です。
古美門にしては、正義感や被疑者の人権や温情や和解というものに価値はなく、弁護士は神ではないのだから、真実が何かを知るよしもないので、情を捨て、依頼を完遂して勝つ事に専念すべきという信念を持って、こだわるのは多額の報酬や、敵対する検察・弁護士を徹底的に叩きのめすことです。

3)バイプレーヤー

服部某(里見浩太朗

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キャラクター:事務員なのですが、下の名は出てきたことがなく不明です。「昔、何々をしておりました」と新たな過去がほぼ毎回出てくるほど、謎に満ちた過去と特技を多く持ち合わせ、古美門をサポートする他、ボディガード的な役割も務め、古美門の身に降りかかった危険を排除します。その多才さに反し、自分のことを「何の取り柄もない」と謙遜し、特技について「たわいもない取り柄でございます」とその都度述べています。古美門との動と静、激情と鎮静の対比が服部の存在で際立たせています。

黛真知子(新垣結衣

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キャラクター:早稲田大学法学部卒業。古美門事務所には、最初は自分の信じるべきものを探すために入りましたが、やがて古美門に打ち勝つという明確な目標を後に見出し古美門の下で働き続けることになりました。古美門と時に喧嘩しつつなじられながらも右腕として弁護活動を行い、少なからず古美門のサポートを行っていました。古美門法律事務所の事務職・秘書的役割も服部と共に担っています。困っている人を見過ごせない性格で、いつも依頼人を思いやる気持ちに基づき弁護士活動をして、あくまで理想の弁護士を追い求めています。

4)カウンターヒーロー

三木長一郎(生瀬勝久

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キャラクター:古美門を偏執的に敵視する弁護士で、古美門を金のなる木という事もあって重宝していましたが、時として犯罪まがいの手法を平気で取る彼に次第に危機感を覚え、そして過去のある決定的に確執となる事件が起こり、ついに彼を解雇しました。
古美門の存在を脅威に感じているのと過去の事件の確執のため、弁護士廃業に追い込むことを画策し、陰日向に暗躍するのですが、最後の詰めが甘いのと古美門のあまりのしぶとさに毎回失敗しています。

醍醐実(松平健)第2期

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キャラクター:地方から異動してきたベテラン検事で、自身の周囲に氷点下になるほどの冷気を漂わせています。その冷徹な精神力は、古美門の屁理屈攻撃にも動じません。当初の安藤貴和裁判で古美門を打ち負かし、その後、最高検察庁に異動し、最高裁判所での再戦時に古美門にPTSDを発症させるに至りました。シリーズ2期目とはいえちょっとやりすぎ感のあるキャラ付けです。

 

2.「99.9 -刑事専門弁護士-」 TBS{日曜劇場」

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1)概要:

「刑事専門弁護士」をメインの題材にしたエンターテインメント作品で、連続ドラマとしては初めての試みといえます。タイトルの「99.9」は、日本の刑事事件における裁判有罪率99.9%を意味しており、残された0.1%の確率の無罪を解き明かす弁護士が主人公となっています。
SEASON Iでは主に「検事対弁護士」の図式で物語が進められ、さらにSEASON IIでは裁判官を加えた「トライアングル」の図式からドラマを構成していくこととなりました。

SEASONⅠ 2016年4月
SEASONⅡ 2018年1月
脚本 宇田学

2)主人公 深山大翔(松本潤

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キャラクター:常に飄々としたマイペースの性格で、「深山の常識は他にとっての非常識、他にとっての常識は深山にとっての非常識」と評されるユニークな思考と奇異な言動をし、裁判官たちの間では「被告人に対して細かい質問を繰り返したり、有ること無いことにイチャモンをつけるわ、裁判を混乱させてばかりいる面倒な弁護士」として知られていますが、悪びれる様子はありません。

しかしながら、鋭い観察力を持ち、周囲が諦めた事件でも、調書のとおりに現場や再現現場で実際に検証して徹底的に事実を追究します。人によって様々に異なる「正義」や「真実」と違い、「事実は1つ」という信条をかたくなに持っています。弁護対象者の有罪無罪よりも、事実が知りたいとしています。従って弁護対象者と最初に面会・接見する時には必ず出身地についての質問から始め、現状に至るまでの身上をこと細かに訊いて煙にまいていきます。

3)バイプレーヤー

佐田篤弘(香川照之

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キャラクター:専門としている民事訴訟や、多くの企業の顧問弁護士として能力を発揮し、斑目法律事務所に大きな利益をもたらしています。その信条は「勝たなければ意味がない」で、富と成功を求め、そのためには違法スレスレの調査も厭いませんが、周囲からは「勝手おじさん」と面前でも呼ばれていて、事務所内での人望はあまりありません。裁判や訴訟においては「依頼人の利益」を優先しており、「事実を明らかにすること」を優先する深山とは折り合いが悪くもあるのですが、彼のやり方も弁護士としての1つのやり方として理解を示すようになっていきます。
佐田弁護士に、SEASONⅡ第2話で「検察は最後に裁くのは裁判官だと言い、裁判官は検察が挙げてきた証拠だと言って判決を下す、そして我々弁護士も時に依頼人の利益を優先して打算的になる。裁かれる人の人生には誰も責任を負おうとしない。いったい裁判とは誰のためにあるんでしょうね。」と言わしています。
このドラマ、このキャラクターの存在とと香川照之の演技がないと成り立たないでしょう。

立花彩乃(榮倉奈々)SEASONⅠ

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キャラクター:向上心が強く、勝ち気な性格。言われた事に120%のパフォーマンスで応える努力型。異動当初は刑事事件担当には乗り気ではありませんでしたが、徐々に人を助ける仕事にやり甲斐を感じるようになり、そこが原点だということに気づきました。

尾崎舞子(木村文乃)SEASONⅡ

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キャラクター:元裁判官の弁護士で、弟の刑事事件により裁判官を退官し、司法の世界から距離を置いていました。刑事裁判の担当としてキャリアを重ね、547件の事件を扱い、裁判官としては優秀という評価を得ていました。
事件調書の真偽に疑問を持たず、論理的思考に走りすぎるところは、元裁判官の経歴が遠因となっているのか、実証的な視点に欠けることから深山と対立することになりますが、やがて、0.1%が調書に現れないことに直面して深山を信奉するようになりました。


4)カウンターヒーロー

川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)SEASONⅡ

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キャラクター:東京地方裁判所所長代行の裁判官で、被告人の心に残るような訓戒をし、周囲からはよい裁判官と思われていますが、深山には「裁判でしか会わない被告人に人生を説くなんて無責任だ。」と言われてしまいます。
深山のことは「腕の良い弁護士」として聞いていました。SEASONⅡ第8話では、深山と尾崎が担当する殺人事件の裁判長を務めますがが、過去の裁判に影響を与えるような鑑定事案を無視し、裁判員を誤誘導して、危うく冤罪を生むことになって深山から「最初から真実は一つでした。」と糾弾されてしまいます。
笑福亭鶴瓶はどう見ても裁判官のキャラクターではありませんが、法曹界の闇を暗示する役どころの胡散臭さは見事に出ていました。

 

3.まとめ

「99.9-刑事専門弁護士-」は、真実を見つけた時に駄洒落が洪水のようにあふれ出てきます。

リーガル・ハイ」は完全拝金主義を標榜しつつ本当は正義に戻るのですが、その正義を茶化してはぐらかしてしまいます。

どちらも裁判という重~い事象をコミカルに笑い飛ばして内在する深刻な問題を垣間見せていました。