映画「スターリングラード」は単なるスナイパー対決ムービーではありません!
この物語を象徴する様にヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)の幼少期に祖父と馬を囮にして狼をしとめる場面が序章として開演を告げます。
ドイツ軍との圧倒的な戦力・装備の差でバタバタとロシア兵は倒れていきます。たまりかねてロシア兵の1人が退却を叫びますが、今度は、ロシア軍が退却しようとする兵士を後方から銃撃します。
この壮絶なスターリングラードの戦闘を舞台に、累々と横たわる屍の中から物語は始まります。
ダニロフ(ジョセフ・ファインズ)は、悲惨な戦場で出会い、友人となったヴァシリの狙撃の技術を絶望的な状況にあるソビエト軍の士気を鼓舞するために利用しようとします。
ダニロフの思惑は軍司令官に認められ、ヴァシリの超人的な活躍はダニロフの喧伝によって本人の意思とは別にどんどん英雄化されてゆきます。
その中で、ヴァシリとダニロフは、両親をユダヤ人ということでドイツ軍に虐殺されて、ソビエト軍に入隊してきたターニャ・チェルノワ(レイチェル・ワイズ)と出会うことになります。
ダニロフはターニャを思い、危険の少ない軍の情報部に本人の意思に反して転属させます。ターニャはあくまで戦地でドイツと戦うことを望み、有能な狙撃手ながら素朴なヴァシリに惹かれてゆきます。
泥沼の様相を見せてきたスターリングラードの市街戦では将校や工兵を狙撃し合う陰湿な戦闘になってきました。あまりのヴァシリの活躍にドイツ軍は射撃学校の校長のエルヴィン・ケーニッヒ少佐(エド・ハリス)を投入します。ケーニッヒ少佐は、狙撃手に射殺されて戦死した息子にヴァシリの射殺で報いようとします。
ヴァシリは自分の祭り上げられた英雄の姿に疑問を抱き普通の兵士になりたいと思うようになり、ダニロフに戦意喪失の嫌疑をかけられてしまいます。
一方で、幼いサーシャ・フィリポフ(ガブリエル・トムソン)は、ヴァシリならドイツに勝ってくれると憧れていましたが、ケーニッヒ少佐とダニロフとの間を行ったり来たりしているうちに双方に利用され、ケーニッヒ少佐に処刑されてその屍を囮にされてしまいます。
戦況はソビエト軍にとって最悪となり市民を対岸に避難させる時にターニャは砲撃の至近弾に見舞われてしまいます。ターニャとサーシャの死に絶望したダニロフは自らケーニッヒ少佐の標的となって、ヴァシリの狙撃を助けます。
さて、この映画は何を訴えているのでしょう。ありきたりですが、戦争の悲しさ、人間の愚かさ、崇高さ、と言葉でかたづけしまえばそれまでですが、ウラルの羊飼いが英雄に祭り上げられ、ドイツ文学を学んでいた娘が望んで銃を持ち、高級将校がドロにまみれ這いつくばって敵を待つ。
戦争という行為がどれだけ意味のないことかを訴えているように思えます。