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ドラマ『横山秀夫サスペンス 影の季節』傑作ミステリーのドラマ化です!!

このドラマは横山秀夫の第5回松本清張賞受賞作の『陰の季節』及び『陰の季節』を表題作とする短編集に収録された『黒い線』を原作として2016年4月18日にTBS系「月曜名作劇場」で放映されました。

 

目次

 

 

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1.概要

脚本を窪田信介、監督は榎戸耕史で、主演が仲村トオル、他に和久井映見滝藤賢一などとなっています。当時、「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞(1998年)受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾です。

ちなみに『陰の季節』は、2000年から2004年まで同じTBS系「月曜ドラマスペシャル」にて上川隆也が主演を演じたバージョンもあります。


舞台は警察組織を陰で支える管理部門「警務部」で、警察職員の人事・福利厚生・教育などを担当し、さらには警察職員が被疑者となった事件の捜査も行います。その群馬県警警務部警務課の調査官・二渡真治警視 人事担当(仲村トオル)は、警察組織の掟に背き、天下り先ポストに固執する大物OBの元群馬県警刑事部長 尾坂部道夫(伊武雅刀)にルールを守らせるため奔走します。

そして、『黒い線』は警務課係長 七尾友子 警部 婦警担当(和久井映見)が視点人物となって、七尾友子が直面したのは「何故、手柄を立てた平野瑞穂 巡査が姿を消したのか?」との謎に直面します。つまり「ホワイダニット」(Why done it = なぜ犯行を行ったか)作品です。

この二つに、新たに発生した連続カージャック殺人事件を組み合せてドラマは構成されています。


2.あらすじ

群馬県警に新たに、警務部長として着任した赤間肇 警視正滝藤賢一)は、早速に警務課職員たちにあれこれとケチをつけてきました。警務部警務課の二渡は、赤間が異動するまでの辛抱だと同僚をフォローします。

 

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そんな県警で静かな大事件が発生しました。元刑事部長で建設業界の団体に天下った尾坂部が、期限を過ぎても辞めないと言い出したのでした。OBたちのポスト調整も警務部の重要な仕事であり、歯車がひとつ違えば行き場を失う者も出てきます。警察組織の掟を守らせるため、二渡は尾坂部を説得すべく調査を始めました。

二渡はまず、警察学校の同期で尾坂部の子飼いの部下であった、今は連続殺人事件の捜査をしている刑事課長の前島泰雄(千葉哲也)に声をかけるのでした。しかし前島は尾坂部が現職を続けることを既に知っていました。直接話をすべく尾坂部邸を訪れますが、尾坂部は関係ないと言い残して立ち去ってしまいます。その後も何とかして退任させようと調査を続けるうちに、二渡は尾坂部が未解決事件を追っているのではないかと感じ始めました。

 

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一方、七尾友子が目をかけていた鑑識課の似顔絵担当の平野瑞穂 巡査(山下リオ)が、彼女の似顔絵で犯人の早期逮捕となったため一躍注目されたにも拘わらず記者会見の翌日から無断欠勤していることに不審を抱き調べ始めます。


3.構成

ドラマは次の3つの柱からなっています。それぞれ「尾坂部の居座り事件(8年前の事件)」、「連続女性暴行事件」、「瑞穂行方不明事件」です。序盤でこれら3つの事件について挙げ、それぞれ独立した事件と思わせる。中盤で「瑞穂も女性暴行事件の被害者」ではないかと思わせて「連続女性暴行事件」と「瑞穂行方不明事件」とを関連させます。

ところが、終盤で「尾坂部こそ女性暴行事件」に関わって来て、すなわち「連続女性暴行事件」と関わっていたのは「尾坂部の居座り事件」の方だったとしますが、最終盤にて3つの事件はどれも無関係であったと判明することになります。

この3つの事件を繋ぐべく、原作に無かったアレンジ部分が必要になるのですが、このために登場人物の推測パートが押し込んできます。前島刑事課長の「8年前と現在の事件の犯人が同一犯かも」とか七尾友子の「被害者の共通点から瑞穂も狙われるかも」が接着剤となりますが、あくまで憶測であって、結局共に的中していません。
物語の流れで視聴者にミスリードさせるならともかく、登場人物の推測を用いてミスリードさせるのは好ましくないとは思うのですが...

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4.付録

どうやら、同じく横山秀夫原作の映画『64(ロクヨン)』(2016年5月7日)の公開を控えて、同じキャストでのリメイク作品となったようです。映画版『64』でも仲村トオル滝藤賢一が二渡と赤間役で登場します。また、映画版『64』で活躍する三上役の佐藤浩市もこちらでチラッと姿をみせています。


5.まとめ

尺を気にして事件を3つくっ付けたのでしょうか、原作に沿って『陰の季節』や『黒い線』だけをじっくり描いた方良かったのでは、原作にはそれだけのポテンシャルがあるように思います。

 

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しかしながら、原作通り尾坂部が青木運転手相手に仕掛けた「傍聞き」のシーンは唾を飲み込みました。そして、潤んだ瞳で夕日を見守る尾坂部も心打つものがありました。振り返ると印象的なシーンは全て伊武雅刀演ずる尾坂部が関わっていたりするのはさすがの存在感のなせる技なのでしょう。