凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『ミリオンダラー・ベイビー』この感動的問題作品をあなたはどう受け止めますか?

さて、この映画はどういう映画なのでしょうか?

 

米国社会における下層白人であるアイリッシュらしい貧乏な家庭の出のヒロインが、どん底から這い上がろうとし、老ボクサーの後押しで、名トレーナーとのタッグが実り、『ロッキー』みたいに栄光を掴んだところで決定的なダメージで挫折、敬虔なカトリックの名トレーナーに突き付けられた尊厳死、3000万ドルの低予算と37日という短い撮影期間で製作されたクリント・イーストウッドによる25番目の監督作品でした。公開当時イーストウッドは74歳でした。

 

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ボクサーとトレーナーの師弟愛、ボクシングによる栄光と挫折、主人公を理解し優しく見守る老ボクサー、尊厳死、信仰と自殺、アメリカのアイリッシュ、どれも重たいテーマなのですが、イーストウッドは見事に演じ、演出しています。久しぶりに心打たれてしまいました。

 

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そして、この老獪な監督の意を受けた(?)ヒロインのマギー・フィッツジェラルドヒラリー・スワンク)、元ボクサーのエディ・”スクラップ・アイアン”・デュプリス(モーガン・フリーマン)が好演し、結果、第77回アカデミー賞(2005年)の作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞しました。

 

この様に見どころの多い映画ですが、観る人によって当然どの部分に感銘をうけるか、また異議を感じてしまうか、様々でしょう。素人目にはボクシングとボクシング・ビジネスの裏側が良く描かれているように見え、尊厳死についても主人公フランキー・ダン(クリント・イーストウッド)とヒロインのマギーの行動と意思に賛否が分かれてきます。

 

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つまり、『ミリオンダラー・ベイビー』は、ボクシングを題材にした人間ドラマで、『ロッキー』のようなスポ根サクセス・ストーリーを期待すると思いっきりはずされますが、リアルで精緻な人間描写はたっぷり見ごたえがあります。

 

序盤は、主人公フランキーとマギーがやがて世界を目指して駆け上がっていくというサクセス・ストーリーですが、ハッキリいってしまえば、この筋書き自体は三流もいいところで、ボクシングについても少々非現実的な要素が見受けられますし、大して観るところはありません。

逆にいえばこの語り尽くされたような平凡な話にグイグイ引きこんでいくのだから、監督賞受賞も頷けるというものでしょうか。

 

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やがて中盤以降、とんでもないどんでん返しのビックリ仰天な展開を見せますが、ここからが『ミリオンダラー・ベイビー』の真の見せ場でしょうか、前半のサクセスストーリーはただの前振りに過ぎなかった事がわかります。

 

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そして最後には、本当の父娘かというほど親密になったフランキーとマギーが、それまで生きてきた人生の意味、価値観を突き付けられ、フランキーは絶望的な苦悩に直面します。

 

そして、観客はショッキングなこのラストに、どのような思いを抱くのでしょう。