凸凹玉手箱

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映画『サンダーボルト』イーストウッドのロードムービーです!!

 

この映画『サンダーボルト(Thunderbolt and Lightfoot)』は、マイケル・チミノ監督、クリント・イーストウッド主演の1974年のアメリカ映画作品です。

 

目次

 

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1.作品紹介

本作は、『ダーティハリー2』(1973年)の脚本をジョン・ミリアスとともに共同執筆し、クリント・イーストウッドに抜擢されたマイケル・チミノが初めて監督を手掛けた記念すべき作品で、当時『ダーティハリー』シリーズの大ヒットにより、マネーメイキングスター2年連続1位を獲得して大スターの地位を確立していたイーストウッドが、『真夜中のカーボーイ』(1969年)や『スケアクロウ』(1973年)などを彷彿とさせる男の友情とロマンを描くロードムービーに挑戦した一篇です。

1969年にアメリカ映画界に大きな変革をもたらしたデニス・ホッパー監督作『イージー★ライダー』以降の、日本では<アメリカン・ニューシネマ>と呼ばれた新しいハリウッドの映画群の中の一本とも捉えられ、アクション映画が多いイーストウッドのキャリアでも異彩を放つ作品となっています。

俳優業を中心としつつ監督業にも乗り出し、自身のマルパソ・プロダクションで出演作などすべて企画段階からイニシアチブをとっていたイーストウッドは、マイケル・チミノによる脚本に惚れ込み、自身で監督も手掛けるつもりも、最終的にはマイケル・チミノにチャンスを与え、結果、とてつもない傑作となった次作『ディア・ハンター』でアカデミー作品賞、監督賞も受賞するというチミノ監督の才能を見出す作品となりました。


2.ストーリー

1)プロローグ

障害者に成りすました若者ライトフット(ジェフ・ブリッジス)は、中古車ディーラーのオーナー(グレゴリー・ウォルコット)の目の前で、1971年型”ポンティアック・ファイヤーバード”を盗み逃走します。

教会の牧師に扮していたジョン・ドアティー(クリント・イーストウッド)は教会でまことしやかにミサを行い説教をたれていました。


2)逃走・出会い・逃走

ドアティーは、そのミサの最中に銃撃され、その場から逃走します。
そこに通りがかったライトフットが、ドアティーを追っていた男を轢き殺してしまいました。
ドアティーはライトフットの車にしがみつき、彼と共に人気のない山岳地帯に向かいます。

ガソリンスタンドで車を奪った2人でしたが、ライトフットに別れを告げたドアティーは、車を降りバスターミナルに向かいました。

そこでドアティーは、自分を追うレッド・レアリー(ジョージ・ケネディ)の姿を見かけ、再びライトフットの車に飛び乗り逃走し、モーテルで一夜を過ごしました。

翌朝、食事をしたドアティーとライトフットは、足取りを掴んでいたレッドに銃撃されて、相棒のエディ・グッディ(ジェフリー・ルイス)の運転する車に追われました。


3)サンダーボルトとは

何とかレッド達を振り切ったドアティーとライトフットは、その後ヒッチハイクをして、狂ったドライバー(ビル・マッキニー)の車に乗ってしまいます。

 

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ドアティーは、ドライバーを叩きのめして車を奪い、一息ついて、身の上話となり、ライトフットは、ドアティーが「サンダーボルト」と呼ばれていた有名な銀行強盗だったことを聞かされます。

ドアティーは、軍隊時代の経験を生かして、金庫を破る際に20ミリ機関砲を使うことから、その異名がついていたのでした。

そして、追いかけられたレッドは朝鮮戦争時代の戦友でしたが、サンダーボルトと強奪した50万ドルを、彼が独り占めにしたと思い込み、行方を追っていたのでした。

しかし、50万ドルは、強盗団のリーダーがモンタナの小学校の黒板の裏に隠したのでしたが、サンダーボルトが、50万ドルを探しに小学校を訪れるると、校舎は新築されて昔の面影はありませんでした。

 

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4)ライトフットの提案

その後、サンダーボルトとライトフットはレッドとグッディに捕まり、山奥に連れて行かれ、ライトフットはレッドに腹部を強打されますが、サンダーボルトは2人から銃を奪ってしまい、50万ドルがまだ学校に隠されているはずだということと、レッドに自分の潔白を説明して納得させました。

しかし、その学校の建物がどこにあるかが分からない4人は、ライトフットの提案で、手を組み再び同じ金庫を襲撃することを考えました。


5)資金稼ぎと金庫破り

4人は、手分けをして、作業員やアイスクリーム売りなどをしながら資金を稼ぎ、準備を進めていきます。

ライトフットは、仕事仲間のカーリー(ゲイリー・ビジー)から作業車を借り、レッドと共に20ミリ機関砲を運びました。

犯行当日の段取りを話し合った4人は、電報局の警報をいかに阻止するかを考え、そこに女装して入り込むライトフットは、緊張を隠せません。

犯行は実行され、サンダーボルトとレッドは、金庫のマネージャー宅を襲い、ロックの番号を聞きだし、金庫に侵入して機関砲を運び込みます。

女装したライトフットは、電報局員を色仕掛けで誘い殴り倒し、サンダーボルトとレッドが、金庫のドアを開けた瞬間に鳴った警報を止めました。

グッディが、逃走用の車でライトフットを拾い、機関砲で壁をぶち抜いたサンダーボルトとレッドは金を奪いました。


6)逃走の挙句

現金を手に入れた4人は、金庫の外で待機していた車でドライブイン・シアターに向かいます。
しかし、隠れていた花粉症のレッドのくしゃみと、彼のシャツがトランクからはみ出しているのにチケット係が気づき、ただ見客だと察した係がサンダーボルトらの車を捜している際、強盗事件で到着したパトカーに4人は追われてしまいました。

グッディは警官の放った銃弾を受け、見限ったレッドが彼をトランクから放り出します。

 

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その後、レッドは裏切って、サンダーボルトを殴り倒し、以前から気に入らなかったライトフットを叩きのめしました。

レッドは、金を奪って逃走しますが、警察に追われてデパートに車ごと突っ込み、警備犬に噛み殺されてしまいました。


7)黒板の奥

ダメージを受けたライトフットを連れ、ヒッチハイクをしてたどり着いた場所で、偶然にサンダーボルトは、例の小学校の校舎を見つけました。
校舎は、モンタナの歴史的建造物として文化財に指定され、移設保管されていたのでした。

2人は、校舎内の黒板の裏に、そのままの状態で隠されていた50万ドルを手に入れました。

 

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その後、サンダーボルトはキャデラックのコンバーチブルを買い、ライトフットの元に向い2人は颯爽と旅立ちました。


8)エピローグ

しかし、ライトフットは、レッドに殴られたことが原因で、息を引き取ってしまいます。
そして、ようやく幸運を手に入れた矢先のライトフットの死に、サンダーボルトは呆然としながら宛てもなく車を走らせるのでした。

 

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3.四方山話

1)監督マイケル・チミノ

本作がデビュー作となる、撮影当時、弱冠30歳のマイケル・チミノを起用し、自らメガホンをとることなく演技に徹したイーストウッドの意欲が窺える作品です。
4年後に「ディア・ハンター」(1978年)でアカデミー監督賞を受賞することになるマイケル・チミノは、パワフルなイーストウッドジョージ・ケネディのキャラクターを活かしたスケール感と、それとは対照的な哀愁漂うラストなどの、メリハリのある演出は光ります。


2)ジェフ・ブリッジス

奔放な若者ゆえにラストの死がショッキングな、撮影当時まだ23歳のジェフ・ブリッジスの好演は忘れ難く、第47回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。


3)ジョージ・ケネディ

イーストウッドとは翌年『アイガー・サンクション』(1975年)でも共演する巨漢のジョージ・ケネディは、同じ長身のイーストウッドと同画面に登場すると、その迫力が倍増するところも注目で2人の相性の良さを感じます。

 


4)宣伝

公開当時、イーストウッドの思惑とは裏腹に世界的にアクション映画として宣伝された『サンダーボルト』は、結果的にイーストウッドの映画会社ユナイテッド・アーティスツでの最後の映画となりました。
各国のポスタービジュアルを見れば一目瞭然で、すべてのデザインにキャノン砲や銃が施され、銀行強盗もののアクション映画そのものです。

 

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5)自然とアイデア

柄の悪い悪党達が度々身を寄せるモンタナの山や川の大自然の描写が美しく、20ミリ機関砲を使った現金強盗のアイデアなども斬新でした。



 

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4.まとめ

プレイボーイでお調子者のライトフットを演じるジェフ・ブリッジス、そんなライトフットを無言で受け入れるイーストウッド、最高にカッコ良いのです。

トランクいっぱいにウサギを積んでるクレイジーな奴、主人公にタイマンのケンカ挑むくせに喘息出ちゃってゼエゼエしたり、挙句のはて犬に噛み殺されるレッド、そのケンカに居合わせて何したらいいのかわからず結局レッドに殴られてしまうグディ、みんなやってくれます。

そして、なんとも切なすぎるラストにかぶさる、ポール・ウィリアムスのカントリーソング。派手な銀行強盗もの!と思って見ると肩透かしの気分かもですが、こういった映画が、70年代テイストあふれるロードムービーなのでしょう。