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映画『ザ・シークレット・サービス』名優二人のせめぎ合いが見ものです?!

この映画『ザ・シークレット・サービス(In the Line of Fire)』は、1993年に制作された、監督ウォルフガング・ペーターゼン、主演はクリント・イーストウッドジョン・マルコヴィッチレネ・ルッソが共演のサスペンス・アクション・スリラー映画です。

目次

 

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1.紹介

ウォルフガング・ペーターゼン監督のシャープな演出も冴え、イーストウッドの盟友エンニオ・モリコーネの音楽もドラマを盛り上げます。

リンカーン記念館や、クライマックスの舞台ホテル・ボナヴェンチャーエアフォースワンの映像など、本物の迫力もなかなか見応えがあります。

北米興行収入は約1億ドルを突破し、全世界では約1億8700万ドルに迫り、イーストウッド作品の中では、興行的に成功した作品でもあります。

第66回アカデミー賞では、助演男優賞(ジョン・マルコビッチ)、脚本、編集賞にノミネートされています。


2.ストーリー

1)プロローグ

ベテランのシークレット・サービスのフランク・ホリガン(クリント・イーストウッド)とアル・ダンドゥレア(ディラン・マクダーモット)は、偽札の取引現場に向かいました。

ダンドゥレアが、シークレット・サービスだと気づいた偽札グループのリーダーのメンドーザ(トビン・ベル)は、彼を拘束してホリガンに射殺させようとしました。

ホリガンは、渡された銃の重さで弾が入っていないことに気づき、ダンドゥレアに銃を向けて引き金を引き自分を信頼させます。

そうして自分の銃を受け取ったホリガンは、間髪入れずにグループ全員を射殺しました。

 

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2)新たな任務

シークレット・サービスの囮捜査ではなく、警護官になりたいと嘆くダンドゥレアに、その過酷さを伝えたホリガンは、彼に、妻子の元に帰るよう慰めました。

その後ホリガンは、あるアパートの女主人からの通報で、ケネディ大統領暗殺事件の記事や写真を収集している男の存在を知りました。

後日、ホリガンはダンドゥレアとそのアパートを調べに行くと、ケネディ大統領の警護をする、若きホリガンが写っている写真以外は消えていました。

その夜ホリガンは、リンカーン大統領の暗殺者、ジョン・ウィルクス・ブースをなぞって「ブース」と名乗る、アパートの男(ジョン・マルコビッチ)からの電話で、大統領暗殺の予告を受けました。

 

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3)大統領警護に復帰

ホリガンは、同僚のサム・キャンパーナ(ジョン・マホニー)やリリー・レインズ(レネ・ルッソ)、ビル・ワッツ(ゲーリー・コール)、マット・ワイルダー(グレッグ・アラン・ウィリアムス)らに、ブースの件を話します。

キャンパーナは、ホリガンの話を一応聞き入れて、彼のアパートの電話に、盗聴と逆探知機を仕掛けます。

その後ホリガンは、選挙遊説が始まる大統領の警護につかせてくれるよう、キャンパーナに頼みこみました。

そして、大統領直属の警護にあたることになったホリガンが、既にピークは過ぎていたため、ハードな仕事に不向きな彼を同僚達は心配するのでした。

年齢からくる衰えを隠せないホリガンは、体力的にも問題があり、同僚からからかわれたりもしました。

 

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4)挑発と非協力

その後、再びブースからの電話があり、ホリガンの警護を監視していると言いました。

ホリガンは30年前、ケネディ大統領暗殺事件の警護を担当し、大統領を救えなかったという自責を、現在まで引きずっています。

そこに付け込み、ブースはホリガンを挑発しますが、逆探知で彼の居場所を突き止める試みも、ブースは逆探知を妨害する装置で、警察側を罠にはめてしまいます。

ホリガンらは、大統領補佐官ハリー・サージェント(フレッド・トンプソン)に、大統領暗殺について警告しますが、 選挙戦で不利な立場にあることを理由に、真剣に取り合ってもらえません。

警護官らの警告は聞き入れられず、フランス大使館での晩餐会が開かれますが、そこでは何も起こりませんでした。


5)ブースの企み

その後ホリガンは、”リンカーン記念館”にレインズを誘い、彼女を口説こうとします。

レインズはデートがあるためにその場を去るが、彼女が自分に気があることをホリガンは感じ取りました。

 

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大統領に近づく方法として、ブースはビジネスマンを装い、”サウスウエスト銀行”の女性行員パム・マグナス(パトリカ・ダルボ)に近づきました。架空会社の偽装口座を開設したブースは、パムと巻き添えをくったルームメイトを殺害しました。

さらに、金属探知機を警戒し、プラスチック樹脂製の銃を作り、暗殺の準備を進めていました。

ブースはホリガンに電話をかけ、彼を挑発してわざと逆探知させ、通りに誘き出しました。

ホリガンはブースを見つけて追跡し、車のフロントガラスに接触した彼の指紋を調べます。

該当者は見つかったものの、極秘ということでホリガンには知らされませんでした。


6)ブースの正体

ある夜、警護を終えたホリガンは、再びレインズを口説くが、ベッドインするものの彼女が呼び出されてしまいホリガンは思いを果たせませんでした。

その後ホリガンは、次の遊説先で体調不良を起こし、会場にいたブースの罠にはまり、風船の音を銃声と間違える失態を演じてしまいます。

それによって、大統領への支持を下げてしまったホリガンは、サージェント補佐官から非難され、責任者ワッツから警護を外すことを言い渡されました。

レインズに、素直に謝罪するよう助言されたホリガンだったが、彼は、頑なにそれを拒んでしまいます。

キャンパーナにも相談したホリガンは、独自に調べていたダンドゥレアの情報で、美術の教授リガー(ジョン・ハード)から、怪しい男に会ったことを知らされました。

リガーの記憶で人相書きを作らせ、彼に知人を紹介されたホリガンは、”ミッチ・リアリー”という男にたどりつきます。

リアリーの家を調べたホリガンとダンドゥレアは、彼(ブース)が元CIAの暗殺要員だということを突き止めました。

CIAは、指紋を調べた時点で既にそれに気づき、独自に調査を進めていたのでした。


7)相棒の死

職務に絶えられなくなったダンドゥレアは、辞職することをホリガンに言いましたが、ホリガンは、捜査に協力して欲しいことをダンドゥレアに言い、彼を説得して引き止めるのでした。

その後、ホリガンとダンドゥレアは、リアリーの電話を逆探知して、居所に急行した路上で彼を発見します。

建物の屋上に逃れたリアリーは、そこから落下しそうになったホリガンに手を差し伸べて挑発しました。

 

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ホリガンは非常階段に落ちますが、そこに現れたダンドゥレアは、リアリーに射殺されてしまいます。

ダンドゥレアの死にショックを受けるホリガンは、リアリーから電話を受け、彼を逮捕することに一層執念を燃やすのでした。


8)忸怩たる思い

リアリーの部屋から出た、”W.S. スケラム LA”と書かれたメモを手掛かりに、捜査を続けたホリガンは、サージェント補佐官に、カリフォルニアの遊説の危険性を訴えますが聞き入れられません。

ホリガンは、選挙資金の寄付金を集めのパーティー会場の、先陣隊に加わるため、ワッツを説得するようレインズにそれを頼みました。

ロサンゼルスに到着したホリガンらは、会場となるホテル”ボナヴェンチャー”で警戒態勢に入ります。

寄付を続けたリアリーも、招待客に扮して会場に向かう準備を進めています。

リアリーはホテルに到着し、ホリガンが厳重なチェックを続けながら接近するのですが、ホリガンは、ベルボーイに対して過剰な行動をしたため、大統領命令を受けて警護を外されてしまいます。

レインズは、それをホリガンに伝えるようワッツに言われ、大統領の宿泊する部屋に向かった彼の元に向かいました。

それに納得したホリガンは、ケネディ大統領暗殺事件の警護の失敗と、その時の状況と、今回の警護で死ぬ覚悟があるのかリアリーに問われたことをレインズに語り無念の表情を浮かべるのでした。


9)そこにある危機

レインズは、そんなホリガンを労わいますが、彼は翌日、サンディエゴに向かおうとして空港に着きました。

しかしホリガンは、”W.S. スケラム LA”が”サウスウエスト銀行”の暗号化された電話番号だと気づき、リアリーが、架空口座を作った銀行の番号だと気づきました。

ホリガンは、危険が迫っていることをレインズに知らせますが、既に大統領は会場に到着しようとしていました。

キーホルダーに弾丸を隠し、プラスチック製の銃で金属探知機を通り抜けたリアリーはパーティー会場に入ります。

 

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リアリーは、隠し持っていた拳銃をテーブルの下で組み立てて弾丸を込めました。

ホテルに戻ったホリガンは、銀行から送られてきたリストと、寄付をした出席者のリストから、リアニーの座席を確認します。

リアニーは会場に現れたホリガンに気づき、大統領に向けて銃を発射しました。

しかし、ホリガンが、銃撃を身を挺して防ぎ、会場は騒然となり、大統領は警護に取り囲まれながら避難しました。

 

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10)決着に向かって

ホリガンを盾に取ったリアリーは、エレベーターに逃げ込み、レインズは、狙撃手に犯人を射殺するよう指示を出しますが、膠着状態になっています。

銃を突き付けられたホリガンは、リアリーに気づかれぬように、レインズに無線で狙撃の指示を出しました。

 

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エレベーターのガラスは撃ち抜かれて砕け散り、二人は乱闘となります。

ホリガンはリアリーを叩きのめし、彼はエレベーターから落下しそうになります。

それを助けようとしたホリガンでしたが、リアリーは自ら身を投げて落下死しました。

事件は解決し、手のひらを返したように、サージェントとワッツはホリガンを称えるのでした。

英雄となったホリガンは、シークレット・サービスを辞職することを発表し、マスコミも彼に群がりました。


11)エピローグ

その後、良き協力者で同僚のキャンパーナに労わりの声をかけられたホリガンは、レインズと共にアパートに戻りました。

残されたていた、リアリーからの勝負の行方を暗示した電話のメッセージが終わらない間に、二人は部屋を出て、リンカーン記念館に向かいました。

そしてホリガンは、リフレクティング・プールを眺めながら彼女に想いを告げるのでした。

 

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3.四方山話

1)アップルの夢

プロデューサーのジェフ・アップルは、幼少のころからケネディ暗殺事件に関するシークレット・サービスの活躍を映画化したいと考えていました。

彼は子供のころに出会ったリンドン・ジョンソンと彼を警護する、黒スーツ、サングラス、イヤホンを身に付けたシークレット・サービスの姿を鮮明に覚えており、そこから映画化のインスピレーションを得て興味を持っていたのです。

また、その後、思春期の時にジョン・F・ケネディ大統領暗殺をテレビ中継で目撃したことも大きな衝撃となっています。


2)撮影

撮影は1992年末にワシントンD.C.で開始されました。 ホワイトハウス内のシーンは既存のセットで撮影されましたが、エアフォース・ワンの室内セットは25万ドルの費用を投じて新規に作られたものでした。


3)デジタル合成技術

本作は、ハリウッドにおいてデジタル合成技術が本格的に取り入れられた最初期の作品の一つに当たります。

大統領の集会シーンは、ジョージ・H・W・ブッシュビル・クリントンの両候補の実際の選挙集会を撮影して、2人の演説シーンを後からデジタル加工によって本作で大統領を演じたジム・カーリーの顔に置き換えています。

また、若きフランクが登場するケネディ暗殺のシーンでは、クリント・イーストウッドの1960年代の映画からトリミングした映像をデジタル加工し、挿入しています。

ジェフ・アップルは、ロサンゼルス・タイムズ紙において、イーストウッドは、世界初のデジタル・ヘアカットを受けたと、述べています。


4)批評家の言葉

①レビュー集計サイト「Rotten Tomatoes」

同サイトの批評コンセンサスでは「ウォルフガング・ペーターゼン監督の緊迫した演出と、クリント・イーストウッドジョン・マルコヴィッチのカリスマ的な演技のおかげで、最高のストレート・スリラーになっている」としています。

ニューヨーク・タイムズ紙のヴィンセント・キャンビー

「本作はハリウッドが誇りを持ちつつも、実際には極めて稀にしか達成できない、高く、滑らかで、商業的な映画である」と評しました。

③ ロジャー・イーバート

「近頃のスリラー映画のほとんどはスタントやアクションばかりだ。しかし、『ザ・シークレット・サービス』にはしっかりとマインドが描かれている」と評しました。

④ロサンゼルス・タイムズ紙のケネス・トゥーラン

本作を「快活な(crisply)エンターテインメント」と評し、キャスティングを称賛して、「マルコヴィッチの思わせぶりで慎重に考えられた語り口は、イーストウッドぶっきらぼうでストレートな言い回しの理想的な引き立て役だ」と述べています。

イーストウッドについて「この映画のすべての部分がイーストウッドの存在に大きく依存しているため、他の誰かが主役を演じた場合の想像がつかない」と評していました。

 

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4.まとめ

1930年生まれのイーストウッドと、世代的に合致する、ケネディ大統領暗殺事件(1963年)を絡めてあるところがなかなか興味深く、彼の苦悩や言葉に実感がこもっています。

前年『許されざる者』でアカデミー賞を受賞し、60歳を過ぎたイーストウッドの、燻し銀のような渋さがたまりません。

相手がイーストウッドでなければ、完全に主役を喰っていただろう、ジョン・マルコビッチの知的で異常な殺人者は、正にアカデミー助演賞候補に値する名演でした。