凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『ディアハンター』この名作映画を斜めに見ました!?

名作として名高いこの映画、実に個性的な映画で、映画を個性的というのも変ですが、アメリカの話でありながら、イスラムのモスクの様なドームのある教会や、ロシア民謡を皆で楽し気に歌い踊ったりしています。さらには、ベトナム戦争を扱っているのに純粋の戦闘シーンはほんの数分しかありません。

 

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アメリカ映画でありながらロシアの匂いがプンプンするのは、主人公及び周囲がロシア系移民の社会だからで、そのロシア人移民は19世紀から20世紀初頭までに起こっていて、約300万人アメリカ人の1%、を占めているそうです。民族・宗教・思想・政治などの迫害を逃れてアメリカに渡って来たようです。

 

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モスクワのロシア正教会の様な教会が出てくる訳で、結婚式のお祝いの席でロシア民謡を唄い踊るというのも当然ではあります。しかしながら、主人公マイケル(ロバート・デ・ニーロ)の乗るフルサイズでありながら2ドアの尻びれの跳ね上がったクルマがアメリカの60年代を象徴しています。

 

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3時間に及ぶ大作で、60年代の大作映画の様に、途中で1分間の休憩を挟んでいます。この休憩の少し前から舞台はベトナムの戦場へ移るわけですが、その前に仲間で鹿狩りに行き、見事に牡鹿を仕留め祝杯を上げるべくなのですが、この辺からおかしな雰囲気になってきてジョン(ジョージ・ズンザ)が自分の店のピアノで弾くショパンの「ノクターン第6番ト短調作品15の3」が先の暗い運命を暗示するかのように響きます。

 

前半で主人公と周りの環境・人間関係を描き、後半でベトナム戦争の後遺症言うべき悲惨な結末を対比させています。どちらも実に詳細に物語り、前半では平和で幸せなロシア移民の社会を子細に渡って丁寧に描き、それでいて厭きさせることなくエピソードを語ります。後半においては、残虐で悲惨な場面をやはり丁寧に描くことによって、ニック(クリストファー・ウォーケン)の精神を病んでいく過程を表現し、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)の悲劇を語って、取り返しのつかない前半との悲惨な変化を表現しています。

 

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期しくも、この映画のキモがロシアンルーレットであるのが、主人公がアメリカ人でもロシア移民であることに誣いを感じざるを得ません。もっとも、ロシアンルーレットというものそのものが、映画や小説でこそ出てきますが、都市伝説的なもので、実際に行われた事実は世界中のどこでもないようです。しかし、実にスリリングなそれでいていろんな要素を盛り込めるアイテムではあります。

 

ストーリーを練り込み、それぞれのエピソードを、実に丁寧に詳細に表現することによって、リアリティーを持たせ、観るものを納得させます。そしてそれが明と暗、喜と悲を際立たせ、一層ベトナム戦争の暗と悲を演出しました。

 

そして、エンディングは、序盤で、先読みネタバレのように出てきた、出征前にニックが、笑いながらこの街を愛していることを語りマイクに「大事なものは全てここにある。万一自分に何があっても俺をここに連れて帰ってきてくれ」と言っていた通りに仲間に見守られて埋葬されました。