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映画『突入せよ!「あさま山荘」事件』と『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程〈みち〉』

連合赤軍あさま山荘事件は、長野県軽井沢町で1972年2月19日から2月28日に起き、ほとんど一部始終をテレビ中継され日本中を震撼させた事件でした。

目次

 

 

プロローグ

突入せよ!「あさま山荘」事件』は警察側からの現場と舞台裏の物語で、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程〈みち〉』の方は、連合赤軍側からこの事件に至る時代背景と経緯から事件の終結までをドキュメンタリー風に描いています。

 

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これについては、両者見事に分離していて、お互いに敵方の描写はまるでなく、我方だけの視線で語り両者の意思・立場、のバランスは皆無といってありません。ここまでくると何か意図したものがあっての仕業かとも邪推してしまいます。

それをおいても、前者130分、後者190分、と結構な尺で、2時間を超えてくると生理的にも見ていて苦しくなってきます。そこでお互いの立場などを表現する尺はとれなかったでしょうし、中途半端に取扱うよりはいっそ潔い両者であったのかとも思わせます。


1.突入せよ!「あさま山荘」事件

2002年5月11日に公開され、原作は当時指揮幕僚団として派遣された佐々淳行の『連合赤軍あさま山荘」事件』(文藝春秋刊)で、監督・脚本を原田眞人で、製作されました。

 

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前述のように、警察サイドから見た人質救出作戦の準備とその決行、そして警察官の犠牲を重ねながらの人質救出成功というストーリー一辺倒で、それ以外のものを何も描いていないということに批判的な意見もありますが、ただ困難な状況下、人質救出に向かう警察集団の表裏の姿だけを追う、その一点にしぼって原田監督はこの映画を製作したのだと思われます。

あらすじ

1972年2月19日、長野県軽井沢町。過激派連合赤軍メンバー捜索のためパトカーで警戒中の長野県警察機動隊は複数人の真新しい足跡を見つけました。足跡がさつき山荘に続いていることから、パトカーに木戸隊員(荒川良々)を残し偵察に向かうが過激派の急襲を受けてしまいます。

 

過激派は 、あさま山荘に侵入し管理人の妻を人質に立て籠もってしまいました。 そのころ、英国のSASから爆発物処理の研修を終え帰国した警察庁警備局付の佐々淳行警視正役所広司)は、後藤田正晴警察庁長官藤田まこと)から呼び出されます。 後藤田は長野県警の野間本部長(伊武雅刀)は過激派鎮圧警備に不慣れであるため「ちょっと行って指揮してこいや」と言い、長野へ向かわせることになりました。

 

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犯人逮捕にあたって後藤田は、"①過激派メンバーの生け捕り、②人質の無事救出、③銃器使用は警察庁の判断、などの方針を厳命します。 軽井沢に到着した佐々たちですが、縄張り意識の強い長野県警との対立や無線の不備、果ては民間人に死者を出してしまうなど苦境に立たされることになります。 一般人、警察官からも犠牲者が出て、全国が注目するあさま山荘事件9日間がはじまりました。

 

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 2.実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

若松孝二監督で2008年に公開されました。若松監督は本作品の構想を2005年の段階で明らかにしており、自身の集大成とも位置づけています。

 

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本作は低予算で、制作費の一部はカンパでまかなわれた他、若松孝二監督が自宅を抵当にいれ、宮城県大崎市の自身の別荘をあさま山荘のロケセットとして使用、解体までおこなって、ラストシーンの撮影が行われました。

また、リアルさ並びに現場での緊張感を優先させる為、出演者はオーディションの段階からマネージャーの帯同禁止、メイクや衣装も自前で用意させ、山岳ベースからあさま山荘シーンの撮影時には、宮城の山中での長期合宿等、焦燥感ある空気を画面に創り出す工夫が成されていました。

あらすじ

ベトナム戦争、パリ5月革命、中国文化大革命など、世界中が大きなうねりの中にいた1960年代。60年安保闘争から日本でも学生運動が熱を帯び、連合赤軍が結成されました。

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革命戦士を志した坂口弘ARATA井浦新)や永田洋子(並木愛枝)ら若者たちは、山岳ベースを設置し訓練をはじめました。厳しい訓練に追い詰められ、メンバーによる仲間同士の「総括」という名の下で壮絶な粛正が繰り広げられます。

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通報・脱落などにより山岳ベースの移動を強いられついにあさま山荘に立てこもることになり、警官隊との攻防戦がはじまります。


3.まとめ

エンターティメント警察ドラマと連合赤軍ドキュメンタリーと、まことに対照的な両作品ですが、観るなら両方観て欲しい映画ではあります。

ちなみにここで、坂口弘を演じた「ARATA」が4年後、若松孝二監督の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で「井浦新」となって三島由紀夫を演じ、極左から極右まで演じて、連合赤軍No3から楯の会トップまで登り詰めました。