映画『るろうに剣心』大ヒットシリーズの第一弾です!!
この映画『るろうに剣心』は、和月伸宏による日本の漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(1994年)を原作とした、主演佐藤健、監督は大友啓史の日本の実写映画です。
シリーズ第1作『るろうに剣心』は2011年8月から撮影が開始され、2012年8月25日に公開されました。物語は、原作におけるニセ抜刀斎騒動・黒笠編・観柳邸突入までのストーリーが基になっています。
目次
1.紹介
1)監督
実写版『るろうに剣心』の巧みなポイントには多々ありますが、特筆すべきは「現実の方向に引っ張る」要素の数々でしょう。贖罪の印の「頬の十字傷」に関してもそうであるし、美術に関してもリアルに作りこみ、視覚的に「本物感漂う骨太な時代劇」として印象付けています。この辺りは、流石『龍馬伝』の大友監督、といったところでしょう。
2)主演
なぜ実写化が遅れたのかとの理由に、制作側によれば「緋村剣心を演じられる男=佐藤健がようやく見つかったから」ということらしい。泥酔した細身の女の子ひとり満足に抱き上げられない貧弱な男が幕末有数の剣豪とは恐れ入りますが、女性のように華奢な剣士というのがこのキャラの本分なのであながち間違ってはいないようです。
ただ何よりこの映画で驚かされるのは、キャラクターの外見です。これはもう、漫画のイメージそのもので、本作を一言で言い表すとすれば、お金をかけたコスプレ劇。泥酔女子のスカートを押さえきれなくても、佐藤健が緋村剣心に最も近い俳優であることを認めざるを得ません。
3)ソードアクション
この作品の最大の売りものであるソードアクションはなかなかなもので、アクション監督谷垣健治の演出らしい香港風味は、カッコ重視で見栄えがします。
リアリティは薄いものの、邦画ではなかなか見られないスピード感があり、非現実的すぎると心配された斬馬刀(相楽左之助愛用の巨大武器)のそれも、ギリギリ許せる範囲に収まっています。
4.ストーリー
1)プロローグ
その人間離れした剣技から人斬り抜刀斎の名を持つ剣客・緋村剣心(佐藤健)は、倒幕派に加わり、幕府側の重鎮たちの暗殺を担っていました。
幕末の動乱から10年が経った明治11年。「不殺(ころさず)の誓い」を立て、人斬り抜刀斎の名を捨てた剣心は、各地を旅する流浪人になっていました。
あちこちを見聞して剣心が次に訪れたのは、異常な中毒性を持つ「新型阿片の密売」と「神谷活心流の人斬り抜刀斎」を名乗る辻斬りの事件にみまわれた東京でした。
2)薫との出逢い
宛てもなく街を歩いていた剣心でしたが、件の偽人斬り抜刀斎と間違われて少女・神谷薫(武井咲)と悶着を起こします。彼女の家は噂にあった神谷活心流を創始した道場であり、薫も師範代としての腕を持つ女剣士でした。
誤解を解いた剣心は神谷道場に案内されますが、噂が原因で人が去りもぬけのから状態を目の当たりにします。その時、突然複数の男たちが道場に乱入して荒らし始めました。
彼等は悪徳貿易商の武田観柳(香川照之)の部下であり、土地を明け渡すようけしかけたのでした。居合せた剣心は斬らずに気絶だけさせてその場を収めましたが、後から来た警官に連行されてしまいます。
3)新型阿片
警察署で剣心は、かつて相まみえた元新選組の警官・斉藤一(江口洋介)と再会します。彼は巷で横行する新型阿片捜査の為に協力を申し入れました。実はこの阿片は、クーデターを起こそうと武器を集める為に、観柳が女医・高荷恵(蒼井優)を利用して作らせ売り捌いていたものでした。
恵は、良心の呵責から一時は屋敷を抜け出し警察に保護されましたが、観柳に雇われた男・鵜堂刃衛(吉川晃司)が彼女を取り戻すために署内を襲撃し、流血沙汰にまで陥りますが、恵は奇跡的にそこから逃げおおせました。
神谷活心流を使う人斬り抜刀斎の事件も、観柳が取引を行う為に港が必要だった、格好の場所として目を付けたのが神谷道場の土地でした。その為刃衛に「神谷活心流を扱う人斬り抜刀斎」を演じさせ神谷の信用を落とそうと画策していたのでした。
4)神谷道場にて
観柳が本命だと確信している斎藤でしたが、相手が持っている権力で警察は動く事が出来ずにいました。そこへ現れたのが剣心で、人斬り抜刀斎の力を借りようと取引を持ち掛けますが、剣心はこれを頑なに拒否しそのまま釈放される形で警察署を去りました。
帰る場所のなかった剣心でしたが、薫は道場に居候することを提案し招き入れました。一方、逃げ回っていた恵は神谷道場の門下生・明神弥彦(田中偉登)に助けられて、剣心同様薫の下で生活を始めるのでした。
5)決戦
数日が経ったある日、住民たちが次々に苦しみだす事態が発生しました。診察した恵は、その症状から井戸に投げ込まれた毒物が原因だと考え、治療に取り掛かります。そして、それを指図したのが観柳だということに気付きました。
人々の命がこれ以上危険に晒されない為に、恵は観柳の屋敷へ1人戻ります。彼女が残していった手紙を読んで、剣心は加勢に現れた喧嘩屋・相楽左之助(青木崇高)を連れて観柳の屋敷に殴り込みました。
手下たちを叩きのめしていく2人だが、観柳は巨大な回転式機関砲(ガトリングガン)を構えて待ち構えていました。そこへ乗り込んできた斎藤の助力により打ち倒される観柳と助けられた恵でしたが、刃衛が屋敷を出て薫を連れ去ったと彼女から告げられました。
6)一騎打ち
向かった先では、薫を人質に刃衛が待ち構えていました。刃衛が斬りかかるも、一向に真の実力を見せない剣心に業を煮やした刃衛は、薫に暗示をかけて「女を救いたければ自分(刃衛)を殺せ」と挑発してみせます。
薫を救うべく、今一度人斬り抜刀斎になろうとする剣心でしたが、自力で暗示を破った薫の声が剣心に届いて踏み止まりました。「不殺(ころさず)の誓い」を貫き通す剣心を見て、刀衛は負けを認めますが、自身を刀で貫いてしまいます。そして、人斬りを止めた剣心を甘いと断じて死にました。
7)エピローグ
一件落着となり、剣心は神谷道場の帰路につくのですが、そこへ斎藤一が現れ、殺さずの誓いが今回の事態を招いたと言い、一方、斎藤は、剣に生き、剣に死ぬ以外に道はないと言いました。
3.四方山話
1)ロケ地
好古園(兵庫県姫路市)、八幡堀(滋賀県近江八幡市)、安楽律院(滋賀県大津市)、園城寺(滋賀県大津市)、仁和寺(京都市)、仁風閣(鳥取市)、延暦寺(滋賀県大津市)、龍谷大学大宮学舎(京都市)、旧鴻池新田会所(大阪府東大阪市)、隨心院(京都市)、倉敷美観地区(岡山県倉敷市)など
2)佐藤健
佐藤健は、大友監督と組んだ『龍馬伝』で演じた哀しみの人斬り・岡田以蔵役で各方面から絶賛され、本作へとつながっていったという経緯があります。
善から悪へと堕ちていく男を、時代劇の枠ですでに演じ切っていて、さらに元をたどれば、デビュー間もないころに出演した『仮面ライダー電王』(2007年)で、いきなり“複数人格”を演じる、という難役をこなしています。
3)剣心の着物
原作では、剣心は初登場時からトレードマークとなる赤い着物を着ています。しかし、本作ではあえて原作を踏襲しないで、地味な着物で登場した剣心が、神谷道場から赤い着物に着替えることでヒーローとして完成し、その流れを視覚的に示しています。
これは、もともと「剣心=赤い着物」というイメージが刷り込まれているからこそ試せる演出でもあるし、そういった意味で原作への深い敬意がうかがえます。
4.まとめ
剣心のキャラクターは、ビジュアル的にも、冷徹な暗殺者とのギャップを出すため「女性に間違われるほどの優男(身長も160センチ未満と小柄)」「口癖は『おろ?』」など、可愛らしさを重視した設定となっています。
佐藤健の抜擢には原作者和月伸宏の希望も大きかったといいますが、なるほど彼が剣心としてスクリーンに登場した瞬間の微笑ましさは、剣心の完璧な三次元化と言えましょう。