凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『パッセンジャー』目的地まで120年、90年も早く目覚めた2人の運命は?!

この映画『パッセンジャー(Passengers)』は、2016年のアメリカ合衆国のSF大作映画です。

監督は、モルテン・ティルドゥム、『ハンガー・ゲーム』『世界にひとつのプレイブック』のジェニファー・ローレンスと『ジュラシック・ワールド』のクリス・プラットが主演を務め、『マトリックス』シリーズのローレンス・フィッシュバーンが重要な役割で出演しています。

目次

 

 

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1.ストーリー

1)プロローグ

西暦20XX年、258人の乗務員と5000人の乗客(パッセンジャー)を乗せた巨大移民宇宙船アヴァロンが、植民惑星「ホームステッドⅡ」に向けて120年に及ぶ航海を続けていました。その間、乗員は全員が人工冬眠(コールドスリープ)によって眠りについていて、船の制御はすべて完全自動のコンピュータシステムによって行われていました。

ある時、船が隕石帯に突入します。小型の隕石はシールドによって防いでいましたが、巨大な隕石との衝突により、船体に大きな震動が発生しました。即座に自動修復が行われましたが、人口冬眠ポッドで眠っていた乗客の一人ジム・プレストン(クリス・プラット)が目覚めてしまいます。


2)絶態絶命

完全自動化されたコンピュータに導かれ、新たな生活を始めようとしたジムでしたが、船内で起きているのが自分だけであることに気づきます。船内の自動インフォメーションに問い合わせてみると、出発からまだ30年しか経過してないことがわかります。なんらかのトラブルで、ジムだけが90年も早く目覚めてしまったのです。

ジムは植民計画を行っている地球のホームステッド社へ通信を試みますが、そのメッセージが届くのは15年後で、返信が来るのは55年後とのことでした。

船のインフォメーションはプログラム通りの応答しかせず、ジムの助けにはなりません。

ジムは技術者でもあったので、保管されているマニュアルを見ながら冬眠ポッドを調整しようとしましたが、再び眠りにつくことは不可能でした。仕方なく乗務員に頼ろうとしましたが、制御室も乗務員区画も分厚い鋼鉄の壁に閉ざされていて侵入することは不可能でした。


3)話し相手

なすすべもなく船内をさまよっていたジムは、バーに一人のバーテンダーがいることに気づきました。しかしそれは上半身だけのアンドロイドでした。アーサー(マイケル・シーン)というそのアンドロイドは、ジムの唯一の話し相手となりました。

 

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アーサーはジムに「この状況を受け入れ、楽しんでみては?」とアドバイスをします。ジムはその言葉に従い、船内の娯楽施設を堪能しはじめました。ゲームセンターのダンスゲームに興じたりバスケットに挑んだり、一般クラスの乗客である彼が本来なら入る資格のないVIPルームに侵入したりと、やりたい放題でした。


4)良からぬ誘惑

しばらくは充実した日々を送っていたジムでしたが、それも長くは続きませんでした。まわりに誰もいない孤独が彼を苛み、次第に生活は荒れていきます。

宇宙服を着て船外に出たジムは、無限の空間を見ているうちにさらに孤独を感じ、ついには裸で宇宙に出ようと考えるまでになりました。しかし寸前に怖くなったジムは船内に戻りました。

その時、ジムは人口冬眠ポッドに眠る一人の美しい女性に気づきました。ジムはさっそく船内のインフォメーションシステムで彼女のことを調べました。彼女はオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)というジャーナリストで、人々が地球を去って宇宙に植民するのかを取材するため、この移民計画に参加したということです。

オーロラのインタビュー映像を見たり、書いたものを読んだりしているうち、ジムはますます彼女に惹かれていきました。やがてジムは、彼女を起こしてみたくなりました。しかし、それは彼女の人生を壊してしまうことであり、許されないのはジムもよくわかっています。アーサーに相談しても「それは良いアイデアですね」という脳天気な答えしか返ってきません。

 

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5)新たなる絶望

一度はその考えを捨てようとしたジムでしたが、ついに誘惑に堪えきれずオーロラの冬眠ポッドを調整し、彼女を起こしてしまいます。目覚めた彼女が覚醒しないうちに、ジムはポッドの側から逃げ去るように立ち去ると、アーサーにこのことを彼女に話さないよう口止めしました。

そして翌日、オーロラが戸惑いながらメインロビーを歩いているところに、さりげなさを装ってジムが話しかけました。ジムから状況を聞いたオーロラは、彼と同じように呆然とし、そして制御区画に侵入を試みて、同じように挫折しました。


6)新生活の開始

ジムはそんな彼女を慰め、ともに船内での暮らしを楽しむようにとゲームやスポーツに誘いました。最初は乗り気でなかったオーロラも次第に状況を受け入れ、さまざまな娯楽を満喫するようになっていきます。

ジャーナリストであるオーロラは、ジムにも興味をもち、どうして地球を捨てたのかと訊ねます。ジムは技術者である自分の能力は、すべてが規格化されて故障も部品交換だけで済む地球より、何もかも作っていかなければならない植民地でこそ生かせるのだと答えました。新しい土地で、自分で建てた家に住むのが彼の夢だったのです。

一方のオーロラは、植民地に行っても1年だけですぐに地球に戻るのだと言いました。植民地の人々に取材したことを本にまとめ、未来の地球で出版するのが彼女の夢なのです。お互いのことを語り合ううち、2人はさらに親密になっていきました。

ジムは自分で組み立てたロボットを使い、オーロラを正式にデートに誘います。彼女の答えはOKで、2人は正装してレストランに向かいました。その後、ジムはオーロラを宇宙服を着ての船外デートに誘います。初めての体験に興奮したオーロラは、宇宙服を脱ぐのももどかしくジムにキスをしました。ついに2人はベッドをともにし、愛し合うようになりました。


7)おぞましい展開

オーロラの誕生日の日、ジムは婚約指輪を用意して彼女を展望室に誘います。折しも宇宙船が重力ターンのため恒星に接近していくところでした。間近に見る恒星の壮大な景色に圧倒されつつ、ジムはこれが誕生日のサプライズだと言います。

そしてバーに移動した2人は、アーサーに用意してもらったグラスを傾けながら楽しく会話をしていました。そこでオーロラが「私とジムに秘密はないの」と言い、ジムも頷きました。ジムが席を外した時、アーサーは「ジムがあなたを起こして正解でしたね」と言ってしまいます。オーロラが「秘密はない」と言い、ジムが頷いたことで彼のアーサーへの指示がキャンセルされてしまったのです。

 

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呆然としたオーロラは、戻ってきたジムを問いつめました。ジムは用意してきた婚約指輪を渡すどころではなく、黙って頷きました。彼への気持ちが一気に萎み、オーロラはその場を立ち去りました。

ジムは必死に釈明しようとしましたが、オーロラは聞く耳を持ちません。そしてある夜、怒りと憎しみが頂点に達したかのように、ベッドで寝ているジムに襲いかかって殴る蹴るの暴行をしました。ジムは黙ってされるがままにしていましたが、オーロラは工具で彼を撲殺する寸前、思いとどまって部屋を出て行きました。

自分の部屋に籠もったオーロラは地球を出発する前に友人から貰ったビデオメッセージを再生します。そこには自分を求める人の声に気づいたら、それを受け入れてあげてと語られていました。


8)更なる危機

ジムは船内放送を通じて彼女に謝罪し、おわびの印としてメインロビーに一本の木を植えました。その緑の枝を見て、オーロラの怒りも多少は和らいだように見えました。

そんな最中、船内で少しずつ以上が発生していきます。掃除用ロボットの不調や部屋の明かりが消えたりエレベータが停止したりと、船内のシステムに明らかに異常が起きているようでした。

そして乗務員の一人、ガス・マンクーソ(ローレンス・フィッシュバーン)という男が目覚めます。ジムとオーロラから状況を聞いたガスは、乗務員のアクセス権で制御室に入り、状況を調べます。すると船が小惑星との衝突で、大きなダメージを受けていることがわかりました。予定より早く冬眠ポッドが開いたのも、それが原因だったのです。

 

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ガスはジムとオーロラに手分けして船内の不調箇所を調べようとします。冬眠ポッドを調べたガスは、オーロラのポッドが人為的に手を加えられた形跡があることから、ジムの仕業と気づきました。ガスはそのことでジムを責めながらも、オーロラに対しては「溺れる者が誰かにすがるのは仕方がないことだ」と諭しました。


9)度重なる危機

人工冬眠から目覚めたばかりのガスは疲れを感じて寝室に戻り、一端、調査は中断することになりました。しかし再び船内に異常が発生し、人工重力が途切れてプールで泳いでいたオーロラが危うく溺死しそうになりました。

 

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宇宙船の不調はかなり深刻なようです。ガスは動力部が原因と考え、ジムとオーロラをともなって核融合炉に向かいました。しかしその途中、ガスが倒れてしまいました。

ガスは医務室の自動診断カプセルにかかりましたが、カプセルの医療コンピュータは医師でないと診断結果を通知できないと言いました。ガスは自分のアクセス権で命令を上書きし、コンピュータから診断結果を聞き出します。それは冬眠ポッドの不調によりガスの肉体に深刻な機能障害が発生したというものでした。しかも余命はほとんど残されていないというものです。

ガスはその場を立ち去ると、正装して展望室に向かいました。そして心配して様子を見に来たジムとオーロラに、力を合わせてこの苦難を乗り切るよう言い残し、さらに自分のアクセス権の腕輪をジムに渡して息を引き取りました。


10)決死の協力

その間にも船内では異常が頻発し、システム障害の警報が鳴り響きます。ジムとオーロラは再び機関室に向かおうとしましたが、途中のバーでアーサーが狂ったように自分の頭部をカウンターに叩きつけているのを目撃します。ジムはアーサーの故障部分を取り外し、彼の暴走を停止させました。

機関室に到着したジムとオーロラは、協力して故障の原因を探します。すると隕石によって破壊された穴が見つかりました。その途端、外部への穴から空気漏れが発生し、オーロラが吸い出されそうになってしまいます。ジムは身を挺して彼女を助けました。

2人は協力して、故障箇所のユニットを交換しました。しかし核融合炉が暴走状態で、エネルギーを外部に排出する必要があります。ジムは何度も排出レバーを倒してみましたが、まるで反応がありません。外部への扉を開くためには、船の外から手動で行うしかないのです。

ジムは耐熱版として使用するため整備用ハッチの一つを切り取ると、ガスから渡されたアクセス権の腕輪をオーロラに渡して排出レバーを任せ、宇宙服を装着してエアロックから外に出て行きました。彼への気持ちを取り戻していたオーロラは「絶対にもどってきて」と言ってジムを送り出しました。


11)覚悟の船外

ジムは船外の機関部の熱放出坑に到着し、ロックを解除しましたが、手を離すとすぐに閉まってしまう状態でした。確実に熱を排出するためには、ロック部分を抑えておかなければなりません。しかし、それは排出された高熱ガスをまともに受けるということです。

そのことに気づいたオーロラは、排出レバーを倒せなくなりました。しかし融合炉はすでに暴走間近で、機関室も危ない状態です。破壊された部品が弾き飛ばされ、オーロラの腕に突き刺さりました。

ジムはオーロラを励まし、船を守るためにはそうするしかないと言ってレバーを倒させました。真っ赤になった高熱ガスが排出口から噴きだし、間一髪のところで融合炉は冷却に成功します。しかしジムは船外に弾き飛ばされてしまいました。後方に流され、エンジン部分に吸い込まれそうになったジムは、持っていたハッチを投げて反動で前方に戻ることに成功します。ところが命綱が切れていたため、船に戻ることはできません。死を覚悟したジムはオーロラに別れを告げました。

 

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12)人生の選択

オーロラは必死で宇宙服を装着すると、船外に出て宇宙遊泳でジムの方に向かいます。しかし、もう少しのところで命綱が限界に達し、オーロラは船に引き戻されてしまいました。その瞬間、ジムの断ち切られていた命綱がオーロラの方に流されてきました。彼女は最後のチャンスとばかりにその命綱を掴み、なんとかジムを引き戻すことに成功しました。

オーロラは意識を失ったジムを引きずって、医務室の自動診断カプセルに運び込みます。すでにジムは心停止状態でした。カプセルの医療コンピュータは一般客の権限では蘇生措置ができないと言いましたが、オーロラはジムから受けとっていたガスの腕輪でシステム権を上書きし、あらゆる蘇生措置を実行させました。ジムはなんとか息を吹き返し、オーロラは彼にキスをしました。

なんとか回復したジムは、この自動診断カプセルを利用すれば再び冬眠状態になることが出来ると言いました。ですが、カプセルは一台しかありません。ジムはオーロラに譲ろうとしましたが、彼女はそれを拒否します。オーロラはジムとともに残りの人生を生きていく選択をしたのです。


13)エピローグ

そして88年後、宇宙船が目的の植民惑星「ホームステッドⅡ」に到着しました。自動化された起床プロセスに従い、目覚めた乗務員たちはメインロビーを訪れて驚きました。そこはジムとオーロラが植えた木々に埋め尽くされ、緑豊かな温室になっていたのです。2人はジムの夢だった家を建て、残りの人生を幸せに過ごしたのでした。乗務員たちはオーロラの残した記録をみて、自分たちが眠っている間に何が起こったのか知ったのでした。

 

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2.評価

1)受賞

2017年第89回アカデミー賞
美術賞 ガイ・ヘンドリックス・ディアス、ジーン・サーデナ(ノミネート)
作曲賞 トーマス・ニューマン(ノミネート)


2)批評家の反応

著名な批評サイトの評価は芳しくなく、映画批評サイトのRotten Tomatoesは、227件のレビューに基づいて31%の支持率を示し、また批評家の総意を「乗客(作品)はクリス・プラットジェニファー・ローレンスがうまく連携したことを証明しているが、科学的に致命的な欠陥のある物語を克服するには不十分」としています。

Metacriticには48件のレビューがあり、加重平均値は41/100となっています。

ガーディアンでピーター・ブラッドショーは、5つ星中3つ星をつけました。またロジャー・イーバートでグレン・ケニーは、4つ星中1.5つ星と低評価をつけています。


3)興行収入

制作費1億1,000万ドルに対し、米国だけで1億ドル、世界合計で3億300万ドルの興行収入をあげています。

 

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3.まとめ

ストーカーを思わせる一方的に好きになった人を勝手に目覚めさせるという行為は許されるものでがありませんが、たった一人で長い時を過ごすという孤独も描かれ、実際に起こすまでの葛藤も十分にあったので、その辺はなんとか許容範囲としましょう。

閉鎖された空間で長い時を2人っきりで過ごすという状況は想像するとけっこう怖いことのように思いますが、やはり、事実を知ったオーロラの怒りもまた理解できるものです。

この映画では2人の距離感がうまく描かれていて、結果もOKだったのですが「無理が通れば道理引っ込む」でよいのでしょうか。