凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『マネーモンスター』株を操る者、ネタにする者、翻弄される者のお話です!!

この映画『マネーモンスター』(Money Monster)は、2016年にアメリカ合衆国で公開されたエコノミック・サスペンス映画です。ジョディ・フォスターが監督で、製作・主演はジョージ・クルーニーが務め、ジュリア・ロバーツが共演しています。

目次

 

 

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1.プロローグ

経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、てっとり早いのが映画です。特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度で手っ取り早く、実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれます。

多少専門用語も出てくるものもありますが、映画をきっかけに知識が広がります。エンターテインメントとしても楽しめ、そういう意味でこの作品はおすすめの1本です。


2.あらすじ

 

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人気番組「マネーモンスター」で司会を務めるリー・ゲイツジョージ・クルーニー)は、番組内でアイビス社の株を使った資産運用の方法を紹介します。数日後、アイビス社の株が暴落して膨大な損失が生じたことが報じられました。

番組はアイビス社CEOのウォルト(ドミニク・ウェスト)にインタビューする企画が立てられ、その日を迎えることになりました。

CEOのウォルトが飛行機のトラブルで番組に出演できず、社の広報担当ダイアン(カトリーナ・バルフ)がインタビューに応えると、リーに伝えられました。

生放送を開始して、リーがプロデューサーのパティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)の指示を聞かずにアドリブ全開で番組を進める最中、謎の男がスタジオに現れます。

 

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視聴者も番組スタッフもリーの演出と考えましたが、男は銃を取りだし発砲してリーを人質にとり、生放送の継続を主張します。パティはリーの身を案じて応じると、男は事件の動機を語りだしました。

襲撃して来た男のカイル・バドウェル(ジャック・オコンネル)は、番組の情報を信用してアイビスに投資しましたが、意図的な情報操作で株価は暴落したといい、真実を明らかにしることを、リーに要求します。

リーを含む番組関係者は八つ当たりのような主張に困惑ますが、リーを救うためにパティらはこの一件を手をつくして調査し始めます。すると徐々に事実が明らかになって、疑惑の核心が判明するとともに結末を迎えることになりました。


3.ステージ

映画冒頭、ジョージ・クルーニー演じるリーが株価情報をネタに楽しそうに歌い踊るシーンは多少の悪ノリ感は否めませんが、なんともアメリカらしい演出です。

リーと番組ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)の阿吽の呼吸で、さまざまな効果音や映像がタイミングよく飛び出てくるのも視聴者をある意味飽きさせません。

日本ではあまり考えられないような投資情報番組ですが、似たような番組はアメリカには実在していて、投資家のジム・クレイマーがホストを務めるCNBCの「Mad Money」などです。

劇中の「Money Monster」もこの番組をモデルにしたのではないかという意見もありましたが、監督のジョディ・フォスターは否定しています。ちなみに「Mad Money」は、映画『アイアンマン』にも登場するほど、アメリカではメジャーな番組のようです。

 

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4.キーアイテム

どちらかというと、金融的側面はそこまで前面に押し出されていませんが、この映画のキーワードともなるのが「HFT」(高頻度取引)の一つ「アルゴリズム取引」です。

アルゴリズム取引」とは、コンピュータが自動的に売買の注文を出す取引をアルゴリズム取引といい、アルゴリズム取引では、テクニカル分析出来高、時にはマーケットのニュースやキーワードなどに反応するシステムが組み込まれていることもあります。

「超高速取引」などとも呼ばれ、想像を絶する高速でかつ高頻度で株式売買を繰り返します。

HFTは、1秒にも満たないミリ秒単位でコンピューターのプログラムが株取引を自動で行うもので、アメリカでは取引所での取引の半分以上を占めています。日本でも東京証券取引所が2010年から株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」を導入したことにより、HFTの取引は盛んになっています。

高速で大量の取引がなされることで市場の流動性を確保できるといわれていますが、一方で高い処理能力のコンピューターシステムが必要であり、不公平性などの問題も。2010年にダウ平均株価が5分で1000ドルほど急落した「フラッシュ・クラッシュ」を引き起こした一因でもあるともいわれています。


5.みどころ

この映画で、番組をジャックした犯人は、リーの「銀行よりも安全」という言葉を信じ、アイビス社の株を購入しました。ところが数日後にアイビス社の株価は大暴落し、8億円もの巨額損失を計上してしまいます。

 

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アイビス社はこの巨額損失についてHFTのアルゴリズムのバグが原因と説明するだけで、確かな原因が不明なまま、投資家たちは煙に巻かれることになりますが、犯人は巨額損失の裏には何かしらの情報操作があったと主張します。

そもそも株価は、まずは会社の業績によって上下するし、その時々の国の財政状況や経済政策によって上下します。

さらに、昨今の日本株が、ドル高・円安基調からドル安・円高基調に変わったことや、中東の原油価格の下落によって大きな影響を受け、株安に向かったことは周知のとおりです。しかし、これらはすべて「市場原理」による株価の上下だから、資本主義経済では当然のことなのです。

また、アルゴリズムのミスも一応ありうることだから、仮にそれによってアイビス株が暴落したとすれば、それも仕方なしなのです。

そこは微妙なところですが、万一ウォルトCEOの思惑によってアイビス株を暴落させたとすれば、それは明らかな犯罪となります。

もし実態がそうであったとして、実に複雑なからくりを短時間のうちに、しかも、リーを司会者とする生番組『マネーモンスター』を放送している間に暴くことができるでしょうか。

 

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パティは、それが可能だと考え、コネクションのアンテナを香港や南アフリカまで飛ばし、おぞましい真実にたどり着きます。このスリリングな展開が本作の大きなウリになったのは間違いないようです。


6.まとめ

本作は近年では上映時間が短めの95分となっているため、ストーリーはスピーディに展開していて、特に序盤の日頃の『マネーモンスター』という番組収録風景の場面から、犯人が登場して事件が発生するまで、おそらく10分もかかっていません。

この中に前提条件となるキャラクターの紹介、番組の紹介、相手の企業の紹介、事件に至る問題発生の過程などということが、金融の専門用語と共に次々と繰り出されるために、ついていくので精一杯でした。

この後の事件発生以降もダレることなくスピーディに展開し、番組や主人公リーやパティの活躍見せ方などは見ていて飽きることなく、楽しめるものでした。