この映画『おしゃれ泥棒(How to Steal a Million)』は1966年のアメリカ映画で、ウィリアム・ワイラー監督、オードリー・ヘプバーン、ピーター・オトゥール共演のコメディです。
目次
1.ストーリー
1)プロローグ
美術品収集家シャルル・ボネ(ヒュー・グリフィス)は、パリの大邸宅の秘密のアトリエで、娘ニコル(オードリー・ヘプバーン)から、自らの贋作である美術品を、競売にかけるのを止めるよう説得されました。
しかしシャルルは、億万長者が絵を買い、喜んでいるのだから問題ないと、それを聞き入れようとしません。
偽物のチェリーニのヴィーナス像を、美術館に貸し出して満足気のシャルルでした。
2)数奇な出会い
しかし、アメリカ人の美術品収集家デイヴィス・リーランド(イーライ・ウォラック)が、ヴィーナスに目をつけ、シャルルの身辺を探り始めました。
就寝中、物音に気づいたニコルは、屋敷に侵入して絵を盗もうとしていた、サイモン・デルモット(ピーター・オトゥール)に銃を向けて発砲してしまいます。
サイモンに傷を負わせたニコルでしたが、警察には通報せずに、彼をホテルに送り届けました。帰宅したニコルは、警察に連絡したら贋作がバレてしまうことを恐れたことを父シャルルに説明するのでした。
翌日、美術館で出くわしたニコルとサイモンは、ヴィーナスの防犯装置の説明を、グラモン館長(フェルナンド・グレーヴィー)から受けました。
実はサイモンは、有名な美術商ベルナール・ド・ソルネ(シャルル・ボワイエ)が雇った私立探偵だったのです。
シャルルのコレクションに疑いを持ったド・ソルネが、サイモンに調査させていたのでした。
3)ビーナスの危機
ニコルに接触したリーランドは、ヴィーナス惚れ込んでいることを彼女に伝えます。
その後、ヴィーナスに、もしもの時の保険が掛けられることになり、シャルルはそれにサインしてしまいました。
しかし、それにより、ヴィーナスの科学鑑定が行われることになってしまうのです。
シャルルは身の破滅を感じ、ニコルは仕方なく、泥棒だと思い込んでいるサイモンに、ヴィーナスを盗んでもらうことにしたのでした。
美術館に下見に行ったニコルとサイモンは、厳重な警備下のヴィーナスを盗み出す準備を始めます。
一方、リーランドはヴィーナスを手に入れるために、ニコルに指輪を送り、結婚を迫り婚約してしまいました。
4)居残り泥棒
閉館間際に美術館に入り、その後も館内に潜んでいた二人だったが、狭い物置に閉じ込められてしまいます。
サイモンの機転で何とか物置から抜け出し、ブーメランを使ってわざと2回も警報を鳴らしました。
大統領の苦情を忖度した警備主任(ジャック・マラン)は、美術館の警備電源を全て切ってしまいました。
その間、ニコルがヴィーナスを盗もうとしている理由を知ったサイモンだっでしたが、二人は物置の中で、お互い惹かれ合っていることに気づくのでした。
ヴィーナスを奪ったサイモンは、それをニコルに預け、夜が明けて、それがなくなったことが分かって、館内が大混乱になる中、清掃員に扮したニコルは、警備室にいたサイモンと共に逃亡しました。
5)婚約解消
リーランドは、盗品でもいいからヴィーナスを手に入れたいことをド・ソルネに伝え、彼は、サイモンをリーランドに紹介しました。
リーランドと会ったサイモンは、ヴィーナスを手に入れるには、ボネ家と縁を切り、ニコルとの婚約も解消することが条件だと言い渡します。
その後、現れたニコルに、サイモンは、初めて泥棒をしたことと、自分が探偵で、世界各地の美術館の特別顧問をしていることを伝えるのでした。
サイモンはリーランドにこの贋作ヴィーナスをニコルへの婚約指輪をつけて引き渡しました。
6)エピローグ
やがてニコルとサイモンは結婚することになり、シャルルは贋作から手を引くことになりましたが、彼の”ゴッホ”を欲しがる南米人パラヴィデオ(マルセル・ダリオ)が現れ、性懲りもなく彼を歓迎してしまいました。
ニコルとサイモンはそれを見ながら、諦め顔でハネムーンに出発するのでした。
2.みどころ
1)名匠ウィリアム・ワイラ-
どんなジャンルでも、繊細且つ重厚な作品に仕上げるワイラーが、パリを舞台に、軽快かつ切れのいい演出で見せて、小粋なストーリーとなっています。
2)音楽
この作品の音楽はヘンリー・マンシーニが作曲するはずで、ヘプバーンも強く希望していましたが、都合がつかず、そのためマンシーニは当時弟子だったジョン・ウィリアムズ(のちに『ジョーズ』『スター・ウォーズ』『E.T.』などを作曲)を推薦、出世作となりました。この作品ではジョニー・ウィリアムズ名義でクレジットされています。
3)オードリー・ヘプバーン
美しく品があり魅力的な女性として、ピークに達していたオードリー・ヘプバーンとしても、『噂の二人』(1961年)以来となるウィリアム・ワイラー作品で、30代も半ばを過ぎているにも拘らず、彼女の可愛らしさや、ファッション・センスが際立つ作品で、もちろん彼女の衣装はジバンシィのデザインです。
3.まとめ
相手役を、ピーター・オトゥールとして、美男美女が繰り広げるドタバタ劇がスマートに展開します。オードリー・ヘップバーンの出演作品では、『マイ・フェア・レディ』の後、『暗くなるまで待って』の前に位置する作品で、どんな役を演じても洗煉された美しさが光って圧倒されますね。