この映画『ガンヒルの決斗(Last Train from Gun Hill)』は、カーク・ダグラス、アンソニー・クインの共演で、ジョン・スタージェス監督による、1959年のアメリカ合衆国の西部劇です。
目次
1.紹介
正統派西部劇としての出来は、ジョン・スタージェスの円熟期ということもあり、見せ場も多く十分楽しめるて、この頃の他の作品と似ているメロディーでありながら、それが実に嬉しいディミトリ・ティオムキンの音楽なども雰囲気抜群で、お馴染みのロケ地”オールド・ツーソン”の町並みなども相変わらずいい味を出しています。
原題でもある、ガンヒル発の最終列車が到着するまでの緊迫感や、名優2人のガチンコ演技、サラリと決着をつけるクライマックスの決闘シーンも、こたえられません。
2.ストーリー
1)プロローグ
平穏な町ポーリー郊外に現れたリック・ベルデン(アール・ホリマン)とリー・スミサーズ(ブライアン・G・ハットン)は、先住民の女性キャサリン・モーガン(ジヴァ・ロダン)を見かけて、からかおうとしました。
抵抗したキャサリンは、息子ピーティ(ラース・ヘンダーソン)を逃がし、保安官で夫のマット・モーガン(カーク・ダグラス)の元に向かわせます。
動揺しながら町に着いたピーティは、父マットに状況を伝え、現場に急行した彼は、乱暴されて殺されたキャサリンの遺体を見つけ、犯人の馬のサドル(鞍)の刻印”CB”刻印を確認しました。
2)疑惑
ガンヒルの大牧場主クレイグ・ベルデン(アンソニー・クイン)は、リーから馬が盗まれたと聞き、平和な町には馬泥棒などいないことを指摘し、彼の言葉を不審に思います。
使用人ビーロ(ブラッド・デクスター)に、息子リックを連れて来させたベルデンは、顔に傷をつけたリックにサドルを取り戻すよう命令しました。
サドルの持ち主ベルデンとは、かつて共に働き命を助けられたこともあるモーガンは、彼が卑怯なまねをする男ではないことを知っています。
モーガンは、ベルデンの手下の中に犯人がいると確信し、サドルを持ってガンヒル行きの汽車に乗りました。
3)ガンヒルへ
車内で、モーガンはサドルの持ち主を知っている女性リンダ(キャロリン・ジョーンズ)に出会います。
ガンヒルに着いたモーガンは、ベルデンの女リンダを迎えに来たビーロに、サドルを見られます。
ビーロがベルデンの手下だと気づいたモーガンは、自分が来たことをボスに知らせるよう彼に伝えました。
そして、モーガンとベルデンは牧場で対面し、再会を喜び合います。
モーガンは、早速ベルデンの息子リックとリーが盗まれたサドルについての話を始め、犯人には顔に傷があることをベルデンに告げました。
それを聞き動揺し、二人をかばうベルデンを見たモーガンは、リックらが犯人だと確信します。
モーガンとの友情を捨てる気はないが、息子リックに手出しはさせないというベルデンに対し、モーガンは、夜9時発の最終列車で、容疑者を町に連れ帰ることを彼に告げて立ち去りました。
4)四面楚歌
ガンヒルの役場に向かったモーガンは、町はベルデンに支配されていると言う非協力的な保安官に、容疑者は必ず連行すると警告します。
リックとリーを牧場に呼び戻したベルデンは、二人が自分に嘘をついたことを責めました。
さらにリーが、殺した女をただの先住民と呼び、旧友の妻を侮辱したため、ベルデンは彼を牧場から追放しました。
リックは、殺した女がモーガンの妻だと知りましたが、自分でカタをつけると言い町に向かおうとします。
モーガンの手強さを知るベルデンは、リックの護衛にビーロらをつけました。
町でリックの聞き込みを始めたモーガンだったが、当然のごとく人々はベルデンが怖くて口をつぐみます。
リンダもモーガンに忠告しますが、リックがベルデンの経営する酒場にいるかもしれないということを伝えるのでした。
5)逮捕、籠城
酒場に2階から忍び込んだモーガンは、リックを見つけて銃で殴り、気絶させて顔の傷を確認します。
気を失っているリックに手錠をかけ、担ぎ上げたモーガンは、酒場にいたビーロらを威嚇して町の大通りに出ました。
拘置所にリックの拘留を断られたモーガンは、汽車が出るまでの6時間を、ホテルの部屋で待つことにします。
ビーロに、モーガンがホテルに立てこもったことを聞いたベルデンは、手下に彼の部屋を銃撃させますが、モーガンは、ベッドにつないだリックを窓際に寄せて銃撃を止めさせます。
リンダは、リックを溺愛し過ぎるベルデンに反発し、モーガンに彼の居場所を教えたのでした。
旧友モーガンを殺したくないベルデンは、ホテルに戻るリンダに、それを伝えさせようとします。
リックを渡すしか助かる道がないことをモーガンに伝えたリンダは、彼からショットガンが必要だと言われました。
6)助け船
酒場に戻ったリンダは、現れたリーに事件の真相を聞きました。
汽車の到着まで30分と迫り、焦りを見せ始めたベルデンは、丸腰でモーガンの部屋に向かいます。
ベルデンは、かつて命を助けた恩を返すようモーガンに言い寄るが、彼は、これは保安官の役目だとい言い張ります。
手下に忍び寄らせたベルデンでしたが、モーガンはそれに気づき威嚇射撃をします。
モーガンはベルデンを殺せる理由が出来たが、これで恩を返したと言って彼を部屋から出しました。
リンダは、酒場にあったショットガンを密かに持ち出して、助かる見込みのないモーガンにそれ届けますが、それがベルデンに知られてしまいます。
7)脱出
その時、リーがホテルに放火し、ベルデンは、リックに銃を突きつけながら、2階から降りてきましたが、モーガンに手出しできません。
モーガンとリックは馬車で駅に向かい、リーはリックを助けようとするが、ガンヒルの町に近づいた汽車の汽笛が響きます。
リーがモーガンに放った銃弾はリックに命中し、リーはモーガンに射殺されました。
リックが死んだのを確認したモーガンは、汽車に乗ろうとしますが、息子の死を知ったベルデンが彼を呼び止め決闘を挑みました。
8)エピローグ
全てが終わったと、それを拒むモーガンだったが、ベルデンは承知せず、仕方なく彼はそれを受けました。
二人は同時に銃を抜きますが、モーガンの銃弾が、一瞬早くベルデンを捉えました。
歩み寄ってくるモーガンに、ベルデンは、息子を立派に育てるよう伝え息絶えるのでした。
そしてモーガンは、ベルデンに寄り添うリンダを見つめながら、最終の汽車に乗りガンヒルの町を去って行きました。
3.四方山話
1)カーク・ダグラス
a)驚きの体力
周囲が全て敵という状況下で、怯まずに敵に立ち向かうカーク・ダグラスは、それほど大柄でもありませんが、気絶した仇敵リックを軽々と肩に担ぎ、2階から階段を下りて大通りを横切りながらホテルに向かう姿などが、ガン捌きなどよりも印象的で、その逞しさに惚れ惚れしてしまいます。
b)苦労人
生い立ちは、帝政ロシアの移民として生まれ、貧民街に暮らして、家計を助けるために少年時代は新聞配達から露天商、庭師など多くの職を転々としつつ、学業に勤しみました。
学費を借金で賄いセントローレンス大学へ進み、その返済のために件のアルバイト生活の他にボクシングの試合に臨み、ファイトマネーを稼いだりナイトクラブや街頭で歌って生計を立てました。
c)晩年
2015年12月、99歳の誕生祝いには、映画・テレビ基金に1500万ドルを寄付し、「カーク・ダグラス・ケア・パビリオン」と名付けられました。寄付金は、アルツハイマー病を患っている映画・テレビ業界の人々を収容する施設を建設すると発表しました。
2020年2月5日、カリフォルニア州ロサンゼルスの自宅にて103歳で死去さsれました。
2)アンソニー・クイン
a)生い立ち
メキシコ・チワワ州チワワで生まれ、父はアイルランド系メキシコ人、母がアステカ族系メキシコ人でした。
少年時代にカリフォルニア州ロサンゼルスに移住します。早く父親を亡くし、クインは俳優になる前には靴磨きやプロボクサーのスパーリング・パートナーや画家など転々としています。
b)下積み
デミルの養女キャサリン・デミルと結婚しますが人脈は通用せず出世にはつながらず舞い込む役は悪役で、しばし登場して即殺される役ばかりでした。
1947年には彼は50本以上の作品でインディアン、マフィアのドン、ハワイの酋長、中国人ゲリラ、など様々な役を演じましたが、大物俳優ではありませんでした。そこで彼は劇場に戻り、ブロードウェーで3年間を過ごし、『欲望という名の電車』のスタンリー・コワルスキー役などを務めています。
c)共演者
1956年のカーク・ダグラス主演『炎の人ゴッホ』で、ゴーギャンを演じアカデミー助演男優賞を受賞しました。また、1986年にはゴールデングローブ賞の生涯功労賞(セシル・B・デミル賞)を受賞しています。
そして、幾多の共演者、ゲーリー・クーパー、ヘンリー・フォンダ、エロール・フリン、ジョン・ウェイン、ビング・クロスビー、ボブ・ホープ、ロバート・テイラー、グレゴリー・ペック、マーロン・ブランド、デヴィッド・ニーヴン、ピーター・オトゥール等々の大スターと互角に張り合い名声を高めていきました。
4.まとめ
邦題の『ガンヒルの決斗』は、いかにもB級西部劇のテイストですが、原題の『
Last Train from Gun Hill』も最終列車が出て行くのであって、来たわけではありません。どちらも気に入りませんが、カーク・ダグラスとアンソニー・クインの重厚な演技が観れただけで大満足でした。