映画『L.A.コンフィデンシャル』ラッセル・クロウの出世作にしてアメリカン・フィルム・ノワールの最高峰です!!
この映画『L.A.コンフィデンシャル(L.A.Confidential)』は、1990年に発刊されたジェイムズ・エルロイの『L.A.四部作』の第3部である小説を原作とした1997年公開のアメリカ映画です。カーティス・ハンソンが監督・製作・脚色を兼任し、ワーナー・ブラザースの製作で映画化されました。
目次
1.概要
1)評価
1950年代ロサンゼルスの暗部を描いた、フィルム・ノワールの最高峰です。1998年の第70回アカデミー賞は、作品賞を含む11部門を制した「タイタニック」の独壇場となりましたが、当初は、前哨戦の結果なども含め作品賞の本命と目されていたのが、本作でした。結果は助演女優賞(キム・ベイシンガー)と脚色賞の2部門受賞に留まりましたが、90年代を代表するフィルム・ノワールとして未だ色褪せることなく、最高峰の作品に間違いありません。
2)時代
舞台となるのは、終戦から10年も経っていない1950年代の米ロサンゼルスです。戦勝国のアメリカであっても混沌とした状況が続いていて、ましてや当時のロス市警はマフィアとの癒着が強固で無法地帯だったと言われていました。その不穏な様子は本作にもちりばめられていて、刑事たちの尋問などはめちゃくちゃです。その手口は、現代では「拷問」レベルに違いありません。
3)変化
作家ジェイムズ・エルロイは、そんなロスの暗黒部分を「ブラック・ダリア」に始まる「L.A.4部作」として発表。3作目となる本作は、元刑事を含む6人が惨殺された事件を受け、ロス市警の刑事たちが警察内部にうごめく腐敗と対峙し、多くの血が流れていくさまを描いています。原作では8年間にわたる物語ですが、映画では3カ月間に凝縮したことで先の読めない展開を演出しています。
2.キャスト
主役3人のキャラがしっかりしていて、三人三様にすがく魅力的に描かれています。当時のネームバリューから3人のうち、この前々年『ユージュアル・サスペクツ』で米アカデミー賞助演男優賞を受賞ケヴィン・スペイシーがトップに名前が出てきますが、実際には、この作品が出世作と言われる、当時全く無名だったラッセル・クロウとガイ・ピアースの2人が真の主役です。
ラッセルとガイはこの作品がほとんどハリウッドデビューで、この映画で助演女優賞を受賞するキム・ベイシンガーも、ここまではほとんどお色気女優的扱いが多い女優でした。この映画の製作時点でスターと呼べるのは、ケヴィンと、脇役として一定の地位を得ていたジェームズ・クロムウェルとダニー・デヴィートの3人ぐらいです。
3.ストーリー
1)事件発生
1953年末、L. A. 、ダウンタウンのナイト・アウル・カフェで6人の男女が惨殺されました。ロス市警は捜査を開始し、事件の背景に、白ユリの館というハリウッドの有名女優に似せた娼婦たちを擁する秘密売春組織の存在が浮かんできます。
2)対立
女性に暴力をふるう男を許さない熱血漢のバド・ホワイト刑事(ラッセル・クロウ)は、高級娼婦リン(キム・ベイシンガー)に接近しますが、いつしか彼女と恋に落ちました。一方、野心家で出世のためには手段を選ばない男、エド・エクスリー警部補(ガイ・ピアース)は、おのれの方針に従って捜査を続けるがバドと対立しました。
3)もう一人
そこでエドは、『LAコンフィデンシャル』というタブロイド誌の記者シド(ダニー・デヴィート)と結託して羽振りをきかせ、刑事ドラマ『名誉のバッジ』のアドヴァイザーも務める狡猾なジャック・ヴィンセンズ刑事(ケヴィン・スペイシー)に協力を求めました。
4)黒幕
捜査が進むうち、事件の背後には、街のボスだったミッキー・コーエン逮捕後の縄張りをめぐるヘロインをはじめとする利権争いがからんでいるのが判明してきます。真犯人はなんとバドらの上司で刑事課のボス、ダドリー・スミス警部(ジェームズ・クロムウェル)でした。核心に迫ろうとしたジャックはスミスの自宅を訪ねましたが、「ロロ・トマシ」の言葉を残して、あえなく殺されてしまいました。
5)ハニー・トラップ
エドはリンに誘惑され情事に及びましたが、その光景をシドがカメラに収めました。スミスと裏でつながる売春組織の元締め、ピアス・パチェット(デイヴィッド・ストラサーン)が仕掛けた罠だったのです。
6)激怒
シドは事件の関係者としてスミスらに尋問され、それに立ち会ったバドは、エドとリンの情事を知って激怒します。市警の資料室にいたエドにバドは襲いかかりますが、エドは事件解明のために手を組もうとバドを説得しました。ふたりはローウ地方検事(ロン・リフキン)を締め上げ、例の殺人もスミスの手によるもので、彼の目的がコーエン亡き後、ロサンジェルスの裏社会を支配することだと知りました。
7)決着
スミスと配下のものによって、シドはスミスらに始末され、ピアスもすでに殺されていましたた。ふたりはスミスに会合場所のヴィクトリア・モーテルに個別に呼び出されますが、ここで2人とも消されることを察し協力して待ち受け、負傷しながらも死闘の末に、スミスを倒しました。
4.みどころ
1)筋立て
ストーリーを牽引していくのは、女性に暴力をふるう男を憎悪する腕っぷしの強い熱血刑事バド、出世のためなら簡単に仲間を売るため孤立するエリート刑事エド、刑事ドラマのアドバイザーをしているが裏でゴシップ記者に情報を流し賄賂を受け取る汚職刑事ジャックの3人です。それぞれの思惑が三者三様で飽きさせることがないのですが、更に警察上層部、マフィア、娼婦、億万長者、検事などが絡んでくるため、情報量が多すぎて見る者に多少の混乱を招くかも知れませんが、ご心配なくエンディングの手前の、エドが尋問を受けるところで、真相を筋立てて語り、明快に理解できるようになっています
。
2)情報過多
しかしながら、この混乱は欠点ではなありません。ご都合主義的な要素は一切なくて、伏線が張られまくっているため、3人の刑事が持ち寄る情報が組み合わさっていくさまは、実にスリリングで小気味いいものです。さらに、50年代のロスを見事に再現してみせたプロダクションデザイン、決して華美ではないが仕立ての良さが伝わる刑事たちのさりげない衣装も秀逸です。
5まとめ
本作は謎解きを楽しむ類の作品ではありません。あくまでも、主人公たちの心の動きを追うことに主眼を置くべきで、鑑賞後に体感する寂寥感を伴う余韻は、正統派フィルム・ノワールの系譜を受け継いでいることに間違いないのですが、バドとリンの新しい旅立ちに、また違った余韻も感じられます。