この映画『キング・コング(King Kong)』は、2005年のアメリカのアクションアドベンチャー映画で、1933年の映画『キング・コング』のリメイクです。
本作の邦題は、1作目と同じですが、2作目と少し異なり「・(中黒)」が入っています。
目次
1.紹介
ピーター・ジャクソン監督は、子供の時に見た『キング・コング』(1933年)に感激して映画製作を志すようになり、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで世界的名声を得ました。悲願の企画がかない、本作での切れのいい演出は、3時間を超す上映時間の長さを全く感じさせません。
また、2005年のアカデミー賞においてアカデミー視覚効果賞、アカデミー音響編集賞、アカデミー録音賞の3部門で受賞しました。
2.ストーリー
1)プロローグ
1933年、ニューヨーク、大恐慌の時代、安劇団の女優アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)は、突然の劇場閉鎖で失業してしまいます。
映画監督、カール・デナム(ジャック・ブラック)は、撮影中の映画に、未知の野生の世界を舞台にした伝説の物語を付け加えようとして、プロデューサー達に熱弁を振るいました。
しかし、撮影続行を却下されたデナムは、助手のプレストン(コリン・ハンクス)と共にフィルムを持ち出して逃走しました。
2)ヒロイン探し
その後デナムは、主演女優が映画を降りてしまったことを知り、早速、代役探しを始めます。
ストリップ小屋のダンサーを紹介されたアンは、飢えをしのぐためにその仕事を受けようとするが、劇場の前で思い止まりました。
主演の女優を探し、その劇場に足を運んでいたデナムは、アンを見かけて後をつけます。
デナムは、街角でリンゴを盗もうとしているアンに声をかけて、食事を与え、彼女をヒロインにスカウトし、シンガポールでの撮影と偽って参加するよう誘います。
冒険映画の内容に興味は示すものの、アンはその話を断り立ち去ろうとします。
しかしアンは、その映画の脚本を、尊敬する戯曲家のジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)が担当すると聞き、出演を承諾しました。
3)出航そして航海
その頃、映画会社側がフィルムの件を警察に通報したため、デナムは、貨物船”ベンチャー”のイングルホーン船長(トーマス・クレッチマン)に出航を急がせます。
助手のプレストンや、主演俳優ブルース・バクスター(カイル・チャンドラー)らと共に、デナムは船でロケ地へ向かう準備を始めました。
そしてデナムは、脚本を渡しに来ただけのドリスコルを、アンを引き止める材料に使うため、うまく丸め込み出航してしまいます。
ドリスコルは、仕方なく撮影隊と行動を共にすることになりますが、部屋がないために貨物室の檻に案内され、そこで大量のクロロホルムを見つけました。
その後、順調に航海を続ける貨物船でしたが、本来の目的地”スカルアイランド”を知るのはイングルホーン船長だけでした。
船上での撮影も進み、すっかり映画女優気分のアンと、それを優しく見守るドリスコルは、次第に惹かれ合っていきました。
4)怪しい目的地
やがて、船員ジミー(ジェイミー・ベル)がデナムの不審な行動に気づき、それを同僚のベン・ヘイズ(エヴァン・パーク)やコックのランピー(アンディ・サーキス)に知らせます。
デナムにその件を問い詰めた3人は、彼から目的地が”スカルアイランド”だということを知らされます。
ランピーは、かつて話に聞いたことがある、巨大生物が生息するというその島の恐ろしさをデナムに伝えました。
デナムの逮捕状が出ているとの電文を受け取った船長イングルホーンは、船の進路を変えラングーン(現ヤンゴン)に向かおうとします。
しかしながら、船は進路の目標を失い、海は霧に覆われて不気味な雰囲気が漂いはじめ、荒れ狂う波間をぬって進む船は、ついに座礁してしまいました。
5)スカルアイランド
”スカルアイランド”に到着したことを知ったデナム率いる撮影隊は、船が損傷し乗組員が混乱する隙を見て、島に上陸しました。
撮影を続けながら、巨大な壁に囲まれた島に足を踏み入れたデナムらは、原住民に襲われてしまいます。
一行は死者も出しながらも、イングルホーンや船員に救われました。
船に戻った一行は島から脱出しようとしますが、デナムは撮影を続けることを考えます。
しかし、アンが原住民にさらわれてしまって、それに気づいたドリスコルは、沖に向かおうとしていたイングルホーンを説得し、船員やデナム達は彼女を救い出すために再び島に向かいました。
6)トレ・コング
原住民は、島にいる悪魔”トレ・コング”に、アンを生贄として捧げようとしていた
のでした。
トレ・コングとは、巨大な野獣キング・コング(アンディ・サーキス)で、アンの前に姿を現して連れ去ってしまいます。
イングルホーンに24時間の猶予を与えられ、アンを追う救出隊は、恐竜や巨大化した生物に襲われ犠牲者を出しますが、デナムは必死にカメラを回し続けました。
沼地を前に、バクスターと数人が船に戻り、さらに、いかだを作り前進したデナムらは、沼地に生息する巨大生物に襲われ何人もの死者を出します。
やがて、殺気を感じたヘイズが、現れたコングに捕まり岩壁に叩きつけられ死亡します。
ヘイズを慕うジミーは悲しむ間もなく、一行と共にコングに襲われ、しがみついていた大木と共に崖下に落下しました。
その頃、コングがいなくなった隙に逃げようとしていたアンは、密林で恐竜に襲われてしまいます。
そこにコングが現れ、大格闘の末に何頭もの恐竜を倒しました。
7)恐ろしい夜
一命を取り留めたデナムやドリスコルらだったが、再び巨大な昆虫に襲われ、ランピーは肉食生物に飲み込まれてしまいます。
尚も大量の昆虫が襲い掛かりますが、船で待機していたイングルホーンやバクスターらが駆けつけ、一行を助け出しました。
コングは、自分から逃げようとするアンの態度に気分を害し、彼女を無視しようとします。
アンは、コングが命を守ってくれようとしたことで、彼と心通わせるようになりました。
苦労して撮ったフィルムを失ったデナムは、コングを生け捕りにして連れ帰ることを考えます。
ドリスコルは、単独でアンの救出に向かい、コングに気づかれるものの、鳥竜の襲撃の隙に彼女を助け出すことに成功しました。
アンとドリスコルは渡し橋まで到着するが、デナムはコングを誘き出すために橋を降ろそうとしません。
デナムの助手のプレストンが橋を降ろし、アンとドリスコルはなんとか海岸にたどり着きました。
8)コング、ニューヨークへ
アンは、デナムとイングルホーンらが、コングに危害を加えようとしていることに気づき、それを阻止しようとします。
コングはクロロホルムを嗅がせられるが、抵抗して暴れ始めてアンを追いました。
尚も暴れるコングでしたが、デナムが、コングの顔面に向けてクロロホルムの瓶を投げつけ、ついにコングは意識を失ってしまいました。
デナムは、コングを運び無事ニューヨークに到着し、”世界第8の不思議”と題して、大規模なイベントを催します。
一躍、時の人として脚光を浴びたデナムは、コングを人間達への見世物にしようとしたのです。
そして、鎖につながれているコングを前にして、茶番劇のようなショーが始まり、会場に姿を現したドリスコルとプレストンは、デナムの愚かな行為に頭を傾げるのでした。
9)逃げ出したコング
やがてショーのクライマックスとなり、アンの生贄の場面になりますが、現れた女性は代役で、ドリスコルは、アンがその役を断っていたことを知りました。
コングは、アンに似た女優を見て荒れ狂い、つながれた鎖を引きちぎり、ニューヨークの街に飛び出してしまいます。
暴れ回るコングはアンを捜し、舞台に戻っていた彼女は、ただならぬ事態に、自らコングの元に向かいました。
ドリスコルは、自分を恨むコングを誘き寄せるものの、逆に追い詰められてしまいます。
そこにアンが現れ、彼女と再会したコングは、セントラルパークの凍った池ノ上で静かなひと時を過ごすのでした。
しかし、軍隊の攻撃を受けたコングは、アンを連れたままエンパイア・ステート・ビルを登り始めました。
10)最後の抵抗
やがて夜が明け、軍用機の攻撃が始まり、途中でアンを置いたコングは銃撃を受けながらもビルの最上部に達します。
ドリスコルもビルに到着してアンの元に向かい、彼女はコングのいる場所まではしごを上っていきました。
はしごが銃撃されて、ビルから外れそうになり、落下したアンをコングが受け止めて、彼女を安全な場所に避難させます。
大量の銃弾を受けたコングは、最後の雄叫びを上げ、そこに現れたアンは、軍用機に合図を送り攻撃を阻止しようとしました。
大きなダメージを受けたコングは、再び銃弾を浴びて、アンを見つめながら力尽き、地上に落下していきました。
そして、後を追ってきたドリスコルは、アンを固く抱きしめるのでした。
11)エピローグ
コングの死体を見て絶望したデナムは、飛行機が止めを刺したという記者に向かって「美女が野獣を殺した」と言い残し、その場を立ち去りました。
3.四方山話
1)日本での不人気要因
本作は、全世界の興行成績はそこそこのヒットでしたが、日本では予想外の不入りで、興行目標80億円、最低でも50億円と予想されましたが、実際には23億円に留まりました。
日本国内における不振の原因として、コング等の“売り”となる怪獣が登場するまでに1時間近くの人間ドラマがあるという構成を含め、「いわゆる“怪獣映画”としては3時間という上映時間は長すぎる」との批判もありました。その他に、メディアによる宣伝力の多くが同時期に公開された『男たちの大和』に割かれていた事も原因の一つと考えられます。
2)監督の本作リメイク
ジャクソン監督が「キング・コング」のリメイクに着手したのは、何と12歳の時でした。
針金に母親のストールを巻き付けてコングを作り、ボール紙に色を塗っ てエンパイアステートビルを、その背景となるニューヨーク市の風景は シーツに描いた。この3つは現在もジャクソン監督が所有しているが、映画は未完成です。
ちなみに、米ユニバーサルでこのリメイク企画を始動させたのが35歳でしたが、この時は企画が頓挫しています。
3)かのセリフ
初代アン・ダロウ役のフェイ・レイの出演が予定されていましたが、彼女は撮影前に亡くなり、見物人として言うはずだった映画史上に残る名ゼリフ「飛行機ではなく、美女が野獣を死なせた」は、結局ジャック・ブラックが、ラストで記者に語ることになりました。
ちなみにフェイ・レイには、原案のメリアン・C・クーバーが密かに思いを寄せていたと言われています。ジャクソン監督も彼女の大ファンで、ナオミ・ワッツとともに会いに行っていました。
4)カールのモデル
本作でジャック・ブラックが演じている映画監督カール・デナムですが、このデナムのモデルとしてピーター・ジャクソンが意識した監督は「市民ケーン」のオーソン・ウェルズでした。
ジャクソンの発言によれば「企業家として1930年代にニューヨークのマーキュリー・シアターを経営していた頃の、まだ偉大な映画監督として認められる前の若き日のオーソン・ウェルズのような映画作家」をイメージしました。
さらにこの映画の監督デナムには「オーソン・ウェルズがそうだったように野心的で悪党っぽいところがある」そうです。
5)キングコングの中身
33年版のキング・コングはストップモーション・アニメ製、76年のキング・コングはリック・ベイカー製、本作のキング・コングは『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム方式のモーション・キャプチャー製となりました。
演じた俳優もゴラムと同じアンディ・サーキスで、サーキスはコングの演技のために、ロンドン動物園とルワンダでゴリラの行動様式を学んでいます。
さらに実際のゴリラの表情を取り入れるために、人間の表情をゴリラの表情に翻訳するソフトを開発。サーキスの演技をキャプチャーしてゴリラの様式に翻訳し、キング・コングが作られていきました。
6)コングの中身の努力
『ロード・オブ・ザ・リング』でゴラム役のサーキスが、ゴラムが出演するシーンのすべての撮影現場にいたのは有名でした。
今回もコングの登場シーンにはすべて撮影現場にいました。そのおかげでアン・ダロウを演じるナオミ・ワッツは、棒の先を見てコングだと思い込む必要はなく、高い処にいるアンディ・サーキスを目を合わせて演技することができました。
ちなみにコングがアン・ダロウを手に持っているシーンでは、サーキスはアン・ダロウの替わりに人形を使用し、バービー人形や布製の人形などを場面によって使い分けました。
4.まとめ
ピーター・ジャクソンの執念が見事に実りました。数あるキング・コング作品のうちでも最も高い評価を得ているのもよくわかります。ただ、長い。