凸凹玉手箱

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映画『ソイレントグリーン』おぞましい仮説を映画にしました?!

ミクロの決死圏』(1966年)『トラ・トラ・トラ』(1970年)などのリチャード・フライシャー監督、主演チャールトン・ヘストンの1973年のアメリカSFサスペンス映画です。

 

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ハリイ・ハリスンの小説『人間がいっぱい』(1966年)をベースとして、人口爆発により資源が枯渇し、格差が拡大した暗鬱な近未来社会で起った殺人事件とその背景を描いた作品で、チャールトン・ヘストンに加え、名優エドワード・G・ロビンソンジョゼフ・コットン、テレビドラマ『ライフルマン』でお馴染みのチャック・コナーズが出演の当時の豪華キャストとなっています。

 

この映画の背景は、1970年代初頭より、中国やインドをはじめとする人口の爆発的増加が深刻な問題となり、中国における人口政策である「一人っ子政策」が1979年より始まった時代です。そこに環境破壊に伴う地球温暖化も相まって、資源の枯渇、食料不足の危機感が蔓延してきました。

 

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この映画は、当時の約50年後の2022年を設定していて、まさにユートピアの対極のディストピアの世界としています。たった50年では、時代の検証に耐えるのはつらいものがあるのですが、現に現在はこの映画のような世界は想像もつかないことになっていてとりあえずはこのような危機は回避されています。

 

しかしながら、世界中の皆が皆、トランプ大統領のように、世界のことを考えず支援者の目先の利益優先でことを運ばれたら、今の平安はあり得ず、またこの先も不安になってきます。


さて、ストーリーは、2022年、先の見えない人口増加により、世界は食料や住居を持たない人間が路上に溢れ、一部の特権階級と多くの貧民という格差の激しい社会となっていました。肉や野菜といった本物の食料品は庶民にはめったにお目にかかれない稀少で高価なものとなっていました。

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特権階級を除くほとんどの人間は、ソイレント社が海のプランクトンから作る合成食品の配給を受けて、細々と生き延びていました。そしてある夜ソイレント社の取締役サイモンソン(ジョゼフ・コットン)が殺害されました。

 

ニューヨーク市警殺人課のソーン刑事(チャールトン・ヘストン)は、同居人の老人・ソル(エドワード・G・ロビンソン)の協力を得て捜査に乗り出しますが、サイモンソンの護衛兼監視役だったタブ・フィールディング(チャック・コナーズ)の他、様々な妨害を受けてきます。

 

そんな中、自室に戻ったソーンは、ソルが公共安楽死施設「ホーム」に行ったことを知ります。慌てて「ホーム」に向かったソーンは、真実を知ってしまったが故に死を選ぶしかなかったソルの最期を見届けることになって、草原や大海原などの映像とベートーヴェン交響曲第6番「田園」の響きに包まれてソルは死んでしまいました。

 

ソーンはその遺言に従い、裏づけをとるために死体を追跡しました。そしてソルをはじめ多数の死体がトラックでソイレント社の工場に運び込まれ、人間の死体を原料としてソイレント・グリーンが生産されている事実を突き止めるのでした。

 

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その後、フィールディングらに追われ、彼らを倒したものの自身も深手を負ったソーンは、「海もプランクトンも死にかけている、人間なんだ、人間を食料にしている、次は牛の様に人間を飼育するぞ」と病院に搬送されながら声高に真実を叫ぶのでした。


特権階級の住居に家具として美しい女性を配置する。本を読まなくなった人々の為にある「交換所」と「本人間」ほか、ちょっとついていけそうもない設定がありますが、極度に荒んだディストピアの世界とすれば、それもアリかなと思わせます。

 

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それにしても、チャールトン・ヘストンセシル・B・デミル監督をして「ミケランジェロの彫刻のように美しい」といわした肉体美と精悍なマスク、格調高い演技力でいくつもの名作に出演し、1956年「十戒(モーゼ役)」、1959年には映画『ベン・ハー』でアカデミー主演男優賞を獲得しました。さらには、『猿の惑星』や本作のようなSFにして超話題作もものにし、まさにハリウッド映画の至宝といって良い俳優さんです。