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映画『レッド・オクトーバーを追え!』荒唐無稽もショーン・コネリーで納得させられます!!

この映画『レッド・オクトーバーを追え!(The Hunt for Red October)』は、トム・クランシーによる小説を原作として1990年に製作されたアメリカ映画です。
監督は、『プレデター 』『ダイ・ハード』等のジョン・マクティアナンで、主演はショーン・コネリー、共演に『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』でCIA長官を演じたアレック・ボールドウィンの若い頃が見られます。

目次

 

 

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1.レッド・オクトーバーとは

タイトルになっている潜水艦レッド・オクトーバーは以下の通りの設定になっています。

ソビエト海軍の最新鋭弾道ミサイル潜水艦で、艦名は「十月革命」にちなんでいます。タイフーン級の改良型で、イギリス情報部から出たとした情報では、通常のタイフーン級より長さ12メートル/幅3メートル大きい。排水量は32,000トンで、トンネル式無音航行システム「キャタピラー・ドライブ」を装備しています。

当初は米英とも「艦体にあるドア」の正体がつかめませんでしたが、元潜水艦乗りのタイラーが無音推進装置である可能性を示唆しました。タイラーの説明では「水中のジェットエンジン」であり、駆動メカ部分が無いためアメリカ軍のソナーでも探知出来ない程の静音性を有しています。
物語では、レッド・オクトーバーを追跡していたロサンゼルス級潜水艦ダラスのソナー員ジョーンズが、分析コンピューターの結論を無視し自力でその不自然な音が人工音=潜水艦であることを看破しました。


2.ストーリー

1)プロローグ

1984年、ゴルバチョフ政権の成立前夜、ソ連タイフーン級改造潜水艦レッド・オクトーバーのマルコ・ラミウス艦長(ショーン・コネリー)は、ある決意をかため、出航を命じました。

 

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同じ頃、CIAの情報分析学者ジャック・ライアン(アレック・ボールドウィン)は上官のグリーア提督(ジェームズ・アール・ジョーンズ)から正体不明の潜水艦の写真を渡されます。その潜水艦の秘密を探るべく、ライアンは海軍技術顧問の友人スキップ・タイラー(ジェフリー・ジョーンズ)のもとに向かいました。

一方、レッド・オクトーバーの艦内では、ラミウス艦長が政治士官のイワン・プーチン(ピーター・ファース)の隙をついて扼殺し、その死を事故に擬装して用意してあった偽の命令書を取り出し、部下たちにある指示を出します。それは味方を引き離し、アメリ東海岸に接近して演習を行うというものでした。


2)問題の潜水艦

ライアンに写真を見せられたタイラーは、その潜水艦がアメリカ海軍でも開発に失敗した最新式の無音推進装置「キャタピラー」を装備していると告げます。その言葉を裏付けるように、大西洋でレッド・オクトーバーを追跡していたアメリカ海軍の潜水艦から、見失ったとの報告が入りました。

レッド・オクトーバーのことを知ったグリーア提督は、ライアンを連れて統合作戦本部の幕僚会議へと向かいます。大統領顧問をはじめとする責任者たちの前で、ライアンはレッド・オクトーバーのことや、その指揮官で優秀なラミウス艦長のこと、ソ連艦隊の主力である数十隻の原潜がアメリカに接近中であることを説明します。

 

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3)荒唐無稽な計画

幕僚たちはソ連軍の動きを警戒しますが、ライアンは、ラミウスが残した手紙によってソ連海軍にレッド・オクトーバー撃沈命令が下されたことから、ラミウスが艦ごと亡命するという可能性を語りました。ラミウスはロシア人ではなくリトアニア人で、腹心の部下だけで艦を固めていることや、彼の妻の一周忌が今日であるのがその根拠なのです。

会議が終わり、ライアンは自分の説を証明することを命じられ、北大西洋の空母エンタープライズに向かいました。

その頃、ソ連海軍もレッド・オクトーバーを懸命に追跡していました。その中でも、攻撃型原潜コノヴァロフのツポレフ艦長は、ラミレス相手に殺意を漲らせていました。ラミウスの教え子でもありながら出世にしか目のないツポレフ(ステラン・スカルスガルド)は、恩師を自らの手で仕留めようと決意していたのです。

悪天候の中、空母エンタープライズに到着したライアンは、艦長や司令官たちにレッド・オクトーバーを無事に亡命させるよう協力を求めます。

 

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レッド・オクトーバーの艦内では、ラミウス艦長が気心の知れた部下たちを集めて、亡命のことやすべての責任を自分が負う覚悟を告げていました。
そしてレッド・オクトーバーはソ連海軍だけが知る秘密の航路を使い、アメリカ本土に接近していきました。


4)前哨戦

そんなレッド・オクトーバーの動きを、アメリカ海軍の原子力潜水艦ダラスが捉えます。海軍きっての優秀なソナー員ジョーンズ(コートニー・B・ヴァンス)が察知した情報をもとに、ダラス艦長のマンキューソ(スコット・グレン)はレッド・オクトーバーの航路を予測し、待ち伏せを図りました。

 

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その頃、装置の故障により無音潜行のできなくなったレッド・オクトーバーは、やむなく通常のプロペラ潜行に切り替えました。しかしその音が原因で、ソ連の対潜水艦攻撃機に捕捉され、魚雷攻撃を受けてしまいます。急旋回で魚雷をかわすことに成功したラミウス艦長ですが、装置の故障は乗組員による破壊工作であることが判明し、艦内に緊張が走りました。

態勢を整え、レッド・オクトーバーを追うソ連艦隊を牽制するため、アメリカ側も軍事的だけでなく政治的にも対抗処置をとります。大統領顧問のペルト国家安全保障担当大統領補佐官(リチャード・ジョーダン)は、ソ連アンドレイ・ルイセンコ駐米大使(ジョス・アクランド)を呼び、問いつめました。
状況をスッとぼけた大使は、ラミウスが発狂してアメリカを攻撃しようとしていると語り、レッド・オクトーバー撃沈にアメリカの協力を求めます。

ミウスの亡命の意志を確かめることに焦っていたライアンは真冬の海に飛び込み、強引に原潜ダラスに乗り込みます。

しかし、ソ連大使の情報をもとに下された命令は、手段を選ばずレッド・オクトーバーの接近を阻止せよというものでした。


5)対潜戦闘

ダラスは攻撃態勢でレッド・オクトーバーを迎えますが、ライアンはラミウスの意志を推測してその行動を予期し、そしてダラス艦長マンキューソを説得し、レッド・オクトーバーとのコンタクトに成功します。

ミウスは放射能漏れの事故を装って事情を知らない乗組員たちを脱出させ、少数の部下たちとともに艦に残りました。再び潜水したレッド・オクトーバーに、小型潜水艇が接近、ライアンとダラスの乗組員たちが乗り込みます。

ようやく直接対面したライアンに、ラミレスは亡命の意図とともに艦を引き渡すことを告げます。

 

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しかしその時、トゥポレフの指揮する原潜コノヴァロフが接近して来ました。さらに艦内に潜んでいた工作員との間でも戦闘が始まります。


6)擬装と結末

艦の外と中での戦闘の末、工作員は射殺され、レッド・オクトーバーはマンキューソの操船でコノヴァロフの撃沈に成功します。脱出したソ連兵たちは、その爆発を見て、レッド・オクトーバーが撃沈されたと信じました。


その後、無事にアメリカ沿岸の小さな入り江に曳航されたレッド・オクトーバーの艦上で、ラミウスはライアンに亡命した動機について語るのでした。

 

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3.よもやま話

1)キャスト

脇を固めた脇役陣が多士済々で、レッドオクトーバー号副長にサム・ニール、USAダラス艦長にスコット・グレン、ソ連コノヴァロフ号艦長にスティラン・スカルスガード、CIA本部提督にジェームズ・アール・ジョーンズなど顔を見ればお馴染みの男たちが登場するたびその言動に目を奪われます。

 

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2)ロシア語

ミウスやボロディンらのソ連人役のキャストは映画冒頭ではロシア語を話していますが、政治士官プーチンが艦長室でラミウスの私物の聖書の黙示録を読むシーンの「ハルマゲドン」の単語から英語にスイッチしています(ただ、後の場面でもロシア語で話すシーンが所々にある)。
普通に母国語を話さない映画がありますが、本作はまだ多少こだわりがあるようです。


3)テーマ音楽

ベイジル・ポールドゥリスが作曲した本作のテーマ音楽『Hymn To Red October』が、『とんねるずのハンマープライス』のエンディングや、『スポーツマンNo.1決定戦』とか、『タモリの未来予測TV』のグランドオープニングで使用されています。


4)隠れた字幕

日本語字幕・吹き替えでは扱われない要素だが、レッド・オクトーバーを追跡するダラスの腕利きソナー員であるジョーンズ兵曹の台詞にはクラシック音楽(マクティアナン監督はジュリアード音楽院で学んだ)やオーディオヴィジュアルに関する、平易に理解し難い知識が含まれています。
レッド・オクトーバーの推進音を探しながら"S/N比が劣化して「Signal to noise ratio's dropping.」と呟いて、コノヴァロフの魚雷の特徴を米軍の魚雷より「ピッチが高い(pitch is too high.)」と表現しました。


5)誤訳

映画終盤、魚雷を回避するためダラスが緊急浮上するシーンにおいて副長の指示に「緊急ベル」と字幕が表示されるが、これは「エマージェンシー・ブロー」(Emergency Blow)の誤訳である

 

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4.まとめ

長編を2時間余りにドラマ化したため、流れに無理があるものの潜水艦同士の対決や男対男の意地の張り合いなどみどころは満載です。

荒唐無稽でまことに非現実的な展開にもかかわらず、結末まで興味深々で観ることができたのは、スタッフ・俳優たちの技量の賜物なのでしょう。