映画『パシフィック・ウォー』今、明らかになった驚愕の事実です?!
この映画『パシフィック・ウォー(USS Indianapolis: Men of Courage)』は、マリオ・ヴァン・ピーブルズ監督、ニコラス・ケイジ主演のアメリカ合衆国で制作された、2016年の戦争映画です。
太平洋戦争の末期に戦争終結の極秘任務を命じられたアメリカ海軍の巡洋艦インディアナポリスとその艦長チャールズ・B・マクベイ3世の数奇な運命を描きます。
目次
1.ストーリー
1)プロローグ
1945年3月、沖縄近海で、チャールズ・B・マクベイ艦長(ニコラス・ケイジ)率いるアメリカ海軍巡洋艦インディアナポリスは日本軍の神風攻撃を受けました。そうした中、原子爆弾で戦争の早期終結を図りたいアメリカ軍上層部は、テニアン島まで原爆の輸送を決め、その輸送にはインディアナポリスが選ばれました。
バマ(マット・ランター)とダントニオ(アダム・スコット・ミラー)はインディアナポリスの乗組員で、クララ(エミリー・テナント)はダントニオの子供を妊娠、ダントニオは指輪を買い、プロポーズする予定でしたが、喧嘩の最中に指輪をなくしてしまいます。ところが、指輪は同じ乗組員が見つけて、隠し持っていました。
2)極秘任務
1945年7月に、マクベイ艦長とインディアナポリスはトルーマン大統領の極秘指令により、アメリカ軍が太平洋戦争終結を目的として開発した原子爆弾を輸送するため、テニアン島を目指してアメリカを出港しました。
無事テニアン島に到着し、原爆を陸揚げして、任務を完了します。そしてインディアナポリスはフィリピンを目指して出港しました。
3)撃沈
7月30日、橋本以行艦長(竹内豊)率いる日本の潜水艦「伊号第58」はインディアナポリスを発見します。特攻兵器、人間が操作する魚雷・回天の準備をする橋本艦長、しかし、距離が近いことから、通常の魚雷で撃沈できると判断し、通常の魚雷を発射します。
魚雷攻撃を受け、インディアナポリスは大混乱になります。艦内では、火災が発生、海水の侵入、マクベイ艦長は、艦を放棄、乗組員は海に飛び込みました。
インディアナポリスは沈没し、乗組員たちはボートに乗り込みますが、限られた食料、多くのけが人、サメの襲撃などで多くの生存者が倒れていきます。マクベイ艦長は多くの乗組員を助けようとしますが、バマとダントニオも海上をさまよい、ダントニオは死んでしまいます。
4)漂流
絶望の5日目、海上をさまよう生存者をアメリカ軍の飛行機が発見します。生存者は飛行機の翼の上に乗せられ、その後駆け付けた僚船に救出された生存者は300人ほどが、病院に収容されました。
バマは乗組員の一人から、ダントニオの指輪を返還されました。そして、バマは、帰国後クララに会ってプロポーズし、結婚してダントニオとの子供を育てていくこととなりました。
5)終戦
太平洋戦争は広島、長崎への原爆投下によりアメリカの勝利に終わります。アメリカ本土に帰国する生存者、マクベイは、自宅で沈没の悪夢にうなされます。そして、遺族からの怒りの電話がマクベイの自宅へかかります。マクベイは責任を問われ裁判にかけられました。
6)裁判
裁判にかけられるマクベイは、ジグザグに船を指揮すれば魚雷を避けられたのでは?と尋問されます。裁判には意外な証人の、橋本が証言台に立ちます。「潜水艦とインディアナポリスの距離において、たとえジグザグに動いてもインディアナポリスを撃沈できた」と証言する橋本でした。マクベイに無罪判決が下されます。
7)エピローグ
裁判後、マクベイは橋本と対面し、軍人として、インディアナポリスを攻撃せざるをえなかったが、人間としては後悔があると橋本に告げられました。マクベイと彼は敬礼を交わしました。
やがて時は過ぎ、ルイーズがこの世を去り、失った部下たちの記憶が消えることはありませんでしたが、電話も鳴りやむことはありませんでした。
そして、ある日、マクベイは、軍服に着て拳銃を持ち、自らの死を選ぶのでした。
2.チャールズ・B・マクベイ3世
1)生い立ち
チャールズ・バトラー・マクベイ3世は1898年7月30日にペンシルベニア州エフラタの海軍軍人一家に生まれました。父親のチャールズ・バトラー・マクベイ・ジュニアはグレート・ホワイト・フリートの世界巡航時、テンダー、ヤンクトンの艦長を務め、第一次世界大戦では海軍大将に昇進、その後1930年代にはアジア艦隊の最高司令官を務めた人でした。
2)戦績
マクベイ3世は合衆国海軍兵学校の1920年度卒業生で、1944年11月にインディアナポリス艦長に着任しますが、その前にはワシントンD.C.の統合参謀本部の共同情報委員会の議長でした。第二次世界大戦の前半には戦闘における功績で銀星章を受章しています。
マクベイ3世大佐はインディアナポリスを指揮し、1945年春には硫黄島の戦い、沖縄への艦砲射撃など様々な戦闘に参加します。3月31日にインディアナポリスは7機の特攻機を撃墜しましたが、敵機の攻撃により船体を損傷し13名の死者を含む多数の負傷者を生じました。インディアナポリスは修復のためカリフォルニア州メア・アイランドに帰還しました。
3)極秘任務
その後インディアナポリスは広島、長崎に投下されることになる原子爆弾の部品及び核物質をテニアン島へ運搬する任務に従事し、最重要機密である貨物を運搬した後、インディアナポリスはレイテ島に向かう途中、日本の伊号潜水艦の攻撃を受け沈没しました。
4)裁判
沈没後、マクベイ大佐は救助されますが、後で本国において、
1.魚雷の回避に有効というジグザグ航行を怠った罪
2.退艦命令を出す時期を逸した罪
の2点で軍法会議にかけられます。戦後、インディアナポリス撃沈時の伊号第58潜水艦の艦長だった橋本以行中佐(1945年9月5日進級)はこの軍法会議の為にアメリカまで呼ばれ、「あの位置関係ならばジグザグ航行をしていても撃沈できた」と予備審問で証言をしましたが、橋本中佐は軍法会議の審問でこの証言をさせてもらえないまま、日本に帰国することになています。
アメリカは第二次大戦で多数の艦艇を喪失しましたが、艦の喪失により軍法会議にかけられた艦長は彼一人だけでした。結果、第2の罪状について無罪、第1の罪状について有罪とされましたが、海軍作戦部長チェスター・ニミッツ元帥ら上級幹部が寛大な処置をするようジェームズ・フォレスタル海軍長官に勧告、フォレスタルはこの勧告を承認し、1946年2月23日にニミッツ作戦部長により、判決を撤回し逮捕を中止し現役に戻すという記者会見が行われ、マクベイは無罪となりました。
5)晩年
1949年に51歳で退役、少将に昇進しました。しかし、インディアナポリス元乗組員の生存者はマクベイを擁護したが、一方では、死亡した元乗組員の遺族たちに後々も責め立てられ、コネチカット州リッチフィールドの自宅にてピストル自殺しました。
6)復権
悲劇から50年以上後に、当時12歳で、映画『ジョーズ』(作中でインディアナポリスの話が登場する)によってこのインディアナポリス撃沈事件に興味を持ったハンター・スコットによりマクベイ元艦長の軍法会議が誤審であるとの認識が提起され、2000年、アメリカ合衆国議会はマクベイ元艦長の記録は「彼はインディアナポリスの損失に対し無罪である」ことを反映すべきだという決議を可決しました。
10月30日にビル・クリントン大統領もこの決議にサインしましたが、マクベイ元艦長の名誉回復に尽力していた橋本元中佐は5日前(10月25日)に死去していたため、その知らせを聞くことはできませんでした。
3.インディアナポリス巡洋艦の最後
1)沈没
テニアンに最高機密の荷物を届けた後、インディアナポリスはグアムに派遣され7月28日レイテ島へ向け艦隊ではなく単独でグアムを出港しました。
直線コースを取りレイテ島へ向かい、7月30日0時15分、北緯12度02分 東経134度48分の地点で日本海軍の潜水艦伊58(回天特別攻撃隊・多聞隊、艦長:橋本以行少佐)が、九五式魚雷を 初回発射3本、数秒おいて2回目発射3本の計6本を全門発射したうちの3本が右舷に命中、船体を鋭く貫いた魚雷が爆発し、特に時差発射した2回目の魚雷が、1発目が船体に開けた穴に入り込み奥で爆発、艦内第二砲塔下部弾薬庫の主砲弾を命中と同時に誘爆させ、同艦は夜空に大きく火柱を吹き上げると、艦前半部を海に突っ込みながら暫く浮いていましたが、12分後に転覆、沈没しました。
米軍関係の記録では、破孔が2つだったため命中2発としているが、生存した乗組員の間でも、また伊58の記録でも、魚雷爆発音(こもったような振動するような短い音)は3回とされています。
2)インディアナポリスの生存者
インディアナポリスは、その極秘任務のため艦船位置表示システムから外されており、付近の艦船に沈没の情報が伝わらなかったため、乗組員は5日後に救助が完了するまで救命艇も無いまま海面に浮かぶこととなりました。
乗員1,199名のうち約300名が攻撃のため死亡し、残り約900名は8月2日に哨戒機によって初めて発見されてから5日後に救助が完了するまで、救命ボートなしで海に浮かんでいましたが、水、食料の欠乏、海上での体温の低下、これらからおこった幻覚症状、気力の消耗などで多数の乗組員が死亡しました。それに加えサメによる襲撃が心理的圧迫を強くしました。
その後映画およびディスカバリーチャンネルの番組等で、サメの襲撃が演出として過剰に語られたため、大多数がサメの襲撃の犠牲者になったかのように思われていますが、おもな原因は救助の遅れと体力の消耗が死亡の原因といわれています。最終的に救助された生存者はわずか316名でした。
4.まとめ
本作が実話に基づいたものであり、これが実話であって、知らなかったことにおどろきました。
冒頭から、本作の目指すところが全く見えず、チープなCG映像と相まって鑑賞の打ち切り時を覗っていましたが、ほんまかいな?の連続で結局最後まで観てしまいました。
キャッチのサメの攻撃の強調はテーマをミスリードさせるばかりでなく、せっかくの題材を消化しきれなくしてしまっているようです。
史実を追いかけるのが精いっぱいで、ポイントが絞り切れていないのが残念でした。