この映画、大ヒットしたのは30年も前です。普通こんな大ヒット映画なら続編が作られて当然でしょうが、やっと続編制作の話が出てきたところです。
トム・クルーズ主演の映画シリーズといえば『ミッション:インポッシブル』なんぞは、最新作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』で6作目にもなります。
では、なぜ、続編が作られていないかと言うと、この作品の出来を非常に気に入ったトム・クルーズが、続編が製作されることで本作の価値が低下することを嫌って、自ら続編の製作権を買い取ってしまったためということらしいです。
『ミッション:インポッシブル』はオリジナルのテレビドラマからの展開なので、このシリーズ大ヒットとは言え先代からの古いファンからはどうしても「トム・クルーズの」がついてしまいます。
『トップガン』はそう意味ではトム・クルーズの「元祖トップガン」に間違いがありませんし、それだけトム・クルーズのこの作品に対する思い入れがあるということであり、それが故に続編の制作に二の足を踏んで来たのかもしれません。
ジェット戦闘機パイロットは40歳が関門と言われるほど、体力的、精神的に過酷な仕事です。トム・クルーズも、もう56歳、すべてのアクションを自身でこなす彼は、最新作でアクションにおいて重症を負っています。まして、9Gもの荷重がかかるアクロバット飛行に自身がやらなくて教官としても不自然になってきます。
もっとも『トップガン』の教官である「マイク・"ヴァイパー"・メットカーフ」を演じたトム・スケリットは、当時55歳であったことを観れば、まあこの辺が教官"マーベリック"の限界と感じ続編の制作に踏み切ったのかとも推察します。
そういえば、この映画『トップガン』の裏話として、アメリカ海軍の協力を得て撮られた迫力ある飛行シーンに比べ、細かいところで撮影スタッフと軍事アドバイザーとの軋轢の弊害で、加速時にスロットルを閉じたり、着陸時にスロットルを開けたりといった珍シーンがあったりしました。
結果の大ヒットは、些細な考証より、面白さが勝ったことの証明とはいえ、マニアからすれば許しがたいところかも知れませんが、知らぬが仏、ということもあり、単純にストーリーを追いかけた方が素直に映画を楽しめることになりますね。
では、当時の若者が熱狂し、世界的にヒットした『トップガン』とはどのような映画だったのでしょう。
F14トムキャットのパイロット、マーベリック(トム・クルーズ)と、レーダー索敵員のグース(アンソニー・エドワーズ)は、戦闘チームの僚機のビル・"クーガー"・コーテル(ジョン・ストックウェル)の敵機との遭遇時のパニックによる戦線離脱によって、思いがけなくもミラマー海軍航空基地のエリート航空戦訓練学校(通称:トップガン)に送られて、航空戦技の神髄であるACM(空中戦闘機動)すなわちドッグファイトの戦技を磨くために教育を受けることになりました。
さて、この映画、劇中ではアヴィエイターや教官を氏名ではなくコールサインで呼んでいます。トム・クルーズの演じるピート・ミッチェルのコールサイン「マーベリック(Maverick)」は焼印の押されていない仔牛を由来とし、組織に属さない異端児を暗示しています。また、ヴァル・キルマーが演じるトム・カザンスキーのコールサイン「アイスマン(Iceman)」は慌てず焦らず、相手のミスを待つキャラクターを暗示しています。
この二人、マーベリックとアイスマンの好対照のライバルとマーベリックの親友グースにその妻キャロル・ブラッドショウ(メグ・ライアン)そして、マーベリックの恋人となる民間人専門技術(宇宙航空物理学)教官シャーロット・"チャーリー"・ブラックウッド(ケリー・マクギリス)、さらには、飛行教官のマイク・"ヴァイパー"・メットカーフ(トム・スケリット)は謎の死を遂げたマーベリックの父親の友人であったとなれば役者はそろいました。
ライバルの存在、親友の事故死、教官との恋愛、真実を知る父親の友人、これだけ揃えばストーリーはできあがります。トップを争うライバルがいて、教官と恋仲になり、不慮の事故で親友を失い、その妻の失意を見て、スランプに落ち込み、父の親友であった教官より真実を聞かされて励まされ、ライバルの危機を救ってわだかまりを解消しました。
このストーリーをロックをバックにテンポよく展開し、トムキャットのドッグファイトが加わると、当時の若者の心を鷲づかみにしたのも当然ですね。