映画『ジュラシック・パーク』単なる「テーマパーク映画」ではない、恐竜スペクタクル映画の傑作です!!
この映画『ジュラシック・パーク(Jurassic Park)』は、1990年に出版されたマイケル・クライトンによる小説を原作として、スティーヴン・スピルバーグ監督により1993年に映画化され、米国をはじめ世界各国で大ヒットしました。
目次
1.紹介
当時としては、格段に進歩したコンピューター技術を使い再現され、恐竜達の映像が実に見事な、アクション・アドベンチャーの超大作となりました。
遺伝子工学、カオス理論などの専門用語が飛び交い、難解な会話に戸惑いもありますが、恐竜再生のメカニズムを、わざわざアニメで解説してくれるシーンなども取り入れ、出来る限り解り易く解説しようとする配慮も見られます。
子供から大人まで、あらゆる人々が楽しめるように趣向を凝らすスピルバーグの演出は、見事としか言いようがありません。専門家の目で見ると、矛盾点なども多々あるようだが、それらを度外視して、十分に楽しむことが出来る映画です。
2.ストーリー
1)プロローグ
考古学者アラン・グラント博士(サム・ニール)とエリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)の元に、世界的なセレブであるジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)が訪ねて来ます。
無人島に、あるテーマパークを建設したがオープン前に是非体験してほしい、協力してくれるのなら研究費を出すという条件でアランとエリーに頼み、二人はそのテーマパークに行くことにしました。
2)ジュラシック・パーク
テーマパークに到着し、広大な草原をジープで走っていると、なんとそこには巨大な恐竜ブラキオサウルスがゆっくり地響きをたてて歩いているではありませんか。
アランとエリーはどうやって恐竜を蘇らせたのかパニックになってジョンに詰め寄りますが、ジョンは得意げに「後でお見せするよ」と言うばかりです。
テーマパークである、ジュラシックパークの中心部の操作室に到着すると、そこには、恐竜の卵やバイオテクノロジーによってクローンを作る研究室がありました。今までに見た事のない技術に感動しながらも、神の領域だとアラン達は批判します。
外に出るとそこにはジョンの二人の孫と世界的な数学者マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)がすでに体験ツアーの準備を整えていました。テーマパーク内を走る電気自動車も用意されて、いよいよツアーが始まります。
3)危険な体験ツアー
電気自動車には、孫達とアラン、エリーとマルコム博士がそれぞれに乗り込み2台で出発しました。極力自然な形で恐竜を展示しているために恐竜の出現は恐竜の気分次第になります。恐竜が目の前に現れる事なくツアーは進んでいきます。
車内で恐竜の説明をしているレコーダーと恐竜が合わず、子供達は退屈しだします。天気も悪くなって、ますますこんな退屈なジュラシックパークの建設は失敗だったとマルコム博士が結論付けたその時、目の前に巨大で凶暴なティラノサウルスが檻を破って現れました。
エンジニアの一人が故意に電気設備をシャットダウンさせて、ジュラシックパークを機能させなくしたためでした。子供達はパニックになって大声で叫びだします。ティラノサウルスは、子供達が乗っている自動車に襲いかかって、車は一瞬でつぶされてしまいます。アランはわずかな隙間から車を脱出して、ティラノサウルスを自分の方へおびき寄せますが、うまくいきません。マルコム博士は協力しようと走り出した瞬間、ティラノサウルスの巨大な口で襲われてしまいます。
4)凶暴な恐竜
何とかティラノサウルスから逃れたアランと子供達は、操作室に戻ろうと鬱蒼とした森の中を歩いて戻ろうとしました。
一方エリーは、けがをしたマルコム博士と何とか車で操作室に戻り、電気設備を戻そうと対策を練ります。やはり恐竜たちが自由に動き回る森の中を進まなければならないということが分かって、エリーが行くことになりました。
森の中では圧倒的に恐竜たちが優位です。さらに危険な恐竜はティラノサウルスだけではありません。それは知能が高いハンター、ヴェロキラプトルも森の中に放たれてしまっていました。
エリーは何とか地図を見ながらも電気設備を回復させに向かいますが、何度も恐竜に襲われてしまいます。命からがら電気設備を手動で回復させることに成功しましたが、ティラノサウルスは自由のままです。
森の中を歩いていたアランと子供達も生命の素晴らしさを感じつつ、恐竜の恐怖におびえながら何とかジョンが待機している施設に戻ることが出来ました。
5)間一髪の脱出
操作室に全員が避難出来ましたが、エンジニアがわざと電気設備を破壊したため、プログラムを起動しなおさなければならないことがわかりました。しかしジュラシックパークに残っているのはプログラミングに詳しくない者ばかり。マルコム博士も怪我の為に動くことが出来ません。
パニックになっているところへ、あのヴェロキラプトルが襲いかかってきます。頭のいいラプトルは自分でドアを開けて施設内に入ってきたのです。施設内には何頭ものラプトルが侵入し、アラン達を襲います。逃げても逃げても足の速さでは適うはずがなく、アラン達は追い詰められてしまいます。
ラプトルが上体をかがめ襲いかかろうとした瞬間、あのティラノサウルスが施設の壁を破ってきて勢いよくラプトルを襲いました。仲間のラプトルがティラノサウルスに襲いかかり両者で争っているすきを見て、間一髪でアラン達は島を抜け出し助かることが出来ました。
6)エピローグ
グラントは、ハモンドにパークの承認は出来ないと伝え、彼もそれを了承するものの、自らの夢が果たせなかったことで呆然とするのでした。
しかし、グラントとサトラーには、つかの間の出来事でも、憧れの恐竜達と接することの出来た満足感がありました。
こうして、ジュラシックパークは、恐竜達の襲撃によってオープンすることなく幕を閉じました。
3.四方山話
1)制作
スピルバーグはもともとクライトンの『5人のカルテ』を監督するつもりでしたが、他の企画の有無をクライトンに訊ねたところ提示されたのが本作でした。スピルバーグはこれに惚れこみ、クライトンはスピルバーグが監督することを条件に映画化権の譲渡を承諾しました。
2)大ヒット
北米だけでも、約3億5700万ドルの興行収入を記録し、全世界では約9億1500万ドルのメガ・ヒットとなり、『E.T.』(1982年)の興収記録を抜いて当時の世界歴代興行収入1位を記録して、『タイタニック』(1997年)に抜かれるまで記録を保持しました。スピルバーグの映画史上最大のヒット作です。
3)実現の可能性
現実では、2012年のマードック大学の研究によって、DNAの半減期が521年で、DNAの復元に必要な長さのDNA断片が残るのは約100万年前までと推定され、恐竜の絶滅から約6500万年が経過した現代では、生息当時のDNAを用いた恐竜の再生は実現不可能であると判明しました。
4)アニマトロニクス
大部分の恐竜のシーンはアニマトロニクス(生物を模したロボットを使って撮影する技術)を使用して製作されており、特にスピルバーグがこだわったのが原寸大のティラノサウルス・レックスのアニマトロニクスでした。
担当したスタン・ウィンストンは航空シミュレーターの専門会社の協力を得て油圧駆動システムを製作し、高さ6m・重量6トンのまさに恐竜級のアニマトロニクスを完成させましたが、そのパワーと重量では動作時の反作用でスタジオの床を破壊してしまうため、深さ1.8mのコンクリート床を持つ水中撮影用ステージにボルトで固定し、その周囲にセットを組んで撮影するというスター級の扱いが取られる事になりました。
さらに雨中のシーンでは表皮に使われたフォームラバーが水を吸って重くなり、重量過多で油圧システムの故障が頻繁、スタッフは連夜修理と乾燥に追われる事になりました。
幾多の困難がありながら、キャストと恐竜が絡むシーンにおいてアニマトロニクスは絶大なリアリティ効果を発揮し、後のSF映画に革命的な進歩をもたらしました。CGが更に進歩した続編2作においても使用されています。
5)ピンチヒッター
スピルバーグはハワイとユニバーサル・スタジオでの実写部分の撮影終了後ポーランドに飛び次作『シンドラーのリスト』の撮影を開始したため、盟友ジョージ・ルーカスが視覚効果、音響効果、編集などのポストプロダクションを統括しました。
パラサウロロフスの水場としてルーカスの制作拠点スカイウォーカー・ランチに実在する池が映ります。なおルーカスは本作のCGを見て、映像技術的な限界を理由に延期していたスター・ウォーズ新三部作の製作に取りかかる事となりました。
4.まとめ
恐竜パニック映画の金字塔、『ジュラシック・パーク』シリーズの記念すべき第1作は、子供からお年寄りまで楽しめる娯楽映画としては、完璧な作品ででしょう。
今回、見返して気づいたのは、本作では銃を恐竜に向けて発砲するシーンが一つもないということでした。とにかく、制作陣が心から恐竜と映画を愛しているのが伝わってきます。