凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『大脱出』老優二人の新脱獄アクションムービーです!!

ちょっとお歳を召されましたが、この二人、紛れもないアクション映画の大看板に違いはありません。公開時、シルベスター・スタローン67歳、アーノルド・シュワルツェネッガー66歳のコンビです。

 

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かつて、女囚もの含む刑務所映画はアクション映画の定番として、高い人気がありました。一癖も二癖もある超個性的な囚人たちが一致団結、もしくは孤軍奮闘で、理不尽な支配や虐待に立ち向かう構図は、暗い時代の労働者たちや虐げられた者たちの溜飲を下げる働きがありました。

 

大脱走』『パピヨン』『アルカトラズからの脱出』『ショーシャンクの空に』と枚挙にいとまがありません。しかしながら、アイデアのバリエーションの出尽くした後は、観客の間にそうした荒唐無稽を受け入れる余地は年々せばまり、今ではすっかり時代遅れとなっています。

 

そこでこの映画、監獄に自ら収監されるように仕込み、脱獄してその刑務所の欠点・弱点を指摘しコンサルティングを生業とするという設定が新しく、また、それだけで終わらずに、その設定を裏切るものがいて、主人公レイ・ブレスリンシルヴェスター・スタローン)は窮地に陥れられます。

 

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さらには、共同経営者のレスター・クラーク(ヴィンセント・ドノフリオ)の裏切りや、エミル・ロットマイヤー(アーノルド・シュワルツェネッガー)この信義に篤いのだけれど腹の読めない男の謎が立派にミステリーとなって物語を最後まで牽引していきます。

 

加えて、当初いがみ合っていたムスリムの囚人ジャベド(ファラン・タヒール)が脱獄計画に加わり、脱獄の途中で銃撃を受け、自己犠牲で追手を阻止したムスリムの侠気に胸を熱くさせられます。


80年代を代表する大スター二人のこの初のダブル主演作は、概要は古色蒼然とした刑務所脱獄ムービーではありますが、異常性格のサディスト刑務所長ホブス(ジム・カヴィーゼル)、突拍子もない脱獄防止策といった仕掛けもアナクロそのもので、かえって新鮮に見えるほどです。

 

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なんといっても刑務所の運営を民間軍事会社にしたアイデアが秀逸で、軍隊のアウトソーシングなどと揶揄された民間軍事会社から国際金融資本まで、最近流行りの大悪党をすべてまとめてディスっているところなど、シュワちゃんとスタローンの最強タッグふさわしい痛快作となりました。

 

このいままでやり尽くした脱獄劇を、最新のシステムと旧態依然のシステムとの混在は中途半端になっていますが、ところがこのようなちょっとした工夫によって、この作品は社会風刺の効いた見応えある作品となっています。

 

そのしっかりとした主張が背骨となって、荒唐無稽な設定もすんなりなじんでいて、マッチョでノーテンキなイメージのロートルスター競演作ですが、意外や意外、大人の鑑賞に耐える一本となりました。

 

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私見ですが、過去の「監獄もの映画」の名作といわれるものに殿堂があるとしたら、これを入れても良いのではと言っても言い過ぎではないくらいクオリティの高い作品ではあります。