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映画『ジャッカルの日』と『ジャッカル』とは?!

フレデリック・フォーサイスによって1971年に出版された「ジャッカルの日」は、『ジャッカルの日』(1973年)という名作サスペンス映画を生み、リメイク版『ジャッカル』(1997年)を派生させました。

しかしながら、『ジャッカル』は『ジャッカルの日』の脚本家ケネス・ロスによる初期稿に基づいた脚色であり、フォーサイスの原作とは無関係でステージもアメリカで、時代背景も異なっています。 

            フレデリック・フォーサイス

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目次

 

 

 1.『ジャッカルの日

1973年にユニヴァーサル映画製作、フレッド・ジンネマン監督、エドワード・フォックス主演で映画化されました。パリおよびヨーロッパ各地でロケ撮影が行われ、ドキュメンタリータッチの演出により、原作の雰囲気を忠実に再現しています。

パリ警察の地道な捜査や、暗殺に向けて用意周到に行われる準備を細部までリアルで克明に描いた社会派サスペンスの一級品です。クライマックスのドゴール暗殺場面は、実際に起こらなかった事が判っているにもかかわらず凄い緊迫感で迫ってきます。

長身で物静かな容貌のフォックスが、ハードボイルドタッチの寡黙で鋭い眼差しの殺し屋「ジャッカル」を、また英仏のハーフでもあるロンズデールによる、一見凡庸なルベル警視が、老練に粘り強くジャッカルを追い詰めてゆくのをそれぞれ好演しています。この映画は、フォックスの出世作ともなりました。

 

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あらすじ

1963年、ド・ゴール大統領暗殺を企てたバスティアン=ティリー中佐(ジャン・ソレル)の処刑の報を聞いた秘密軍事組織(OAS)幹部たちの一部は、オーストリアの潜伏先で、もはや組織は壊滅状態となって、内部の動きは全て密告によって察知されてしまうことから、組織外からプロの暗殺者を雇うことを決め、最適の人物として「ジャッカル」のコードネームで呼ばれる男(エドワード・フォックス)が選ばれました。

ジャッカルは高額の報酬を要求します。そのため、OASが組織を挙げてフランス各地で銀行などを襲い資金を集めます。一方、ジャッカルはパリのいくつかの候補地から決行地点を選び、ヨーロッパ中を移動しながら必要な特注の狙撃銃、偽造の身分、偽パスポート、衣装や小道具、入出国経路などを抜かりなく用意します。

OASの銀行連続襲撃や、ローマに移動し籠城して動きを全く見せないOAS幹部たちに不審な気配を感じたフランス警察幹部は、内務大臣をはじめとするフランス各治安組織の官僚のトップ達が対策会議を開いて、捜査は、実績豊富な老刑事であるパリ地域圏司法警察局のクロード・ルベル警視(マイケル・ロンズデール)に一任することになりました。

ルベル警視は、ジャッカルの正体を洗うべく世界中の警察に問い合わせを行い、どうやらあるイギリス人らしいことが分かってきました。ルベル警視はフランス全土の警察を指揮し不審者の入国を阻止しようとしますが、ジャッカルは、分解した銃をイタリアで調達したレンタカーのアルファロメオの床下シャーシの隙間に隠し、偽造パスポートで南仏から侵入したあとでした。

 

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大規模捜査の甲斐無くジャッカルはパリのオステルリッツ駅に降り立ち、再び容姿を変えて潜伏します。パリでは全国の警察力とユニオン・コルスまで総動員し、裏町の隅から隅まで徹底したローラー作戦を行い、平行して人相を公表しての公開捜査に踏み切りますが、なおもジャッカルは見つかりません。

ド・ゴール大統領は、暗殺の危険を訴える側近の声に耳を貸さず、例年通りパリ市内で行われるある式典に出発しました。ジャッカルとルベル警視の対決は、ド・ゴールが姿を現すその時間、その場所にまでもつれこみます。

市内各所で行われる8月25日のパリ解放記念式典で、ジャッカルは老いた片足の傷痍軍人を装い、アパートに帰宅すると偽って警官の目を欺いて非常線を通り抜け、かねてから目に着けていた、式典会場のひとつであるモンパルナス駅前の1940年6月18日広場を見渡せるアパートに侵入し狙撃の場を確保しました。

 

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ジャッカルは松葉杖に仕込んだ狙撃銃を組み立て、大統領を暗殺すべく狙撃を行いますが、勲章の授与のために屈んだ瞬間であった為に、弾丸はド・ゴールの頭に命中する事無く路上に逸れてしまいました。イギリス人らしいジャッカルは、パブリックな式典の場で口付けの挨拶をするフランスの習慣に馴染みが無かったのでしょう。

傷痍軍人が非常線を通ってアパートに入ったことを警邏の警官から聞きつけたルベル警視は、彼こそジャッカルだと踏み最上階の部屋に突入しました。同行した警官が飛び込んでジャッカルに撃たれて倒れますが、咄嗟に警官のサブマシンガンを取ったルベル警視は銃弾の装填を試みるジャッカルを撃ち、暗殺の実行を阻止する事に成功しました。

この狙撃犯が「ジャッカル」と目された、イギリス人であることは政治的判断から公には伏され、本性や経歴は謎のままとなりました。ルベル警視は遺体がパリ市内の墓地に埋葬されるのを見届け、墓地を後にしました。


2.『ジャッカル』

ジャッカルの日』は、後に『ジャッカル』(1997)としてマイケル・ケイトン=ジョーンズ監督、リチャード・ギアブルース・ウィリス主演でリメイクされました。なるほど、大筋をなぞってはいるものの、シチュエーション、ステージ、キャスティング、エンディングほか、似て非なるものとして、ほとんど別の作品であって、商業主義の臭いがプンプンする単なるアクション映画になってしまっています。

元々の『ジャッカルの日』がかなり原作を忠実に再現したものだっただけに、リメイクを名乗るは少しばかり無理があったかと言わざるを得ません。

当初は、同名タイトルの『The Day Of The Jackal』としてスタートしたものの、前作監督のフレッド・ジンネマンにも原作者フレデリック・フォーサイスにもクレームを付けられて、タイトルを『ジャッカル(The Jackal)』に変更せざるを得なくなったようです。

 

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あらすじ

1997年のモスクワで、ロシア内務省(MVD)とアメリカ連邦捜査局(FBI)の合同捜査チームは、MVDのセマンコ少佐殺害容疑で、チェチェン・マフィアのメンバーであるガッツィー・ムラド(ラビル・イスヤノフ)を逮捕するためバーに突入しました。ガッツィーは隙を見てナイフで反撃しましたが、MVDのヴァレンチーナ・コスロヴァ少佐(ダイアン・ヴェノーラ)が応戦し、格闘の末ガッツィーを射殺しました。

兄であるマフィアのボス、テレク・ムラド(デヴィッド・ヘイマン)は弟が射殺されたことに激高し、MVDとFBIに報復を決意して凄腕の殺し屋「ジャッカル」に7,000万ドルという高額の報酬で、アメリカの要人暗殺を依頼します。

ジャッカル(ブルース・ウィリス)はどこにいるかも不明で、KGBによれば、その顔を見たことのある者はわずか6名しかいないと言います。その内の1人で、元バスク独立活動家イザベラ・ザンコーナ(マチルダ・メイ)がアメリカ国内にいるらしいことと、イザベラの居所を知るIRAのスナイパー、デクラン・マルクィーン(リチャード・ギア)がマサチューセッツの刑務所に収監されていることがわかます

カーター・プレストンFBI副長官(シドニー・ポワチエ)とコスロヴァ少佐は、刑務所を訪れデクランに協力を求めます。デクランは自身の釈放とイザベラの保護を条件にこれを受諾しますが、実はデクランはジャッカルに個人的な恨みがあり、その復讐のためでもありました。

 

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シカゴで開催される医療センターの開設式典にFBI長官が出席することを把握していたジャッカルは、用意した武器と共にミシガン湖からシカゴへ上陸を果たします。デクランとコスロヴァ少佐は上陸間もないジャッカルと鉢合わせし激しい銃撃戦となりましたが、取り逃がしてしまいます。その際、過去の因縁の相手であるデクランを見たジャッカルが、すこしも動揺していなかったことに気づいたデクランは、FBIに内通者がいるのでは、と疑い始めました。

プレストンが、デクランの主張を聞き入れ、チームメンバーの電話を盗聴したところ、メンバーの1人、MVDのボリトノフ大佐が、長官のスケジュールをジャッカルに漏らしていたことが判明します。

さらに、大佐のメモからイザベラの情報も漏れていたことが発覚し、イザベラは家族と共に間一髪で保護されていましたが、留守宅に張り込んでいたコスロヴァ少佐、以下2名の捜査官は即座に殺害されてしまいます。

ジャッカルは「貴様は女も守れない、とデクランに伝えろ。」と挑発する伝言をコスロヴァ少佐に残して去って行きました。駆け付けたデクランに、痛みに耐えながら伝言を伝えたコスロヴァ少佐は、静かに息を引き取ったのでした。

デクランは、コスロヴァ少佐の死の間際の「女も守れない」の言葉から、実は標的は、式典に同席する大統領夫人であると気づき、ヘリコプターで医療センターへ急行します。デクランはビルの屋上からジャッカルの行方を探すため、大統領夫人の守りをプレストンに託します。

ジャッカルは警備に当たっていた警察官になりすまし、機関銃を遠隔操作して夫人の暗殺を企てていましたが、道路に不審なバンが停まっており、その中に夫人を狙う重火器が設置されていることに気づいたデクランは、すんでの所で機関砲のスコープを狙撃して破壊しました。その銃声に気づいたジャッカルが遠隔操作による射撃を開始する直前、プレストンは大統領夫人を助けることに成功しました。

ジャッカルはすぐさま警察官の変装を解き、逃げ惑う群衆に紛れて地下鉄に乗車し脱出を試みますが、デクランも携帯電話で応援を呼びながら、すぐさま追跡を開始します。

 

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追いついたデクランは少女が人質になっていることを知ると「銃を捨てろ」と要求するジャッカルにやむなく従います。銃口がデクランに向けられたその時、ジャッカルの背後から突然現れたイザベラが銃を撃ちデクランを救うとともに遺恨を晴らしたのでした。デクランが追跡の途中で携帯電話で呼び出していたのはイザベラなのでした。

 

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事件は無事終結しましたが、デクランの釈放は認められず、プレストンはデクランに刑務所への収監を伝えます。しかし、捜査に協力したデクランへの見返りとして、それとなくデクランに逃走をそそのかします。プレストンがゆっくりとコーヒースタンドに歩き始めるのを見て、デクランも新しい人生のために、ゆっくりと歩き出しました。

3.まとめ

『ジャッカル』は、ブルース・ウィリスリチャード・ギアと云う大看板2人と、名優シドニー・ポワチエを配して万全を期したのですが、警察よりイザベラが先に現場に到着したり、FBIの副長官がテロリストを逃すというあり得ないラスト等々、突っ込みどころ満載で、ストーリーに不具合が随所にみられます。受け狙いでリメイクしても抑えどころを間違うと原作まで傷つけてしまいます。

一方、『ジャッカルの日』は、ほとんど無名のエドワード・フォックスに名脇役マイケル・ロンズデールを付けて、原作に忠実に映画化して成功し、40年以上も前の映画にも拘らずいまだに名作と言われ支持されています。今となっては、セミクラッシクカーのシトロエンプジョーアルファロメオが走っていて嬉しい限りです。