映画『誰が為に鐘は鳴る』戦火のラブロマンスを稀代の美男・美女が演じています。!!
この映画『誰が為に鐘は鳴る(For Whom the Bell Tolls)』は、アーネスト・ヘミングウェイの小説『誰がために鐘は鳴る』(1940年)を原作とした1943年製作のアメリカ映画です。
目次
1.紹介
スペイン内戦を経て第二次大戦の真っ只中だった時期に製作されました。この時代、その時代背景を考えると、更に重みを感じる格調高き名作となっています。
内戦の混乱や、荒々しいゲリラ達の人間描写、そしてその逞しい生活環境などの生々しさも然る事ながら、監督のサム・ウッドは、主演のゲイリー・クーパーとイングリッド・バーグマンの二人のロマンスに重点を置いた、メロドラマ的な作品に仕上げています。
2.ストーリー
1)プロローグ
1937年のスペインでは、内乱が続く中、人民戦線に身を投じていたアメリカ人大学講師で、義勇兵のロバート”ロベルト”ジョーダン(ゲーリー・クーパー)は、フランシス・フランコ率いる右派の反乱軍に対するゲリラ活動を続けていました。
ロベルトは、敵の唯一の援軍ルートとなっている渓谷に架かる鉄橋の爆破という新たな任務を命ぜられました。
2)ゲリラとの接触
4日後の未明の爆破実行に向けて、ロベルトは、ゲリラの一員アンセルモ(ウラジミル・ソコロフ)を案内役にし現地に向かいます。
鉄橋を観察したロベルトとアンセルモは、現地のゲリラのリーダー、パブロ(エイキム・タミロフ)と接触します。
その後、ロベルトは、反乱軍に捕らえられ辱めを受けた後、パブロに助けられた娘マリア(イングリッド・バーグマン)と出会い、彼女に惹かれてしまいました。
パブロの妻ピラー(カティーナ・パクシヌー)にも会ったロベルトは、気の強い彼女と本音の話が出来て満足するのでした。
しかし、ロベルトの手相を見たピラーは表情を曇らせ、彼はそれを気にしました。
3)困難な任務
かつては戦士だったはずのパブロが、橋の爆破に反対する落ちぶれた姿を見て、ピラーは自分がその場を仕切ると言い切り、彼のプライドを完全に打ち砕きました。
マリアはパブロが危険な男だと言い、アンセルモは彼を殺すべきだとロベルトに助言します。
翌日、アジトに戻った仲間の情報から、人民戦線が橋の爆撃を計画し、ゲリラの掃討作戦も行われるという噂話が流れていると聞かせられました。
ロベルトは、惹かれ合うようになっていたマリアと、ピラーを伴い他のゲリラ部隊のエルソルド(ジョゼフ・カレイア)に会い、馬の調達を依頼します。
その帰り道、先を行ったピラーを追わずに、ロベルトは両親を反乱軍に殺されたマリアの辛い過去を聞きながら、彼女を固く抱きしめるのでした。
4)経ちこめてきた暗雲
アジトに戻ったロベルト達でしたが、季節外れの雪が降り始め、彼らはエルソルドの馬の移送を心配します。
パブロは、自分が指摘していた通りになったため、馬の足跡が雪に残ることを気にするロベルトらを嘲り笑います。
ロベルトは、マリアを侮辱するパブロに言い寄り、仲間達も酔って戯言を言う彼を挑発しました。それを無視したパブロは、仲間達に追い払われてしまいます。
仲間達の中には、パブロを殺せという意見も出ますが、道に詳しい彼を生かした方が得だという者もいました。
ピラーは、一旦決めた殺すという意見をに賛成しながらも、かつてのパブロの勇姿を思い起こし、それを仲間達に話します。
その時、パブロが戻り雪が止んだことを知らせ、橋の爆破にも賛成し、気を取り直して仲間達と行動を共にすることになりました。
5)救えなかった仲間
翌朝、見張りについていたロベルトは、偵察隊の兵士に見つかったために彼を殺します。その後、馬を連れたエルソルドらが現れますが、彼らは偵察隊の攻撃を受けてしまいます。
エルソルドを助けようとする仲間達を、橋の爆破が優先だと言ってピラーが制止しました。
自分達が自殺したように見せかけたエルソルド達は、迫ってきた指揮官を射殺しますが、空からの爆撃を受けて全滅しました。
アジトに戻ったパブロは、エルソルドの死をロベルトらに伝え、軍隊が橋を渡っていることも確認しました。
ピラーは、軍が人民戦線の動きを察知し、攻撃の準備をしているのだろうと考え、ロベルトは、それを人民戦線の司令官に知らせるために伝令を出しますが、その時、パブロが姿を消してしまいます。
6)覚悟の前に
運命の時が近づき、別れを覚悟したマリアは、両親が殺された後に受けたことをロベルトに話し、自分が汚れた女だということを告白しました。
そんなマリアに優しく接し、愛を確かめ合ったロベルトでしたが、消えたパブロがダイナマイトの起爆装置を燃やしてしまったことが分かります。
ロベルトは、何とか爆破させる方法を考えようとしますが、そこにパブロが仲間を三人連れて戻ってきました。
パブロは起爆装置のことは魔が差したと謝罪し、エルソルドらが殺されたのを見て怖気づいて、逃げてしまったと言いました。
その後ピラーは、頑なに言わなかったロベルトの手相がマリアとうまくいくという予感だったことを彼に知らせます。
7)橋の爆破
ロベルトは、必ず戻るとマリアに言い、アンセルモと共に橋に向かいました。パブロは、連れて来た三人と警備隊の監視所に接近します。
その時、夜が明けて、ロベルトの伝令の手紙の内容が司令官に知らされますが、既に攻撃機は飛び立ってしまいました。
ピラーやパブロの攻撃は始まり、ロベルトは橋に爆薬を仕掛け、マリアは彼の無事を神に祈ります。
戦車が橋に接近し、ロベルトは橋の爆破に成功するのですが、アンセルモが犠牲になりました。ロベルトはなんとかマリアの元に戻ります。
8)脱出と別れ
馬の数が足りないことを知っていたパブロは、連れてきた三人の仲間を射殺してしまいました。それを知りながらも、ロベルトらはパブロの道案内で敵前を突破しようとしました。
砲弾により落馬したロベルトは骨折してしまい、彼は仲間達を逃がすために、マリアをピラーに託し、その場に残る決心をするのでした。
ロベルトは、泣きじゃくるマリアに勇気を与え、別れではないと言い、彼女を避難させました。
9)エピローグ
意識を失いかけたロベルトは、マリアのことを想いながら、警備隊に向けて機関銃を乱射し始めました。
3.四方山話
1)サム・ウッド監督
サム・ウッドは、1919年から映画監督として活動を開始しています。1920年代を通してパラマウント・ピクチャーズの看板スターであるグロリア・スワンソンやウォーレス・リードが出演する映画を多く手掛けています。
1927年にはメトロ・ゴールドウィン・メイヤーとの提携を開始してマリオン・デイヴィス、クラーク・ゲーブル、マリー・ドレスラー、ジミー・デュランテらの出演する映画も手掛けるようになりました。
同じシーンを平均20回程度、繰り返し撮影するのが彼の習慣でした。トーキーの時代に突入してからも、その手腕は高く評価され続けています。
アカデミー監督賞に3回ノミネートされましたが、いずれも受賞は出来ませんでした。
2)イングリッド・バーグマン
バーグマンは、本作の小説『誰がために鐘は鳴る』を読んでマリア役を強く熱望し、伸ばしていた自慢の髪を切って、原作者のアーネスト・ヘミングウェイの自宅に押しかけ同然で自分を売り込んだそうです。
3)アーネスト・ヘミングウェイ
新聞記者、特派員として活躍した若き日のヘミングウェイはパリで小説を書き始めます。1930年代には人民戦線(Frente Popular)を助けるべくスペイン内戦に参加し、その経験をもとに長編小説を書き上げました。
その内の1つが本作の原作である『誰がために鐘は鳴る』です。
ちなみに、小説は『誰がために鐘は鳴る』で、映画の邦題では「為」という漢字が使用されています。
4.まとめ
たった4日間の出来事です。アメリカ人の青年、反政府ゲリラ、両親を失った娘。戦争がなければ知り合うこともなかったであろう人々は家族のように共に生き、憎み、愛し、死んでゆきました。