映画『トランスポーター イグニション』大人気シリーズ4作目のリブート版です!!
目次
1.紹介
制作・脚本はリュック・ベッソン。監督は、ベッソン製作の『コロンビアーナ』(2011年)『96時間 リベンジ』(2012年)などで編集を担当し、『フルスロットル』(2014年)ではメガホンをとったカミーユ・ドゥラマーレです。
シリーズには欠かせないはずの、主人公を演ずるジェイソン・ステイサムが降板したために注目を集めました。
期待よりも失望が勝った感じのする主人公を演ずるエド・スクラインなのですが、誰も真似のできない、あの独特の雰囲気で世界的スターとなった、ジェイソン・ステイサムと比較するのは酷な話です。
「独自のルールにこだわるプロの運び屋」という特徴と車だけが共通と考えて、前3作を意識せずに鑑賞すればまずまず楽しめる作品といえます。
前作までの前日談で、”フランク・マーティン”の若かりし頃を描いていて、その若い分ちょい悪オヤジが薬味を加えていると思えば納得がいく、といったところでしょうか。
2.ストーリー
1)プロローグ
1995年、コート・ダジュールの歓楽街で、ロシア系マフィアのアルカディ・カラゾフ(ラシャ・ブコヴィッチ)が、力づくでこの地域の裏社会の支配権を奪い取りました。
まだ若いアンナ(ローン・シャバノル)は、カラゾフのもとで売春婦として働くことになり怯えていました。
15年後。カラゾフの組織は夜の街を牛耳り、権力と多額の資金を手に入れていました。アンナはある計画を実行に移すことにします。そのころ、VIPを相手に運び屋業をしているフランク・マーティン(エド・スクライン)は、定年退職した父フランク・シニア(レイ・スティーヴンソン)を迎えに領事館に来ていました。
2)契約違反
カラゾフのもとで働く売春婦・ジーナとキャオが、カラゾフの会計士を殺害し、フリーの売春婦と共に焼死させ姿を消しました。
売春婦の首にはカラゾフ直属の印であるペンダントをつけ、カラゾフの売春婦だと偽装しています。そのため、警察はカラゾフから事情聴取しますが、カラゾフは自分に恨みをもつものにはめられたのではと勘繰っていました。
フランクに女性から依頼が入りました。依頼人はアンナです。2つの荷物を運べと言われ向かった銀行前で、変装したアンナと、彼女と同じ格好をしたジーナ(ガブリエラ・ライト)とキャオ(ウェンシア・ユー)が乗り込んできました。
契約が違うと依頼を断ろうとするフランクでしたが、父親の拘束された動画を見せられて従うしかなくなってしまいます。フランクの父はアンナのもう1人の仲間、マリアに誘拐されていたのでした。フランクはやむなく車を発車させ、警察の追跡を振り切りました。
3)動き出した計画
アンナ、ジーナ、キャオは、直前に銀行強盗をしていました。カラゾフの会計士の妻のふりをして、カラゾフの組織の宝石や帳簿などを盗み取ったのです。
これを知ったカラゾフは配下の売春婦を集めますが、4人足りず、1人は死亡した売春婦だと考え、銀行強盗が3人組だったことから、カラゾフは残る3人が犯人だと断定しました。
アンナたちを隠れ家まで送りましたが、アンナはフランクの父を解放してくれません。それどころか父親に毒を盛ったと話し、フランクにさらなる協力を強いてきました。
フランクの父はこの状況にも動じず、美人に囲まれて楽しんでいるようです。特にジーナとはいい雰囲気になっていました。
4)イマソフの資金
計画の前準備として、フランクとアンナは病院で催眠ガスボンベを手に入れます。一方、マリアはパイロットを色仕掛けでだまし、買収した不良たちに誘拐させました。
まずアンナ、ジーナ、キャオとフランクは、カラゾフの幹部の1人レオ・イマソフ( レン・クドリアヴィツキ)の経営するクラブに忍び込みます。
フランクがスモーク用のガスボンベを催眠ガスボンベにすり替え、客もイマソフも眠ってしまいました。その隙に、アンナたちは盗んだ帳簿のパスワードを使って、イマソフの資金をアンナの口座に送金してしまいました。
5)ユーリ襲撃
一方、マリアは、代理パイロットに扮したフランクの父と共に、もう1人のカラゾフの幹部・ユーリ(ユーリー・コロコルニコフ)の乗る飛行機に乗り込んでいました。
マリアがユーリに薬を盛り、フランクの父は飛行機を走らせたまま副操縦士を気絶させます。しかしユーリの部下に異常事態に気づかれ、マリアが撃たれてしまいました。
マリアとフランクの父は間一髪でフランクの車に助けられ、ユーリは飛行機衝突前に目覚め、何とか飛行機を止めました。
6)カラゾフへの疑惑
フランクの父に盛ったという毒の話は嘘でした。嘘に憤るフランクをよそに、フランクの父はマリアの治療を成し遂げます。フランクの父にとって、アンナたちに協力することが正義につながると思われたのでした。
アンナの過去を知り一夜を共にしたフランクは、父親を連れて隠れ家から去りますが、父は彼女たちを見捨てたことでフランクを責めました。
一方、アンナたちに手ひどくやられたイマソフとユーリは、カラゾフが事件の背後にいるのではと疑っていました。主犯はカラゾフ配下の売春婦だし、運転手のフランクはカラゾフと以前仕事をしたことのある男だったからです。
カラゾフはすぐにこの事件に片をつけることを約束し、フランクの父を誘拐します。カラゾフはフランクに対し、父親と女3人を交換という条件をつきつけました。フランクは父が巻き込まれたのはアンナたちのせいだと、彼女たちに協力を要請します。
アンナたちはもしもの時を見越して、カラゾフに「犯人は(4人ではなく)3人組」と思わせるよう細工してきました。今回も、ジーナを別行動にさせ、アンナ、キャオ、マリアが「犯人グループ」としてフランクについていくことになりました。
7)復讐計画の全容
フランクがアンナたち3人をカラゾフの船に連れていきます。そこにカラゾフのふりをした何者かから呼ばれたというユーリとイマソフが合流しました。
イマソフはカラゾフの事を強く疑い、今すぐカラゾフの口座残高を見たいと言い出しました。仕方なくカラゾフは、タブレットで口座を確認します。
その頃、別行動をとっていたジーナは船底から船に忍び込んでいました。ジーナはカラゾフが暗証番号を入力したのをハッキングし、アンナの口座に移していたイマソフの金を、カラゾフの口座に送金します。
残高が増えているのを見たカラゾフは驚いて言い逃れをしますが、船内では銃撃戦が始まってしまいました。
ジーナはカラゾフの口座の金を、もういちどアンナの口座に送金しますが、それをカラゾフの女に見つかってしまいました。激しい攻防の末、ジーナは相手を絞め殺すが、彼女自身も大きな傷を負ってしまいました。
ジーナは駆け付けたフランクの父の腕の中で息絶え、キャオとマリアも、銃撃戦の犠牲となっていました。
カラゾフはアンナを連れてボートで逃走します。フランクもそれについていき、3人は岸辺にたどり着きました。フランクはカラゾフと戦いますが、劣勢に追い込まれます。
そこを救ったのは、アンナの撃った一発の銃弾でした。カラゾフが死に、アンナはフランクにも銃口を向けます。これで完全犯罪が成立するわけですが、しかし彼女にはフランクを撃つことはできませんでした。
アンナは死んだ仲間を思い、フランクを前に泣き崩れるのでした。
8)エピローグ
尋問され、事件に巻き込まれただけだと説明する父親は、帰っていいと言われ解放されました。警察署の前で待っていたフランクは、父親を乗せて家に戻るのでした。
1か月後。
どこかの豪邸で、亡き仲間の家族とフランクたち親子に分け前を送金するアンナの姿がありました。その顔は晴れやかなものでした。
3.四方山話
1)エド・スクライン
フランクを演じたエド・スクラインは、1983年3月29日生まれのイギリスの俳優、ラッパーです。『ミッドウェイ』 (2019年)では、ディック・ベスト大尉という重要な役に抜擢されています。
大ヒットシリーズの二代目ヒーローという難しい役を無難にこなした観もありますが、この先さらに発展する予感もあります。
2)レイ・スティーヴンソン
フランクの父親フランク・マーティンSr.を演じたレイ・スティーヴンソンは、1964年5月24日生まれのアイルランド系イギリス人の俳優です。北アイルランドのリスバーンで生まれ、後にイングランドへ移りました。父はイギリス空軍のパイロットで、母はアイルランド人です。
『ザ・ウォーカー』(2010年)では、カウンターヒーローのカーネギー(ゲイリー・オールドマン)の腹心レッドリッジを存在感たっぷりで演じていました。
シリーズのタルコニ警部に代わるキャラクターとしては補って余りあるキャスティングです。
3)ローン・シャバノル
ヒロインのアンナを演じた、ローン・シャバノルは、1982年生まれのフランスの女優、モデルです。ベトナムとドイツとイタリアとの混血です。
1982年、パリに生まれ、モデルとして『Elle』や『Marie Claire』などの雑誌にて表紙を飾りました。2010年、ニューヨークに渡り、リー・ストラスバーグの演劇学校にて演技を学び、ジョン・タトゥーロ監督の『ジゴロ・イン・ニューヨーク』(2013年)で映画初出演を果たしました。
つづくポール・ハギス監督の『サード・パーソン』(2013年)ではジェームズ・フランコと共演しています。
4.まとめ
トランスポーターはやはりジェイソンステイサムにアウディのイメージが重すぎて、シリーズの人気を引き継いだのはプラスでしょうが、その分、プレッシャーもきついものでしょう。
設定を継承していても、本作単品も普通に面白いんで、次作が成功すれば、ボンドシリーズのように主役が交代しても発展していけるかも知れません。