凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『あなたへ』名優二人の遺作です!!

 

この映画『あなたへ』は、降旗康男監督、高倉健主演で、2012年8月25日に公開されました。2014年11月10日に死去した高倉健最後の主演作品となっています。

 

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 高倉健にとって『単騎、千里を走る。』(2006年)以来6年ぶりの主演映画であり、205本目の出演映画であり、2012年に亡くなった大滝秀治の遺作でもあります。また、高倉健が監督の降旗康男と組んだ20作目にあたります。

目次

 

 

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1.プロローグ

2012年8月26日に、高倉健はこの映画のロケ地となった富山刑務所を表敬訪問しました。同刑務所の講堂で受刑者350名を前に「自分は、日本の俳優では1番多く、皆さんのようなユニフォームを着た俳優だと思います」とのユーモアを交えながらも「『あなたへ』は、人を思うことの大切さ、そして思うことは“切なさ”にもつながると思います」と声を詰まらせながら作品を説明し、「1日も早く、あなたにとって大切な人のところへ帰ってあげてください。心から祈っています」とのメッセージを伝えました。



2.あらすじ

富山刑務所に嘱託として勤務する木工指導技官倉島英二(高倉健)は、かつて刑務所に慰問に来ていた童謡歌手洋子(田中裕子)と結婚し15年をともに過ごしてきましたが、洋子は悪性リンパ腫で入院生活が続き、後部を改造したワゴン車で旅をしようという英二の計画も実現できないまま英二を残して死亡してしまいます。

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失意の英二の元を訪れたNPOの使者は「私の遺骨は故郷の海に撒いてください」とだけ記された洋子からの絵手紙を英二に手渡し、もう1通手紙を洋子の故郷の郵便局に局留めで送るように託かっていると告げました。洋子の最後の手紙を受け取れる期限は10日間。英二は洋子とともに旅するつもりだったワゴン車で洋子の故郷平戸の漁港薄香へと向かいました。

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途中、キャンピングカーで放浪する元中学の国語教師と名乗る杉野輝夫(ビートたけし)、イカめしの実演販売で全国を渡り歩く田宮裕司(草彅剛)とその部下の南原慎一佐藤浩市)らと実演販売の手伝いなどして寄り道をしましたが、期限ギリギリに薄香に着きました。

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英二は洋子の最後の手紙の見て戸惑います。漁協で散骨への協力を拒まれ、南原からもし薄香で船を手配できなかったらと紹介された大浦(大滝秀治)にも船を出すことを拒まれた英二は現地の人の温かい心情に助けられ妻の希望をかなえることができました。

 

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3.まとめ

妻との15年を振り返りながら生前には散骨の意思を伝えなかった妻の真意を探ろうとする英二の物語と、薄香で7年前嵐の日に船を出して帰らぬ人となった漁師の残された妻濱崎多恵子(余貴美子)と娘奈緒子(綾瀬はるか)の物語が被さる形で描かれています。

南原が大浦爺さんの船を英二に紹介し、多恵子は南原が英二に書き渡したメモを見て死んだはずの夫の存在を感じました。

英二から洋子の手紙を見せられた多恵子が洋子の思いを計っていった言葉が洋子の真意と読めるように見えますが、これはむしろ多恵子が自分の思いを託したものと考えてしまいます。

「夫婦だからと言って相手のことがぜ~んぶ解りはしません」

高倉健と田中裕子が演じる英二と洋子夫婦の物語と、佐藤浩市余貴美子演じる南原と多恵子夫婦の物語が、天秤に載っていて後者の方に傾いてきたような印象さえ受けてしまいました。

あまつさえ英二に刑務所のハトようだとまで言わせています。その辺が、ロードムービーの終着点としてはボケてしまったように思えます。


4.付録

2012年8月26日、日本映画専門チャンネル高倉健ロングインタビュー」で、大滝秀治について、

「最初、台本で『久しぶりに、きれいな海ば見た』って台詞を見たとき、『なんて、つまんねぇ台詞書きやがって…』って悪口ばっかり言ってたんですけど、台詞って言う人で変わるんだなぁ、って改めて思いましたよ。泣きましたから。泣くシーンじゃないのに。ドキっとしました。」

と共演シーンでの最後の台詞について振り返っています。名優は名優を知るですか。