映画『新・ガンヒルの決斗』復讐鬼でもグレゴリー・ペックです?!
この映画『新・ガンヒルの決斗(Shoot Out)』は1971年のアメリカ合衆国の映画です。1930年の小説『ローンカウボーイ』を原作とした、ヘンリー・ハサウェイ監督、主演はグレゴリー・ペックの西部劇です。
目次
1.紹介
主演のグレゴリー・ペックは、50代も半ばとなりやや老けた感じがするものの、受刑者ではあったが極悪人には見えない、包容力のある男を好演しています。
幼い子供を相手に銃で恐怖を与える悪党の行動などがかなり過激であり、復讐のターゲットである元相棒ではなく、主人公が彼らに制裁を加えるラストに向けて、かなり盛り上がってきます。
『勇気ある追跡』とほぼ同一のスタッフにより製作されており、主人公と子供の組み合わせ、風景のカメラワーク等抒情性が『勇気ある追跡』を彷彿とさせています。
2.ストーリー
1)プロローグ
銀行強盗で7年の刑期を終えたクレイ・ローマックス(グレゴリー・ペック)が出所してきます。
そのため、共に銀行を襲い背後から彼を撃ち裏切ったサム・フォーリー(ジェームズ・グレゴリー)は、ちんぴら悪党三銃士のボビー・ジェイ・ジョーンズ(ロバート・F・ライオンズ)を、クレイを殺したら報酬は払わないと堅く言い渡して、雇い見張らせることにしました。
2)ウィード・シティで
出所したクレイは汽車で到着し、旧友のトルーパー(ジェフ・コーリイ)の元に向かおうとして、かつて襲った銀行を見つめていました。
車椅子に乗るトルーパーに声をかけられ、彼の酒場に向かったクレイは、フォーリーの居場所を訊きました。
そこにボビー・ジェイとペペ(ペペ・セルナ)、スキーター(ジョン・チャンドラー)が現れ、酒場の女アルマ(スーザン・ティレル)に話しかけられます。
トルーパーをからかかったボビー・ジェイは、仲間達と共にアルマを連れて部屋に向かいました。
その後、馴染みの女だったエマと楽しんでいたクレイは、ボビー・ジェイらが騒ぐために、彼らを懲らしめます。
殴られたボビー・ジェイは憤慨しますが、フォーリーから手を出すなと言われていたために、怒りを抑えるのでした。
3)予期せぬ荷物
翌日、駅に届け物を取りに行ったクレイは、荷物ではなく、7歳の少女デッキー・オルテガ(ドーン・リン)が現れたために驚きました。
車掌(ポール・フィックス)から受け取り拒否ができると言われたクレイは、知人だったデッキーの母親が亡くなったことを知りました。
デッキーは汽車に戻るが、彼女を連れて降りることを車掌に伝えたクレイは、受け取るはずだった現金を渡されました。
クレイを尾行していたスキーターは、その様子を監視していました。
4)悪党三銃士の凶行
騒いで遊んだだけでアルマに金を払う気のないボビー・ジェイは、戻ったスキーターから、クレイが子供をさらったことを知らされます。
アルマをからかい金を奪ったボビー・ジェイは、トルーパーに銃を向けられたために彼を撃ち殺しました。
スキーターとペペにも銃撃させたボビー・ジェイは、店の金を奪いアルマを連れて逃げます。
騒ぎに気づいたエマに声をかけられた瀕死のトルーパーは、クレイに”ガンヒル”と伝えるようにと言い残して息絶えるのでした。
町に戻ったクレイは、エマから、ボビー・ジェイら三人組がトルーパーを殺し、アルマを連れて逃げたことを知らされます。
トルーパーが死ぬ間際に”ガンヒル”と言ったことも知ったクレイは、それがフォーリーの居場所だと考えるのでした。
5)珍道中
デッキーを預かってくれる者が見つからないクレイは、仕方なく彼女を連れて町を出ることになります。
クレイに川で体を洗ってもらったデッキーは、焚火で体を温めてくれた彼と母の話などをして、自分の父親か尋ねます。
母親をよく知っているとだけ伝えたクレイは、デッキーを連れてとある家に向かいました。
二人を監視するボビー・ジェイらは、クレイがガンヒルに向かおうとしないことを不思議に思います。
家に着いたクレイでしたが、そこは先住民に焼かれていました。
後を追うボビー・ジェイたちは、野営するクレイ監視しています。
クレイにホットケーキを焼いてもらったデッキーは、それを食べながら眠るのでした。
6)解った黒幕
焼けた家を調べたボビー・ジェイは、クレイらがいないことを確認し、ガンヒルに向かったと考ええました。
翌日、野生ののポニーを手に入れたクレイは、それをデッキーに与えようとするが、盗みだと言われたために母馬の元に帰します。
ある牧場でポニーを盗んだクレイは、母馬がいないので許すと言うデッキーを乗せました。
馬の持ち主ホーマー・ペイジ(アーサー・ハニカット)と交渉したクレイは、鞍付きで15ドルで譲ってもらいました。
野営をして順番に見張りをさせたボビー・ジェイは、ふざけたペペを殴ります。
その拍子に落としたライフルが暴発し、銃声を聴いたクレイは、見張りのペペに襲い掛かり気絶させました。
ボビー・ジェイとスキーターも痛めつけたクレイは銃を奪い、障害者のトルーパーを殺した2人を責めました。
クレイは、フォーリーに雇われた3人は、自分がガンヒルに向かっているのを知らせることが目的だと、アルマから知らされます。
フォーリーに自分が向かうと伝えるようボビー・ジェイに指示したクレイは、彼らの武器をもってその場を去りました。
7)雨宿りの家で
翌日ボビー・ジェイは、クレイより先にガンヒルに向か追うとせず、銃を取り戻そうとします。
雨になり、ある家に着いたクレイとデッキーは、未亡人のジュリアナ・ファレル(パット・クイン)と息子のダッチに迎えられました。
ジュリアナに優しくしてもらったデッキーは、ベッドを用意してもらい眠ります。
その後、ジュリアナにデッキーを預かってもらえることになったクレイ、戻れない時のために、自分のことを正直に話しました。
7年間刑務所にいたと言うクレイは、銀行を襲い、友人だった相棒に裏切られたことを話し、これから会いに行くことをジュリアナに伝えるのでした。
毎晩、寂しい思いをしているジュリアナの気持ちを察したとマックスは、彼女を抱きしめます。
8)危ない遊戯
そこに現れたボビー・ジェイらに銃を奪われたクレイは、3人を殺さなかったことを後悔します。
部屋を調べたボビー・ジェイは、子供しかいないことを確認し、ジュリアナは、牧童が戻ってくるとを彼に言います。
武器もないことを確認したボビー・ジェイは、ペペを見張りに向かわせて、牧童が現れたら銃で合図するよう指示しました。
クレイに抱きついたデッキーは、ベッドの枕の下にあった拳銃を渡します。
クレイを殴り、ジュリアナに料理をさせたボビー・ジェイは、ダッチに馬の世話をさせました。
調子に乗るボビー・ジェイに、ペペはフォーリーの元に向かったと言って牽制するクレイでしたが、信じようとしません。
クレイは、ボビー・ジェイがデッキーの頭にカップを乗せて撃とうとしたため、隠し持っていた銃を発砲しようとしますが、弾が出ません。
発砲できなかったクレイは殴られて意識を失い、ボビー・ジェイは、悪ふざけでデッキーの頭に乗せさせたカップを撃ちました。
再び乗せて撃とうとしたボビー・ジェイを制止しようとしたアルマは、銃を向けられます。
カップを撃ったボビー・ジェイは、さらに小さなカップを乗せるよう、ジュリアナに指示して従わせます。
アルマに撃たせようとしたボビー・ジェイは、銃を奪われそうになり発砲し、彼女を射殺しました。
9)ガンヒルへ
意識が戻ったクレイは、スキーターに襲い掛かりました。
スキーターを銃撃したボビー・ジェイは、デッキーを人質にとり、クレイに銃を捨てさせようとします。
クレイは、デッキーを連れ去ったボビー・ジェイを追いました。
馬が脚を痛め、見張っていたペペの馬を奪おうとしたボビー・ジェイは、抵抗されたために彼を殺します。
ボビー・ジェイは、その隙に逃げたデッキーを置いてガンヒルに向かいました。
ペペの死体を確認したクレイは、デッキーに気づかないまま走り去ります。
クレイの名を呼ぶデッキーは、追ってきたジュリアナに抱きしめられました。
10)意趣返し
ガンヒルに着き、フォーリーに事情を話したボビー・ジェイは報酬を要求し、死んだ仲間の分も受け取ろうとします。
金庫の銃を手にしたフォーリーを射殺したボビー・ジェイは、現われた家政婦に銃を向けて見張らせ、フォーリーの金を持ち去ろうと家政婦に鞄を持ってこさせます。
そこに現れたクレイは、ボビー・ジェイに銃を向けてデッキーの居場所を訊きます。
家政婦に、ボビー・ジェイの頭にリンゴを置くよう指示したクレイは、銃を一旦ホルスターに収めて、彼に撃ち合いをするチャンスを与えました。
リンゴを撃ち抜き、デッキーは途中で逃げたと言われたクレイは、小さなグラスをボビー・ジェイも頭に乗せるよう家政婦に指示します。
再びチャンスを与えたクレイはグラスを撃ち、今度は、家政婦に弾丸を渡し、ボビー・ジェイの頭に乗せさせました。
ボビー・ジェイを挑発したクレイは、銃を抜いた彼を射殺し、保安官を呼ぶよう家政婦に指示しました。
11)エピローグ
戻って来たクレイに駆け寄ったデッキーは、自分の父親か彼に尋ねます。
またその質問かとデッキーに言ったたクレイは、違うならなぜ戻ったのかと訊かれ、明確には答えませんでした。
3.四方山話
1)監督ヘンリー・ハサウェイ
西部劇、冒険活劇、ノワール、スパイ映画、戦争映画、歴史劇、コメディ、サスペンス、ミステリー様々なジャンルを精力的にこなし、ハリウッドのスタジオからは重宝されました。
一方で娯楽映画を作り続けた職人監督であるがためか、ハサウェイ個人そのものには省みられず、評論家からは無視されましたが、2001年に映画研究家のRudy Behlmerが『Henry Hathaway』として評伝を出版しています。
監督作(公開年)主演
ベンガルの槍騎兵(1935年)ゲイリー・クーパー
丘の一本松(1936年)フレッド・マクマレイ、ヘンリー・フォンダ
チャイナガール(1942年)ジーン・ティアニー
Gメン対間諜(1945年)ウィリアム・アイス
死の接吻(1947年)ヴィクター・マチュア
砂漠の鬼将軍(1951年)ジェームズ・メイソン
人生模様(1952年)アン・バクスター他
ナイアガラ(1953年)マリリン・モンロー
炎と剣(1954年)ジェームズ・メイソン
悪の花園(1954年)ゲイリー・クーパー
アラスカ魂(1960年)ジョン・ウェイン
西部開拓史(1962年)ジョン・ウェイン他
エルダー兄弟(1965年)ジョン・ウェイン
ネバダ・スミス(1966年)スティーブ・マックイーン
5枚のカード(1968年)ディーン・マーティン
勇気ある追跡(1969年)ジョン・ウェイン
ロンメル軍団を叩け(1971年)リチャード・バートン
新・ガンヒルの決斗(1971年)グレゴリー・ペック
Hangup (1974年)ウィリアム・エリオット
2)主演グレゴリー・ペック
ペックは初期のころからのイメージそのままに、1960年代後半から1970年代初頭までは、理知的で紳士な風貌が似合う役柄が大半を占めていました。
1976年のオカルト大作『オーメン』以降は打って変わって性格俳優的な雰囲気が漂うようになり、1978年『ブラジルから来た少年』では、マッドサイエンティストを演じるなど変貌を遂げ、カルト映画ファンからも一目置かれる存在になりました。
1996年に一度現役引退を表明しましたが、2年後にはTV映画作品『モビー・ディック』に出演、テレビを中心に活躍しました。
亡くなった2003年に、アメリカ映画協会が選んだ「映画の登場人物ヒーローベスト50」の第1位に『アラバマ物語』のフィンチ弁護士が選ばれており、誠実で正義感にあふれる彼のキャラクターは現在でも人々に愛されています。
実際の彼も知的な紳士で、人格者として知られていて、その人望を買われて政界進出の噂が周囲から出ましたが、本人は
「すでに自分は大統領役や歴史上の偉人をもう何人も演じている。もうこれだけで充分ではないか?」
と答え完全否定し、あくまで俳優として職を全うすることを公言したエピソードが知られています。
4.まとめ
『ガンヒルの決斗(Last Train from Gun Hill)』とは、原題を見るが如く、”ガンヒル”という町が登場するというだけで、他は何一つ関係の無い作品となっていて、邦画の題名付けの姑息さがみえてしまい残念です。