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映画『レッドクリフⅠ・Ⅱ』歴史娯楽大作の一挙ネタバレあらすじです!!

この映画『レッドクリフ(Red Cliff)』は、ジョン・ウー呉宇森)監督による中国のアクション映画です。主演に梁朝偉トニー・レオン)、共演に金城武(カネシロ・タケシ)で、中村獅童が特別参加しています。

目次

 

 


1.紹介

中国文学の四大古典小説とされている羅貫中の『三国志演義』を基に、史実やオリジナル創作を交えながら前半のクライマックスシーンである赤壁の戦いを描いています。

2部構成となっていて、前編にあたる『レッドクリフ Part I』が2008年、後編にあたる『レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-』(原題:赤壁2:決戦天下)が2009年に公開されました。

当初は一作のみの予定でしたが5時間を超える長編になってしまったために、一部の地域を除き2部構成に分けての上映となりました。


2.レッドクリフ Part I のストーリー

1)プロローグ

今からおよそ1800年前、400年続いた漢王朝は、既にその力を失い、ただ崩壊へと向かっていました。各地では、次々と反乱が起こりましたが、もはや朝廷に成す術はありませんでした。

天下はまさに乱世の時代へと突入していったのでした。

そんな世にのし上がってきた男が後の魏の曹操でした。圧倒的な勢力でついには朝廷までも支配し幼い皇帝を操り巨大な権力を欲しいままにしていました。

その曹操の天下統一の野望を阻むものは劉備孫権のみとなってきました。

 

2)漢王朝の衰退

西暦208年、漢の都許昌では、衰退の一途をたどる漢王朝の皇帝はもはや飾り物となっていました。次第に実権を握る丞相の曹操(張豊毅)は、南に勢力を広げる孫権劉備の軍を討伐するため、皇帝に許可をもらいます。

 



3)劉備軍の敗走

丞相に逆らうことのできない皇帝は、進軍を許可します。それにより曹操の軍は次々と領土を拡大していきます。そのころ、劉備(尤勇)は庶民たちを戦いから避けるために避難させていました。

劉備の配下である将軍趙雲(胡軍)は劉備の妻子を助けるために敵と戦いますが、妻を助けることができず、かろうじて息子を助けると、戦場へと戻りました。

 



4)関羽張飛

劉備の軍は配下の関羽(巴森扎布)、張飛(臧金生)の奮闘により、曹操の軍を一時撃退することに成功します。曹操関羽の戦いぶりを見て、自分の軍に引き入れようとしますが、関羽劉備に忠誠を誓っているため、誘いを断りました。


5)孔明の同盟案

戦争後、劉備の軍師である諸葛亮孔明金城武)は孫権張震)に同盟を提案します。孫権は最初、同盟に反対ですが、彼の部下である周瑜梁朝偉)と虎がりをして、曹操に対抗するために必要なことだと理解しました。



6)劉備孫権の同盟軍

劉備孫権曹操を撃退するための作戦を練ります。劉備孫権の軍は曹操の軍を取り囲んで次々と攻撃していきます。曹操の軍は総崩れとなり、多数の兵士が死亡していきました。


7)孫権の妹

曹操は大敗をしてしまいますが、軍を全て長江に集結させ反撃を期すという作戦を立てます。一方、孫権劉備の同盟軍は勝利を喜び合います。

その間、諸葛亮孔明曹操の軍に孫権の妹の尚香(趙薇)を自分のスパイとして潜り込ませ事情を探ることを企てました。

 

 

 

3.レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦― のストーリー

1)曹操の逆転発想

諸葛亮孔明曹操の陣営に送った尚香により、彼は実情を把握します。一方、曹操の軍には疫病に襲われてしまい、多くの兵士が倒れていきます。

曹操はこれを逆手にして、孫権劉備の軍に死体を送りつけます。それにより同盟軍も多大なる被害を被ってしまいました。

感染が拡大し、同盟軍の士気が一気に下がったことで、曹操はほくそ笑みます。


2)劉備の離脱

曹操海上での戦いに備えて兵士の船酔いを防ぐため、船体を鎖でつなぐ方法を考案しますぎました。劉備は兵士が疫病の被害を受けたため、戦線を離脱することを決意、孫権との同盟を断ち切ります。


3)矢の調達

決裂した同盟に対して、諸葛亮孔明劉備の離脱によって大量の矢の不足となった事態を打開するため、周瑜に3日間の猶予をくれるよう要請、もしもできなければ、周瑜孔明を処刑することで同意します。

その計画は、20隻の船に兵士に見立てた藁人形を乗せ、曹操の陣営まで偵察にいくことでした。


4)秘策

濃霧のなか、孔明の船が近づいていくと、敵は大量の矢を射ってきました。計画以上の矢が収穫できた孔明は、周瑜に報告すると、周囲の者は孔明の奇策に感心します。

 

 

一方、孔明のスパイの尚香は曹操の陣営から戻ると、彼らの状況を報告すると、彼らは風の向きで曹操の船を火攻めにすることができると考えました。


5)周瑜の妻

周瑜の妻小喬林志玲)は、夫を助け時間稼ぎを図って一人曹操の陣営へと入り、小喬を懸想している曹操を説得しますが、彼は相手にしません。

 

 

孔明の読みの通り、南東の風が吹き始めたことで孫権軍は火をつけた小型船を使い、巨大な曹操の船に体当たり、風のおかげで曹操の船はすぐに火がつき、あたりは大混乱に陥ります。


6)劉備軍の挟み撃ち

曹操は岸からあがり、内陸を目指していきますが、内陸からは劉備の軍が攻めてきます。孫権と同盟を解消したと擬装して、挟み撃ちにしたのです。南東の風に煽られた曹操海上軍は絶滅しました。

 



7)勝者は?

孫権劉備たちは曹操の地上軍を倒すために陣営の深くへと入っていきました。曹操周瑜の妻を人質にしましたが、孫権曹操の兜すれすれに矢を放ち、曹操劉備孫権の仲間に囲まれます。こうして大敗をした曹操ですが、彼らは曹操をに許し、逃亡させました。

一方、尚香が潜入中に思いを寄せることになった曹操軍の兵士の孫叔財(佟大為)の死に遭遇し項垂れた姿をみて、周瑜は「勝者はいない」と呟くのでした。

 



8)エピローグ

戦争が終わり、諸葛亮孔明周瑜から譲られた子馬を大事に育てる決意をします。

 

3.四方山話

1)オマージュ

ジョン・ウー監督は物語の構成上、臆面もなく黒澤明監督の最高傑作『七人の侍』を踏襲しています。関羽張飛趙雲といった豪傑らを、歌舞伎の大見得よろしく、見せ場たっぷりに紹介して、「三国志」ファンならずとも、この導入部によって物語世界の理解の助けにしてくれます。

あらゆる登場人物が出揃ったところで、曹操軍80万の大軍がたかだか4、5万の孫権劉備連合軍に今まさに襲いかかろうとする寸前に「続く」となります。そのタイミングは『七人の侍』の「休憩」の入り方と実に似ているのです。

あの壮絶な「雨中の決戦」に匹敵するであろう、第2部の火と水がほとばしる「船での血戦」へ、大いに期待を高めてくれるのです。


2)どっちも

周瑜の妻の小喬役で映画デビューを果たした林志玲は、「トニーさんに会ったときは、やはり憧れの大スターということで顔が真っ赤になってしまったんです(笑)」と言っています。

にも拘らず、撮影中に心を奪われたのは「夫」の梁朝偉(トニー)ではなく、孔明役の金城武だったとも明かしており、林志玲によると、金城武にお茶を運ぶシーンで、金城武を一目見た途端「なんてカッコいいの!」と頭がボー然となり、セリフまで忘れてしまい、「スタッフに注意されてやっと我に返った」と語っています。

 

3)撮影

ウー監督によると、アクションシーンは全部で約200万フィート分、ハイスピードカメラで撮影したそうで、スローモーションの連続はさすがに冗漫な感はぬぐえなくもないですが、いかにも中国らしい人海戦術で、「孫子の兵法」に書かれたさまざまな兵の配置隊形「陣形」を俯瞰目線で見せるダイナミズムは圧巻です。


4)ウー監督流

ウー監督流のサービス精神なのか、香港映画の娯楽の素地がそうさせるのか。何しろ大の爆発好きで、メリハリという言葉を忘れたかのような爆破に次ぐ爆破で、何とも騒々しいのです。

火薬の量を誇示するように延々と続く戦闘シーンに、いつしか、アジアの歴史大作のハリウッド化という図式が浮かびます。

何より、前作がなくても本作だけで成り立つ物語なので、もしやパートⅠは、ジョン・ウー得意の長い長いスローモーションだったのかなと思ってしまいます。

女性の活躍について、文字通り「女子供」的で、決戦を前に勝手に敵の司令官に会いに行く周瑜の妻・小喬といい、兵士に変装しスパイ活動をする孫権の妹・尚香といい、敵陣に長居が過ぎるのです。

女性の活躍で現代性をもたせる意図はわからないでもないですが、ここでもやっぱりやりすぎで、こういうディティールの甘さがジョン・ウー作品を真の人間ドラマから遠ざけ要因なのかも知れません。

まぁ、ウー監督に女を描けという方が無理な相談なのでしょう。


5)拍手

本作の見所は山ほどあって、ダイナミックな物語の中で、少数の連合軍が知力で大あ、軍を破るプロットは「判官贔屓」の伝統を持つ日本人のツボには間違いなくハマります。

10万本の矢を集める孔明の奇策に興奮させられ、激しい炎が揺らめく海上戦の熾烈。相変わらず美しく魅力的な登場人物たちと、すべてが映画的興奮に満ちています。

特に、天候を読み、風水を操り、ベストの瞬間に思いもよらない方法で戦う孔明のビジョンは別格です。気象を制するものは天下を制し、現在でも、市場経済やスポーツなどあらゆる分野に共通する絶対ルールなのです。自然という巨大な力を武器に変えるからこそクライマックスは神懸かってきます。

 

4.まとめ

勝負を決したのは東南の風でした。風とは古来より目に見えないものを象徴し、深い意味を持つ空気の流れは、新しい国が興る運命を見通していたのでしょうか。

悠久の歴史には、カンマはあってもピリオドはありません。英雄たちは見果てぬ夢を追い、風のように消えていくさだめなのです。歴史に名高い赤壁の戦いもまた、風の通過点に過ぎません。

本作の最後で周瑜に言わせた「勝者はいない」、このセリフは、いみじくも、傑作『七人の侍』のラストと同じ言葉でした。