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ドラマ『グランメゾン東京』vs『おいしい給食』あなたはどちらが面白い?!

この秋まことに対照的なグルメ(?)ドラマがスタートしました。片方は超人気俳優キムタクが主演のフランス料理、もう一方は、やや人気俳優の市原隼人主演で学校給食を扱っています。

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片やミシュランで星を狙う凄腕調理人、こちらは給食を唯一の楽しみとする変人教師と、料理というカテゴリーが同じであること以外は、主人公も扱う事象も見事に異なっています。

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さてこの両ドラマの一方に軍配を挙げるとするとあなたはどちらに挙げますか?

 

目次

 


1.概要

a)グランメゾン東京

超一流の腕を持った主人公の調理人が、自由奔放で破天荒にところかまわず暴れまわります。彼に出会ったものたちはその魅力にひかれて仲間となり、それぞれの個性をいかして問題を解決していき、最後には力を合わせて巨大な敵や困難に立ち向かい、打ち破りながら、ミシュランの三ツ星を狙っていきます。

TBSテレビ系「日曜劇場」枠


b)おいしい給食

給食マニアの主人公と、給食マニアの生徒による、どちらが給食を「おいしく食べるか」という闘いを描く学園グルメコメディ。1980年代の中学校を舞台に、食欲をそそる二人の給食バトル、主人公は渾身の力で給食に接しますが生徒の方はあざ笑うかのようにさらりとこなしていきます。

テレビ神奈川、他15地方局

 

2.キャスティング

a)グランメゾン東京

尾花夏樹(木村拓哉)尖った凄腕調理人
早見倫子(鈴木京香)グランメゾン東京のオーナー、ミシュランの星レストランを目指す
京野陸太郎(沢村一樹)グランメゾン東京のギャルソン(給仕係)尾花の因縁の盟友
相沢瓶人及川光博)グランメゾン東京のシェフ、尾花の懐刀的存在
芹田公一(寛一郎)グランメゾン東京の見習い、スパイを翻意する、佐藤浩市の息子)
丹後学(尾上菊之助)ライバルレストランのチーフシェフ、歌舞伎の大看板
平古祥平(玉森裕太)尾花の弟子、敬愛するも素直に出せない(Kis-My-Ft2
他に 中村アン 冨永愛 春風亭昇太 三浦獠太(カズの息子)

 

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b)おいしい給食

甘利田幸男(市原隼人)常節中学1年1組担任教師、異常ともいえる給食愛の持ち主
御園ひとみ(武田玲奈)同クラスの副担任、産休補助要員
神野ゴウ(佐藤大志)同クラスの生徒、給食をおいしく食べることに執着を持つ

 

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3.あらすじ

a)グランメゾン東京

かつてパリで、ミシュランの三つ星レストラン「ランブロワジー」で修業を積んだ日本人シェフの尾花夏樹は、同じ店で修業を積んだ京野陸太郎と共に独立し、パリに自分のレストラン「エスコフィユ」をオープンしました。ミシュランから二つ星を獲得するまでになりましたが、2015年、日仏首脳会談の昼食会で提供した料理にアレルギー食材が混入し、またこれについて追及するフランス政府関係者を殴ったために逮捕され、評判を落とした店は倒産し、京野は多額の借金を背負い、尾花は名声と信用などすべてを失ってしまいました。

 

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それから3年後の2018年。パリの片隅で借金取りに追われるまでに落ちぶれていた尾花は、ランブロワジーで面接をうける早見倫子と出会います。自分のシェフとしての実力の無さと同時に尾花の料理の素晴らしさを実感し涙する倫子に、尾花は「一緒に店を作ろう」と申し出ました。かくして二人は新しいレストラン「グランメゾン東京」を開店させ、三つ星獲得を目指して動き出すのでした。

当初は「エスコフィユ」同様の高級食材を多用するスタイルでいこうとした尾花でしたが、元同僚・相沢瓶人の「日本人の味覚に合う味」が好評だったことなどから、国産食材を主体とした「素材の組み合わせと見えない手間で勝負をする」スタイルへ方向転換します。

グランメゾン東京のプレオープンは上首尾に幕を閉じましたが、招待客の一人のリンダ・真知子・リシャール(冨永愛)の記事の影響で予約が全てキャンセルされる事態に発展します。

客足が遠のく窮地の中、尾花はフードフェスへの参加を提案し、倫子たちも賛同します。口コミにより行列が出来るまでになる成果を残せた一方で、「gaku」のオーナー江藤不三男の告発により料理は販売中止、悪評は更に広がってしまいます。こうした風評被害に遭いながらも料理の味は評価され、ミシュランの前哨戦となるトップレストラン50に選ばれて、10位にランクインします。


b)おいしい給食

1984年夏。常節中学校の校門に立つ数人の教師と当番の生徒がありました。登校する生徒たちに挨拶しているその中に立つ教師、甘利田幸男には秘密がありました。それは、給食に絶対的に愛がある故にそれを愛せない奴を許せない「給食絶対主義者」であることでした。

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給食のために学校に来ているといっても過言ではありません。しかしながら、給食マニアの教師・甘利田は、ただ心の奥底で給食を愛するだけです。なんとならば、教師が生徒以上に給食を楽しみにしているなどと知れたら、威厳が失墜するからなのです。

そんな彼の前に一人の生徒が挑戦状を叩きつけることになりました。彼の名前は神野ゴウで、給食に愛がある故に変革を求める13歳です。どちらが給食を「おいしく食べるか」。給食マニアの教師と生徒の、静かな「闘い」がはじまりました。


4.サブタイトルとメニュー

一方がドラマの内容とメニューを見事にリンクさせていますが、もう一方はメニューが主体となり主人公が大仰に反応します。

a)グランメゾン東京

①手長エビのエチュベ、②ナスのプレッセ、③鹿肉のロティとコンソメ、④モンブランアマファソン、 ⑤アッシパルマンティエ、⑥鰆のロースト 水晶文旦のソース、⑦ガレットシャンピニオン、⑧ビーフシチュー

b)おいしい給食

①海の王者、鯨の竜田揚げ、②魔法の粉ミルメーク、③4番・サード・ソフトめん、④八宝菜に欠かせないもの、⑤酢豚は大人の証、⑥ワンタンスープと名前の長いパン、⑦ヤキソバ・パンデミック、⑧危険な果実冷凍みかん、⑨アゲパンという名のスイーツ、⑩二人だけのカレーライス


5.みどころ

a)グランメゾン東京

ドラマのサブタイトルに毎回フランス料理のメニューがつけられ、それにまつわるエピソードとキャストが絡んできます。

今回のキムタクドラマの成功は、一部スタッフの言うように、何を演じても「キムタク」の風評を覆すべく、個性的な俳優で脇を固め「キムタク」色を薄めたそうですが、それだけでなく、あらすじの様に敵味方、競技大会、信頼、裏切り、と古今東西よく見る形の物語で、私たちのDNAには、こういうお話を好きになる何かが刷り込まれているように思います。

最大の勝因は、サブタイトルのメニューに絡めたエピソードと料理のウンチクが出色のデキで、自然に物語として入ってきます。難しいフランス料理が解りやすく紐解かれ、逆転劇に有機的に作用しています。


b)おいしい給食

甘利田先生の面倒くさいウンチクも神野君の子供らしくないような態度もひっくるめてやっぱり見たくなってしまう不思議なドラマです。

細かい演出が秀逸で、特に効果音が最高。フライ物のサクサクした咀嚼音を始めとして視聴者の為に作っている姿勢が感じられます。

だからこんなに面白い。こんなにくだらないのに、こんなに面白い。

甘利田先生の所作と神野くんの表情がツボです。甘利田先生の食前の校歌斉唱の嬉しそうな動作、絞めは、毎回調子に乗って机に両手をぶつけてしまいます。そして食べる時の恍惚の表情、食べ終わると絶妙な顔し、挙句そっくり返ってしまいます。

神野くんの表情、普通のつまらない給食を載せたり挟んだり塗ったりし、ある時は自分で持参したものを添加して最大級に美味しくしようとします。あげく、甘利田先生の方をみて、どんなもんじゃいと言わんばかりに視線を飛ばします。

あとモデル歩きのような歩き方も独特です。よくあんな子見つけてきますね。最高です。

このドラマ、賛否が極端に分かれますが、80年代前後の給食世代にとってはノスタルジックが加わって笑いの渦に巻き込んでしまうこと請け合いです。


6.まとめ

片方は全国ネットの豪華キャスト、もう一方はローカル局制作のB級ドラマと、比べようのないほどの隔たりがあります。近年『カメラを止めるな!』みたいな映画が大ヒットしましたが、エンターティメントの隙間にハマって予想外にウケてしまいました。よく似た構造があるかも知れません。

違った面白味があるのは確かなことですが、一方の制作者はほくそ笑んでいるに違いないでしょうね。