凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『オルカ』ちょっと違った動物パニック映画です!!

この映画『オルカ(Orca)』は、1977年のマイケル・アンダーソン監督、リチャード・ハリス主演のアメリカ・イタリア合作によるパニック映画です。

目次

 

 

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1.紹介

本作は、シャチを本能で行動する獰猛な野生動物ではなく、高い知能を持ち、家族愛から復讐する、と設定するなど、他の動物パニック映画とは趣が異なっています。

制作は『キングコング』(1976年)で知られるディノ・デ・ラウレンティスで、脚本はルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ海洋学者の弟の助言を参考に書き上げました。

1200万ドル強と1年2ヶ月を費やして制作され、酒豪であるリチャード・ハリスは禁酒して撮影に臨びました。

タイトルの『オルカ』はシャチの学名である「Orcinus orca」から取られています。


2.ストーリー

1)プロローグ

カナダの東海岸に位置するニューファーランド島で、オルカ(シャチ)のつがいが求愛行動をしながら、幸せそうに大海原を泳いでいます。

近くの漁村では、海洋動物学者のレイチェル(シャーロット・ランプリング)と助手のケン(ローバート・キャラダイン)がオルカの生態を調査していました。

その時、漁船のノーラン船長(リチャード・ハリス)は、サメを捕まえて水族館に売るつもりでサメを追っていましたが、目の前にボートが現れたため、サメを追うのを中止します。

 

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ここで、急な運転をしたせいで、ケンが海中に落ちてしまいます。必死にボートへ戻ろうとするケンの背後へ、サメの背ビレが近づいて来ていました。

まさに、大きなホオジロザメが現れ、襲われそうになりました。そこにオルカが現れ、強靭な体当たりでサメを撃退し、彼は間一髪で助かりました。


2)オルカとは

大学に戻ったレイチェルは、オルカの生態について講義を行っています。彼女は地球上で最も強い生き物は、シャチだと言い切ります。成長すると体長9メートルになる哺乳類で、ラテン名の「オルカ・オルキヌス」は、「死を招く者」という意味です。

声には1,500万種類の情報が確認され、大きな脳の中には未知数の知能があると考えられています。4か月目の胎児はヒトとそっくりで、手や指まで付いています。オルカには人間に負けないほどの復讐心もある、とレイチェルは考えていました。

ノーラン船長はレイチェルの研究に協力しながら、オルカを生け捕りにして水族館に売ろうとしていました。船員のアニー(ボー・デレク)は、オルカは一夫一妻制だから引き離してはいけないと止めますが、ノーランは聞く耳を持ちませんでした。


3)悲劇の始まり

オルカの群れを見つけたノーランは銃を構え、オスのオルカを生け捕りにしようとしますが、誤って隣にいたメスのオルカに銛を撃ってしまいます。

漁船に吊り上げられたメスは、まるで人間の悲鳴のように泣き叫びました。さらにお腹の中から、人間のような姿の胎児が飛び出しました。ノーランは気味悪がり、ホースで水をかけて胎児を海に落としました。

 

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オスは離れた場所からノーランの姿を目に焼き付けます。憎しみに燃えながら、船底へ体当りを始めました。危険を感じた船員のノバック(キーナン・ウィン)は、メスを縛っていたロープを切り離して海に落としましたが、その際、オスに噛み付かれて死んでしまいました。


4)オルカの宣戦布告

メスを取り戻したオスのオルカは、群れに戻そうと懸命に体を押すが、メスが目覚めることはありませんでした。翌日、メスの遺体は陸に上がりました。レイチェルは悲しみ、遺体に寄り添って聖書を読みました。

レイチェルがノーランを責めていると、そこに先住民のウミラク(ウィル・サンプソン)も加わり、オルカは傷つけた人間を覚えているものだと忠告します。

 

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ノーランは地元の漁師ではなくよそ者であったため、地元の船員組合からも身勝手な行動を慎めと警告されました。

昼間の漁港にあのオルカが出没し、小型漁船に激突して沈没させるという騒動が起きました。ノーランはオルカの宣戦布告だと感じるのでした。


5)責められるノーラン

その夜、船員組合はメスの遺体を埋める作業を夜通しで行っいました。組合長はノーランに、早く町から出て行けと言いますが、彼は出て行くつもりはありません。

岬に自分の案山子を立てて、おびき寄せようとするノーランは、オスに謝りたいのだとレイチェルに話します。実は彼も、無謀運転の事故で妊娠中の妻を無くした経験があったのでした。

 

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復讐に燃えているオスは、再び港に現れて施設に激突を繰り返し、大火災を発生させました。オスは高笑いをするかのように何度もジャンプを繰り返し、戦う意思をノーランに示すのでした。


6)覚悟の出航

ノーランは船員たちと一緒に、海に面したコテージに宿泊していました。そこにあのオルカが体当たりをし、コテージを大きく傾けさせます。部屋にいたアニーは海に投げ出されそうになりました。

ノーランたちが網を投げて彼女を引き上げようとした時、オルカは彼女の足に噛み付きました。アニーは一命を取り留めたものの、片足を失ってしまいます。ノーランは逃げられないと観念し、オルカの戦いを受けて立つことを決意するのでした。

翌朝、ノーランは漁村を出ることにしました。彼を雇ったレイチェルも一緒に船に乗ります。彼女はノーランを精神的に追い詰めたのは、自分に責任があると感じていました。その一方で、オルカの執念深さにも驚いていたのです。

村民が冷たく見つめる中、船は出港する。船にはウミラク、船員のポール(ピーター・ホーテン)、レイチェルの助手のケンも一緒に乗り込みました。

メスが死んだ場所に向かうと、そこにオスはいました。ついて来いと言わんばかりに、オスはノーランに合図を送ります。レイチェルの助手のケンが甲板に身を乗り出すと、オルカが飛びかかり海に沈めてしまいました。

オルカはまるでレーダーでもあるかのような正確さで、セントローレンス湾をまっすぐ進み、ベルアイル海峡に向かいました。その先には北極海があり、オルカはそこを決闘場所にしようとしている、とノーランは感じ取りました。


7)最後の決戦場

北上を続けるオルカを追ううちに、船内は凍えるような寒さとなります。やがて流氷と氷山に囲まれた地点まで到達しました。帰りの燃料が底をつき始めた頃、船は氷山に接触して停止しました。

ポールは救命ボートを出すため身を乗り出すところを、オルカに襲われて死にました。残るはノーランとレイチェル、ウミラクの3人となりました。

朝になり、ノーランはいよいよ対決の時が来たと覚悟します。オルカは小さな氷山を押しながら近づき、船に衝突させました。船はその弾みで巨大な氷山にぶつかり、船上にいたウミラクは崩れる氷山に潰されて死んでしまいました。

 

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ノーランとレイチェルは、転覆する船から流氷に飛び移り、さらに、レイチェルは氷山に逃れることができましたが、ノーランはオルカの誘導で流氷の上に取り残されました。ついにノーランとオルカの決闘となり、双方は火花を散らして睨み合いました。

オルカは流氷に体重をかけて、ノーランを引きずり下ろし、海に落ちた彼の周りを旋回して追い詰めた後、彼の体を一気に持ち上げて氷山に投げつけました。ノーランは即死し、海底に沈んでゆきました。

 

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8)エピローグ

レイチェルはひとり生き残り、死の直前にウミラクが発したSOSによった救助ヘリで助け出されました。
復讐を果たしたオルカは、流氷で覆われた海中を泳ぎ続けるのでした。

 

 

3.四方山話

1)SPAC

本作は、『ジョーズ』(1975年)の大ヒット後、その影響で多数制作された動物パニック映画の一本で、日本においては、「マリーン・サイエンス」または「Scientific・Panic・Adventure・Cinemaの頭文字を取った“スパック(SPAC)・ロマン”というカテゴリーの映画」との触れ込みで公開されました。


2)動物パニック映画

ジョーズ』の大ヒットを受けて、一斉に制作された動物パニック映画をあげてみました。

『グリズリー』(1976年)とか『テンタクルズ』(1977年)とか『ピラニア』(1978年)とか『アリゲーター』(1980年)とか『ロアーズ』(1981年)とか『クジョー』(1983年)などがありました。

こうしてみると、本作は、本家の続編である『ジョーズ2』(1978年)『ジョーズ3』(1983年)を含めても、なかなか出来のいい作品と言えますね。


3)オルカ来日

作中のシャチを演じたうちの1頭である「キアヌ」は、映画公開直後の1978年4月に和歌山県白浜町のワールドサファリ(現・アドベンチャーワールド)に連れてこられショーに出演し、1980年の6月に亡くなりました。

当時のワールドサファリにはイルカをようやく調教できる程度の新人トレーナーしかおらず、同伴して来日したアメリカ人トレーナーが担当して開業初日からショーに出演しました。

キアヌが習得していた種目はまだ少なかったのですが、当時はイルカでさえも実物を見たことがない観客がほとんどであったため、キアヌの巨体とその一挙一動に歓声が上がりました。

 

 

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4.まとめ

ジョーズ』の爽快なアクション風味とはまた違って、全体に暗いムードは否めませんが、それが個性になって、なかなかオリジナリティの高い、見応えある海洋パニック映画になっています。

シャチに感情移入させつつも、完全に動物を擬人化するような甘さはなくて、残酷な復讐に描いているので、スリラーとしても成立しています。