凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

ドラマ『密室の抜け穴』『第三の時効』シリーズ中一番のサスペンスです!!

このドラマの原作、『密室の抜け穴』は、横山秀夫による連作警察小説『第三の時効』所収の4作目です。『横山秀夫サスペンス』は、2002年から2005年までTBS系「月曜ミステリー劇場」で放送された全6回のシリーズで、本作は3作目で、2003年5月5日に放映されたものです。

目次

 

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1.概要

1)キャスト

密室に作られた抜け穴とは一体何を意味するのでしょう。石橋凌伊武雅刀、隆大介、丹古母鬼馬二寺田農橋爪功錚々たる面々が一堂に会したハードボイルドな刑事ドラマです。警察という組織のなかで渦巻く人間関係の葛藤、そして遅々として解決しない事件。小さな会議室を舞台に“様々な思い”が錯綜します。


2)制作

制作がコブラピクチャーズからアミューズに移った本作、もともと地味な骨太のサスペンスなのですが、なかでも異色作で、後半はほとんどが県警内の会議室の場面になっています。
張り込み中のマンションから容疑者が消えたことについて第3班の班長代理(石橋凌)の責任を追及する、ほとんど裁判のような場面が続き、張り込みが失敗した原因追及の疑心暗鬼の中で緊張感がじりじりと高まってゆく様を、榎戸耕史がじっくりと演出し、今回から撮影が安田圭に変わり、カメラワークも、より被写体を舐めるように肉薄します。


3)謎解き

”密室”の意味の謎解きも実に冴えており、ゲーム的なミステリーではなく、人間ドラマとして秀逸です。前作「囚人のジレンマ」では、刑事達の矜持に集約しましたが、本作では第3班班長伊武雅刀)の気味が悪いほどの深い企みが、班長代理を精神的に追い詰めてゆく様をサスペンスとして描いています。事件そのものよりも、警察という閉鎖的組織内部の濃厚な人間関係の中に、組織内に生きる男たちが経験するであろう心理劇が念入りに織り込まれていて、知る人ぞ知る小傑作です。


2.ストーリー

1)プロローグ

県境の山林で白骨死体が見つかります。死後かなりの時間が経過しており捜査は難航を極めることが予想されましたた。この事件を担当する捜査課三班の東出は、捜査中に脳梗塞で倒れた班長村瀬に替わって班長代理に任命され、三班内部では東出が先に昇進したことで同期の石上(隆大介)が強烈なライバル意識を剥き出しにしており、チームワークはバラバラでした。

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村瀬透/伊武雅刀       東出裕文/石橋凌     石上孝志/隆大介



2)焦り

石上が命令を無視して独自の調査をするなど、この最悪な捜査の進行状況に東出は頭を悩ませます。村瀬の言葉を頼りに、東出は捜査対象を暴力団関係者に絞り込むよう指示しました。程なくして早野という人物が捜査線上に挙がり、村瀬の代役という重圧と石上に対する優位意識から、東出は十分な証拠もないまま早野の身柄確保を強行しようとしました。

 

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早野誠一/鬼丸

3)秘策

暴力団対策課と連携して早野を張り込みますが、マンションの自室にいるはずの早野の姿は忽然と消えていました。どうやって張り込みをかいくぐって“密室”であるはずのマンションから逃走したのか。焦燥感に駈られる東出を追いつめるかのように、幹部捜査会議という名目の“責任者探し”が始まります。重苦しい時間ばかりが過ぎていくそんな時、脳梗塞で入院中だったはずの村瀬が現れました。村瀬は東出につぶやきます「密室に抜け穴を作らせればいい。」と。はたしてその発言の真意とは…。

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尾関泰嗣/寺田農  田畑昭信/橋爪功  小浜修造/丹古母鬼馬二 湯浅/中西良太

監察官         捜査1課長         暴対課長         暴対


4)炙り出し

会議が3時間を過ぎてなお、終わりのみえない会議に内通者は疑心暗鬼に陥り、早野からは電話で何度も張り込みを解かせるようにせっつかれていました。
そこへ村瀬の提案で東出はマンションの全戸捜査の決断をしたので、内通者氏家はたまらず早野発見と嘘の連絡が入ったと動き出しました。その携帯通話の不自然さを疑われ、ついに内通者であることが露見してしまいました

 

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氏家忠宏/光石 研

5)エピローグ

田畑一課長(橋爪功)は、村瀬が、かってライバルが強敵だとルールを破るやつが現れるといっていたと言いました。それが氏家でした。
あの会議は村瀬の作った密室に氏家を閉じ込めて奴に抜け穴を作るように仕向けるためのものだったのです。
そして、東出には今度の事件が密室みたいなものだったろうとねぎらうのでした。

 

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3.まとめ

ドラマの半分近くが会議室の中という、珍しいドラマです。結果はあっけないものでしたが、そこに至るまでの会議室の緊迫した空気とか、戻ってきた村瀬班長の口数少ないけどすごい威厳があり、まさにイヌワシ!といったところがみどころでした。