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映画『ターミネーター4』良作ながら難しい立場になりました?!

この映画『ターミネーター4』(原題:Terminator Salvation)は、2009年のアメリカ映画で、アーノルド・シュワルツェネッガー出世作となったターミネーター(T1)からのシリーズ4作目であり、『T4』とも呼ばれます。監督は、『チャーリーズ・エンジェル 』のマックG、主演は『バットマン ビギンズクリスチャン・ベールで「ジョン・コナー」を演じています。

目次

 

 

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1.プロローグ

駄作との評価も目立つ『T4』ですが、旧三部作で主演を務めたシュワルツェネッガーのみならず、今作の主演俳優でもあるクリスチャン・ベールからも批判的なコメントをされているのます。しかしながらシュワルツェネッガーの場合は彼の子どもに見せたところシリーズで一番良かったと言われて出番のごく少ない本作なので拗ねたとの話もあります。

とはいうものの、マックG監督は、新しいチャーリーズエンジェルシリーズで知られるとおり、ど派手映像の請負人みたいだから、確かにアクションの組み立て、膨大な火薬量にVFXを絡めた見せ方の上手さは文句ありません。冒頭の、A-10爆撃機飛び交う突撃シーンの映像などは、十二分に入場料の元を取れたと感じるほどの出来栄えです。

さらに、何といっても圧倒的なのは、やはりアーノルド・シュワルツェネッガーの登場シーンです。結局、この顔と体が出ればすべてを持っていってしまいます。強烈なカリスマ性が現出するのです。つまるところ、多少の不満は残りますが、決してダメということはなく、期待度の異常な高さのわりには、よく頑張った、といったところなのでしょう。

 

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2.変化

未来から送られてきた殺人マシーンからコナーと血縁者を保護するというこれまでのパターンと矛盾を捨て、マーカスという機械のボディに脳と心臓を移植されたハイブリッドを過去からの贈り物としてコナーは受け取りますが、これは「ロボットではコナーを倒せない」と考えたサイバーダイン社の謀略なのでした。
しかるに、自分が人間であると思っているマーカスは真実を聞かされてもなお人間であろうとします。「機械は死者を放置するが人間は埋葬する」という仲間を悼む気持ちに機械と人間の違いを教えられて、己の罪を贖う気になったのでしょう。彼の自己犠牲でコナーは救われ、救済の糸が繋がれるシーンは、心こそが人を人たらしめるという鮮やかな人間賛歌となっています。

コナーは、“I’ll be back”という口にしてカイル救出に向かいます。かつてシュワちゃんターミネーターのT-800がコナーに残した言葉と同じ、使命に忠実である証であるとともに、生きて帰ってくる約束です。コナーは母の預言テープで未来がどうなるかはある程度知っていたはずなのに。それでも、そんな予定された未来よりは、不確定でも自らの力で勝ち取る道を選ぶのです。過去3作と一線を画しながらも、それらの苦悩が圧倒的な迫力とスピードで迫る映像に命を吹き込むことに成功しています。


3.改善

前述の他、『T4』の脚本は『T3』の安易な脚本とは比べ物もないほどの良質な脚本を目指したのがありありと伺えます。
時間軸の巧みさにおいて、当初、母親のサラ・コナーから聞いていた歴史とちがい、予定より圧倒的に早くTー800が量産体制に入ろうとしていましたが、結論的にはジョンがスカイネットの生産工場を爆破したことで、結果的に量産が遅れ、結局はサラの予言通りの歴史になります。
他にも、ラストシーンにおいてスターとマーカスが手を繋ぐシーンは、体は機械になってしまったマーカスの「人間性」を象徴しているようにも見えますし、そしていつかは戦争が終結し、マシンと人間が共存する世界を示唆しているようにも見えます。振り返ると、このマシンと人間の共存は『T2』のテーマでもあります。
他にもキャメロンのターミネーターへとリンクするようなあらゆる小ネタ(ジョンの顔の傷の由来や、ショットガンの重心を切る方法をカイルに教えたのはマーカス、など)もあったり、『T3』は『T2』の劣化版コピーですが、『T4』は別の物語で『T2』に迫る完成度を求めていて、なによりターミネーターシリーズへのリスペクトをすごく感じます。
『T3』がジョンの年齢設定を間違えていたり、『審判の日』が当初の予定より後にずれ込んだこととは対称的です。


4.物足りない部分?

『T2』の構図のひとつである善玉ターミネーター(シュワルツェネッガー)VS悪玉ターミネーターという図式からの脱却を図った潔さ。加えて、審判の日以降の未来世界を砂埃にまみれた『マッドマックス』『ザ・ウォーカー』まがいのディストピアとして描く独特のビジュアルの格好よさもあり、さらに、台詞の一つ一つやアクションシーンも同様に切れ味の鋭い、スタイリッシュなものなのですが、どこか『物足りなさ』を感じるのも確かで、もちろん、『T1』や『T2』がこのジャンルに限らず大名作なわけで、『ターミネーター』と冠する作品を作るかぎり、そことの対比は避けられません。

 

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純粋に映画のできをみると、これはすばらしいものですが、タイトルに「ターミネーター」がついていなければ、の話となります。
これが例えば「マッドマックス」なんて題名であったなら許せますが、正直なところ、ターミネーターらしさという点では物足りません。
何が足りないかといえば、「熱さ」がでしょうか。たとえば、シリーズ最高傑作と言われる2作目において、廊下で2体のターミネーターに挟まれた若きジョン・コナー。誰もが絶体絶命だと思ったその後に起こる一連のアクションシークエンスを思い出すと、あの時観客が感じたのは、「特撮がすごい」とか「金がかかってるねー」ではなく、背筋が震えるような熱さ、だったはずです。
つまるところ、ジェームズ・キャメロンが作り上げたこのシリーズの魅力とは、そこにあるわけで、それをいかに踏襲できるかに注目しましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。

本作においても、スカイネットの中心部でT―800と接触、スターと共に逃げるカイルですが、ジョン・コナーと出会ってからは比較的『もうだめかも』っていう絶望感は薄くなりました。『T1』の前半、サラの額にTー800のレーザー照射で照準が定められたときのどうしようもない絶望感。
『T2』ではT-1000を溶鉱炉まであと一歩のところで追い詰めたけれども、まさかの弾切れで、一転して逆に追い詰められるサラとジョン。間一髪のところでそれぞれカイル、T-800に助けられます。
『T4』ではここまでぎりぎりの追い詰められ方がありません。

『T4』でのカイルはジョンに助けられたというよりは自力でなんとか窮地を脱して、スカイネットから逃げようとするときにジョンと出会い、ジョンの庇護をうけながらもしばらく共闘します。これが『T4』でのジョンとカイルの関係です。もちろんのこと、この作品でのジョンは一部で『伝説の男』と言われながらも、まだ人類全体を導くような段階ではありません。だからこそ、カイルを100%守りきることはまだ難しいのかもしれませんか、逆に『T2』のTー800が少年時代のジョンに見せたような圧倒的な保護者感がないのです。

 

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言い換えると、『T4』だけみても、そのあとカイル・リースが命を懸けてサラ・コナーを助けにタイムトラベルに志願する強い動機が見えてきません。しかしながら、当初『T4』は審判の日以後を描いた新3部作の一作目として構想されていました。『T4』の興行的不振と制作会社の倒産により、予定されていた『5』、『6』の製作は白紙になりましたが、もしかしたらそのあたりのエピソードも追加されていく予定だったのであれば、言い足りなかった部分、物足りない部分、があっても仕方ないかもしれませんね。


5.まとめ

この物語は2018年を設定しています。とうに映画の時代を過ぎてしまいましたが、昨今、人類はチェスや囲碁でもコンピュータに敵わなくなり、車の自動運転化が実用化され、なにかとAIが話題に上ってきますが、幸いなことに「スカイネット」のような影は見受けられません。ひそかにジョン・コナーのような人物がコンピュータを抑え込んでいるのでしょうか?!