映画『リバー・ランズ・スルー・イット』ブラピと自然がとっても美しいヒューマン・ドラマです!!
この映画『リバー・ランズ・スルー・イット(A River Runs Through It)』は、1992年公開のアメリカ映画で、ノーマン・マクリーンの小説「マクリーンの川」をロバート・レッドフォードとリチャード・フリーデンバーグが脚色し、監督は、レッドフォードで、主演はクレイグ・シェイファー、若き日のブラッド・ピットが共演しています。
目次
1.ストーリー
1)プロローグ
1910年代、アメリカ合衆国のモンタナ州、ミズーラで、ノーマン・マクリーンと弟ポールは、牧師である父親(トム・スケリット)から、「信仰」という教えだけでなく、自分達の川と呼んでいたブラックフット川で、フライ・フィッシングなども学んでいました。
ノーマンとポールは町の学校には通わず、「マクリーンの学校」で、父から文章の書き方を学んび、父は、子供達に午前中は読み書きを、午後からは自然に親しませて、神の恵みを学ばせました。
芯に強さを持った弟ポールは、兄ノーマンがプロボクサーになろうかというのに対し、プロのフライ・フィッシャーになるという夢を持っていました。
2)兄弟の絆
1917年、第一次大戦にアメリカが参戦し、男達は戦場に向かい、16歳のノーマン(クレイグ・シェイファー)は、材木伐採の肉体労働者、ポール(ブラッド・ピット)はプールの監視員として働き、フライ・フィッシングも楽しんでいました。
ある日、仲間のチャブ(マイケルカドリッツ)達と、ボートで川下りをすることになったノーマンとポールでしたが、仲間達は激流に怖気づき、兄弟だけで川下りを始めました。
激流に捉まり、滝つぼに飲まれた二人を捜すチャブらでしたが、2人は難を逃れて、ポールは何食わぬ顔でおどけてみせるのでした。
帰宅した二人は父に叱責され、母(ブレンダ・ブレッシン)に心配をかけたことを反省しますが、尚も自分をからかう弟に腹を立て、ノーマンはポールと殴り合いの喧嘩になってしまいます。
母親に仲裁された2人の喧嘩は、それ一度きりでした。
3)2人の進路
ノーマンは東部の名門ダートマス大学に進み、あまり帰郷もせずに6年間を過ごしました。ポールは地元の大学に入り、ブラックフット川で幻の大魚を追い求めていました。
卒業したポールは、地元の「ヘレナ新聞社」に入社して家を離れましたが、故郷に戻ったノーマンは、進路についての明確な意見を父に語れず、彼を失望させました。
ポールを訪ねたノーマンは、早速二人でブラックフット川に向かいます。久し振りのフライ・フィッシングでしたが、すぐに勘を取り戻したノーマンは、ポールの芸術的な技に目を見張りました。
ノーマンは、仲間達と再会して大いに楽しみ、父の教会にも出向き、彼の説教で故郷に帰ったことを実感するのでした。
4)弟の問題、兄に恋人
独立記念日のパーティーで、ノーマンは快活な女性ジェシー・バーンズ(エミリー・ロイド)に出会い、思いを寄せるようになりました。
闇酒場に向かったノーマンとジェシーは、先住民の恋人メイベル(ニコール・バーデット)を同伴したポールと落ち合い、4人は、メイベルを見る周囲の視線を気にしながらも、楽しい一時を過ごしました。
ある日、メイベルのことでトラブルを起こし、警察に捕まったポールを、ノーマンが引き取りにいきましたが、そこで、ポールが賭けポーカーをして、度々、警察の世話になっていることを知りました。
ハリウッドから帰郷したジェシーの兄ニール(スティーヴン・シェレン)に会ったノーマンは、ジェシーの母親のむちゃぶりに合って彼を釣りに誘うことになりました。
ポールを伴い川に向かったノーマンは、二日酔いで何も出来きず、連れ行った行きずりの女と、裸のままで寝て日焼けしてしまったニールを送り届けました。
帰りにジェシーに自宅に送ってもらったノーマンは、ニールを嫌ってはいるが、彼女のことは好きだと告白しました。
5)希望の兄、不吉な弟
ノーマンの元に、シカゴ大学から英文学の教授にという誘いの連絡が届き、シカゴ行きを喜ぶジェシーに、ノーマンは彼女とは離れて暮らせないことを告げるのでした。
それを知らされたポールは、ノーマンと祝杯を挙げて運をもらいったつもりでポーカーの勝負に挑みます。
しかし、ポールは店を追い出されてしまい、危険を感じたノーマンは、賭けで借金が溜まるポールを連れて帰ろうとするのですが、ポールは、翌日の釣りの約束をして、残ることをノーマンに告げて店に戻りました。
翌朝、朝食に現れたポールを見て安心したノーマンは、両親にシカゴ大学の教鞭に立つことを知らせました。
両親は感激し、ノーマンはポールと父を伴いブラックフット川に釣りに向かうのでした。
ノーマンはポールをシカゴ行きに誘いますが、彼はモンタナを離れないことを兄に言い、そしてポールは、ノーマンと父の見守る中、見事な腕前で幻の大魚をを釣り上げました。
釣り人として、天性の才能を持っていたポールでしたが、ノーマンは同時に、彼の命がはかなく散ることを予感していました。
6)終焉
ある日、警察に呼ばれたノーマンは、拳銃で殴り殺されたポールの死を冷静に受け止め、両親にそれを伝えました。
ノーマンは、詳しい死因を両親には伝えなかっませんでしたが、ポールが右手を潰されていたことだけを父に告げました。
父は、その後もポールの想い出に浸り、彼について知っていることをノーマンに尋ねるのでした。
ノーマンは、ポールが「類まれな釣り人だった」と答えるが、父は、それに「それだけではなく美しかった」と付け加えました。
最後のミサで父は、人を愛することの尊さを切々と人々に説くのでした。
そして、時は流れ、年老いたノーマンは、様々なことを回想しながら、フライ・フィッシングに興じています。
彼は今、川と一体になりながら、川の流れのなかに、人生の本質を見るのでした。
哀しみや、もどがしさ、焦りや挫折があったとしても、それでも川はいつも通り、ゆったりと静かに流れていく。
「リバー・ランズ・スルー・イット」とは、そういう意味なのでした。
2.この映画のキモ
ノーマンの追想をそのまま映します。
弟は、いつも父の心の中にいた
父の最後の説教を覚えている皆さんも人生で一度は経験するはずです
愛するものが苦しむ姿を見て無力を思い知る
神よ 愛する者を 援けるにはどうすれば?
身近な者ほど難しい
何を差し出すべきも分からないし
差し出しても 拒まれてしまう
彼らは我々の腕の間からすり抜けていく
それでも愛するのです理解はできなくても
ただ愛することはできる
3.フライフィッシングとは
本作の重要な要素のフライ・フィッシング(英: Fly fishing)は、欧米式の毛針であるフライを使う釣りです。その起源はイギリスの貴族で、現在も格調高い紳士のスポーツとして楽しまれています。
フライ・フィッシングの要素を大きく4つに分けると次のようになります。いずれの分野も一朝一夕で身につくものではなく、奥の深い趣味と言え、この釣法の独特の技術と趣味性から、一般的にはハードルが高いという面も確かにあります。
1)キャスティング
フライは非常に軽量で、フライフィッシングでは錘(オモリ)は使わず、釣り糸(ライン)自体の重さによってフライを投入するため、キャスティングを習得することから始まります。
これは他の疑似餌を使う釣り、ルアーフィッシングなどではその重量によって遠方まで投入できるのと大きく異なり、ラインを前後に振り、勢いと方向性を付け投げる「オーバーヘッドキャスト」、頭上後方までゆっくりロッドを立てた後前に振り、水面をラインが転がるようにして投げる「ロールキャスト」、ラインの一部を水面に触れさせた状態で後方にループを形成し投げる「スペイキャスト」など、方法は多岐にわたります。
原理的には革紐や鎖などの鞭(むち)を振りかざす動作に似せて、フライを目的とするポイントへ投入し、フライを手元でたくみに動作させる。引き寄せる際にはリトリーブといいます。
本作でも、ロッドを何度も振って徐々にラインを伸ばして目当てのポイントにもっていくシーンが見られます。
2)ファイト
ヒットした魚を釣り上げる技術のことであり、他の釣りに比べると魚とロッドとの間にあるのはラインのみであり、オモリや疑似餌の重量などに邪魔されず、直接的に魚とやり取りができるためエキサイティングな手応えとなります。
本作でも、ポールは、キャッチネットを使わず、ヒットした大物の取り込みに急流に入って獲物に対峙しました。
3)タイイング
魚の食べている物に似ている (imitate)フライを製作すること。本作では、このシーンは見られませんが、フライフィッシングの重要な要素に違いありません。
4)自然観察
フライフィッシングの哲学とも言われ、その所以は、釣りをする時期の、現地に棲む水生昆虫や小魚の種類を確認し、魚が捕食していると思われる餌に似たフライを選ばなければ釣果につながらないからです。
本作でも、ノーマンにたかった虫を見てフライを決めるシーンがありました。フィッシングサイトにあったフライを使うのは言うまでもありません。
4.まとめ
モンタナの美しい自然を背景に、若きブラッド・ピットの輝きと、古き良きアメリカは、必ずしも美しいだけではなく、醜い差別もある社会でした。人間は時と共に変化しても、自然だけは時と共に流れていく。醜い大統領選を繰り広げるアメリカにもこんな感性があったことに驚きます。