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映画『ミネソタ大強盗団』ニューシネマ系西部劇の走りです?!

この映画『ミネソタ大強盗団(The Great Northfield Minnesota Raid)』は、クリフ・ロバートソン主演、ロバート・デュヴァルが共演した、1972年制作のアメリカ合衆国の西部劇映画です。

目次

 

 

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1.紹介

西部開拓時代末期に実在したジェシー・ジェイムズとコール・ヤンガー率いる強盗団ジェイムズ=ヤンガー・ギャングを描いた西部劇で、実録の銀行襲撃を描いています。
この後、名作『ライトスタッフ』(1983年)などで奥深い演出を見せるフィリップ・カウフマンの、ユーモアを交えて軽快な演出を見せています。
現代風の西部劇であり、名カメラマンのブルース・サーティースの自然を活かした映像や、デイヴ・グルーシンの音楽も注目です。


2.ストーリー

1)プロローグ

1870年代、西部開拓時代のアメリカ・ミズーリ州では人々は鉄道会社に土地を追われていました。そんな鉄道会社の横暴に立ち上がったのがアウトローのコール(クリフ・ロバートソン)、ジム(ルーク・アスキュー)、ボブ(マット・クラーク)のヤンガー兄弟、フランク(ジョン・ピアース)とジェシーロバート・デュヴァル)のジェームズ兄弟率いる無法者集団“ジェイムズ=ヤンガー・ギャング”でした。
彼らは鉄道会社の者たちを襲撃しては痛めつけていき、中西部一帯でその悪名を轟かせていきました。

 

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2)恩赦の動き

1876年。州議会はギャング団に感謝する人々もおり、彼らの追跡を中断することは州の平和にも繋がるとの判断から彼らの恩赦を検討し始めていました。

しかし、ギャング団への復讐を目論む鉄道会社はピンカートン探偵社に依頼してギャング団の執拗な追跡を続行していました。

逃走資金を得ようと考えたジェシーは広告で見かけたミネソタ州ノースフィールドの銀行を襲撃することを思いつきますが、逃亡の最中コールは襲撃を受けて重傷を負い、その間にジェシーたちはノースフィールドに向かってしまいました。


3)恩赦の取り消し

一命を取り留めたコールは先走ったジェシーたちの後を追い、途中でかつての仲間だったクレル・ミラー(R・G・アームストロング)を銀行襲撃に誘うとジェシーたちよりも先回りするために列車に飛び乗りました。

その頃、州議会は鉄道会社とピンカートン探偵社から賄賂を受け取り、ギャング団の恩赦を一転して取り消していました。


4)合流と準備

ジェシーたちよりも先にノースフィールドに到着したコールは南部から来たという牛の仲買人を騙って業績不振のファースト・ナショナル銀行の頭取に近づき、弱みに付け込むと「あんたの銀行に金を集めてやろうじゃないか」と持ち掛けました。コールは警備員に扮した仲間たちを銀行に紛れ込ませて金を銀行に預け入れました。

コールたちは銀行を信用していない地元住民に対しては表向きでは羽振りが良いようにふるまい、「この辺りでは強盗が多いそうだな。全財産を奪われた人もいるそうじゃないか。俺なら金をこの銀行に預けるよ」と人々に預金を進める一方で、住民の不安を煽り立てるべく強盗行為を繰り返していました。しかし、実際にコール一味が銀行に預けたのは金ではなくただの石ころでした。

その頃、町では野球が流行り始め、蒸気で動く自動車やオルガンなど最新鋭の技術にコールたちは目を見張りました。

コールたちに遅れてミネソタ入りしたジェシーたちは、途中で地主に土地を追われそうになっている老婦人の話を聞くと地主を殺害しました。そしてジェシーたちはノースフィールドに到着、コールたちはジェシーたちと合流すると売春宿で羽目を外しました。

 

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5)襲撃

そして銀行襲撃の作戦当日。コールは仲間たちに襲撃計画の詳細を話すとジェシーらと共に銀行に押し入り、他の仲間たちは外で待機することになりました。

いざ金庫の現金を奪おうとしたその時、気が狂った町の老人グスタフソン(ローヤル・ダーノ)が蒸気オルガンをいじろうとして騒ぎを起こし、イラついたギャング団の仲間がグスタフソンを射殺してしまいました。

グスタフソンは今まで一度も音が鳴ったことのない蒸気オルガンの上に倒れこみ、オルガンは急に大きな音を出してしまいました。この騒ぎに驚いた銀行員は金庫にロックをかけてしまい、ジェシーは銀行員を射殺するも仲間の一人が金庫の中に閉じ込められてしまいました。

 

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6)追跡

ギャング団の銀行襲撃は瞬く間に町中の住民の知るところとなり、金を奪うことに失敗したコールたちは逃げ遅れたボブを助けつつ逃走しますがクレルが銃撃されてしまいました。
住民たちは金庫に閉じ込められていたギャング団の一人を射殺、住民のアレン(ダナ・エルカー)やマニング(ドナルド・モファット)らは捜索隊を組織して前日ギャング団が遊んだ売春宿に向かい、その場にいた男たちをギャング団の一味と勘違いして全員縛り首にしてしまいました。

何とか逃げおおせたギャング団はジェシーが助けた老婦人の家に匿われ、老婦人は負傷したボブのために医者を呼ぶことにしました。ジェシーとフランクは老婦人に同行しましたが、時を同じくしてアレンとマニングは森の中でジェシーに殺された地主の遺体を発見し、そばにジェシーが捨てた老婦人の人形が落ちていたのを確認しました。

コールらはアレンたちに居場所を突き止められて襲撃され、捕まって町に連行されました。ギャング団で無事に逃げ延びたのはジェシーとフランクだけでした。

 

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7)エピローグ

その後、ジェシーは6年後に仲間に裏切られて射殺され、10数発の銃球を浴びながらも一命をとりとめたコールは1916年にその生涯を閉じました。

 

 

3.四方山話

1)ベースボール

事件が起きた1876年はメジャーリーグが発足した年でもあり、そのことへのオマージュであろうか、じっくり見せてくれています。初期の野球を楽しむ人々の様子は必見の価値がありますす。


2)ニューシネマ系西部劇

本作は、フィリップ・カウフマンのハリウッドデビュー作です。いわゆるニューシネマ系西部劇の隠れた名作で、その同時代における、例えばペキンパーの 『ケーブル・ホーグのバラード』(1970年)にも通じるような、終わりゆく時代や時代遅れな者たちへの挽歌を奏でた1970年代アメリカ映画ファンには外すことの出来ない作品となっています。撮影監督のブルース・サーティーズは、イーストウッド映画の常連でした。


3)コール・ヤンガー

ジェシー・ジェイムズは「西部のロビンフッド」と仇名されるほど義賊として名高く、映画では1930年代から度々登場している伝説の人物。かたやコール・ヤンガーは、その相棒として記憶されていますがその歩みはドラマ性に乏しいきらいがありました。

本作では、革製の防護服を子供たちに見せ、何発も銃弾を浴びたが不死身であることを自慢するパフォーマンスの反面、州議会が特赦を論議する間は犯行を諫めるなど、自分たちの置かれた立場を冷静に読み行動する目端の利いた面もあるように描かれています。

本作は、のちに話題となったウォルター・ヒル監督の『ロング・ライダーズ』(1980年)とともに、コールが中心人物として捉えられた数少ない作品ではあります。

 

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4.まとめ

本作の監督カウフマンは時代考証を忠実に投影し、リアリズムを追及しながら、変革について行けない強盗団を俯瞰で捉え、かなり突き放して描いています。