凸凹玉手箱

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映画『シコふんじゃった。』爆笑の学園相撲コメディです?!

この映画『シコふんじゃった。』は、監督・脚本は周防正行。主演は本木雅弘。1992年に公開されました。

目次

 

 

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1.紹介

ひょんなことがきっかけで、弱小相撲部の部員となってしまった主人公が、相撲の面白さに目覚め、奮闘する姿を面白おかしく描いた、スポーツエンターテイメント作品です。
第35回ブルーリボン賞作品賞ならびに第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品で、周防正行監督の出世作となりました。


2.ストーリー

1)プロローグ

伯父のコネで一流企業への就職を決めていた教立大学生・山本秋平(本木雅弘)は、卒業に必要な単位を卒業論文の指導教員である穴山冬吉教授(柄本明)に無心したところ、単位を与える条件として、大学相撲部の助っ人として大会に参加することを求められました。
穴山研究室に属する大学院生で相撲部マネージャーを務める川村夏子(清水美砂)の勧めもあり、秋平は渋々ながらこれを承諾しました。


2)新生相撲部

相撲部には留年を重ねた青木富夫(竹中直人)しか正規部員はおらず、所属は最下部である三部リーグ。秋平と青木は苦労して5人制の団体戦出場に必要な助っ人メンバーを勧誘し、秋平の弟・春雄(宝井誠明)と肥満体の田中豊作(田口浩正)が加わりました。

 

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しかし素人集団の悲しさで、大会では全員全敗での惨敗。慰労会でOBから痛罵されたことに秋平は反発し「次は勝ってやる」と言い放ってしまいました。

秋平たちは引き続き相撲に取り組むことになり、ラグビー経験者のイギリス人留学生・ジョージ・スマイリー(ロバート・ホフマン)を引き入れます。さらに、夏休みには相撲部監督である穴山の実家で合宿を行いますが、それはなぜか練習らしい練習もせずに、ひたすら食べては寝るだけという内容でした。

合宿も終わりに近づいたころ、秋平たちは近所の小学生相手に練習試合を行います。しかしながら、大人気なく全力で小学生たちと戦う秋平たちの姿を北東学院大学の相撲部員たちに嘲笑され、秋平たちは奮起しました。


3)怒涛の躍進

力をつけた秋平たちは次の三部リーグ戦で見事に勝ち、二部リーグとの入れ替え戦に進むことになりました。しかし三部リーグ戦で春雄が骨折しており、秋平も怪我を抱え、7人制となっている入れ替え戦への出場が危ぶまれました。

そのとき、春雄に憧れてマネージャーとなっていた巨体の持ち主の間宮正子(梅本律子)が出場を志願し、男に扮することにしてメンバーに加わりました。試合当日、髷を結い、両胸を隠すために肩から包帯とテープを巻いた正子は善戦しましたが敗れてしまいます。
だが彼女の姿に相撲部員たちは奮起し、大将戦で秋平が勝ちを収めて教立大学の二部昇格が決まりました。

 

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4)エピローグ

昇格後、豊作は大相撲にスカウトされ、スマイリーは帰国、正子と春雄はロンドンへ留学、青木も卒業。秋平は就職を辞退してもう一年相撲部を続ける決意をすることになりました。
練習所でシコをふむ唯一の相撲部員・秋平の横に夏子が現れ、二人は向かい合ってシコをふむのでした。

 

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3.四方山話

1)撮影

舞台とした大学(教立大学)は名前からも推測できるように、周防監督の母校である立教大学相撲部がモデルですが、相撲部の場面は立教大学構内では撮影されていません。
映画を撮影するにあたり、映画監督の周防正行とプロデューサーの桝井省志は、立教大学相撲部監督(当時)の堀口圭一に様々な相撲関係の人脈の紹介を受けました。
柄本明が演じる穴山教授は、元学生横綱の設定であり、本作で相撲指導をつとめた堀口圭一がモデルになっています。周防正行と桝井省志は、堀口圭一の紹介で、東京大学慶應義塾大学、法政大学などの相撲部も取材しました。映画の公開から26年が経過した2018年3月に周防は立教大学相撲部の「名誉監督」に就任しました。


2)相撲観戦記

冒頭および中盤でも、柄本明演じる穴山が読み上げるジャン・コクトーの相撲観戦記は1936年の来日時のもので、彼のエッセイ『僕の初旅』(Mon Premier voyage)に収録されています。

訳詞は、その時コクトーを案内していた堀口大學によるものとみられます。

土俵の上では、銀の装束、漆の烏帽子、昆虫の触角という扮装に、
彼らの職権を象徴する硝子なしの
鏡のようなものを持ち添えた行司に見守られて、
両力士は、互いに観察し合っている。
立ち会いはほんの数秒しかかからないのだが、
仕切りの一度一度が、沈黙に区切られる叫喚の嵐を捲き起す。
力士たちは、桃色の若い巨人で、
シクスティン礼拝堂の天井画から抜け出して来た
類稀な人種のように思える。或る者は伝来の訓練によって、
巨大な腹と成熟し切った婦人の乳房とを見せている。
ただし、この乳房も、決して肥大漢のそれではない。
それは古昔の美学に準拠して特殊の割合で分布された力を示している。
他の者は、僕らの国の競技場で見かけると同じ筋骨を見せている。


3)オーディション

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間宮正子役は一般からのオーディションで演者が選ばれました。「週刊明星」、「月刊明星」との合同企画で募集記事が掲載され、記事には「映画で本木雅弘と共演出来る」と銘打っていたましたが、ストーリーや役どころなど具体的な内容は一切記載されていませんでした。ただ「極度の肥満体型」「若い女性」のみが応募条件でした。
その梅本律子さんは、小学生時代に校内相撲大会女子の部で横綱になった経験を持つそうです。

 

4.まとめ

本作は、役者の演技力で魅せる作品ではなく、脚本での物語の筋や構成と、監督の演出で魅力的に仕上げている作品で、出演者の側は、身体を張った相撲シーンとかを頑張った、というところに、価値と見せ場がありました。

本木雅弘清水美砂という有名どころをキャストに起用してはいるけど、そういうキャストの人気ありきで配役して作品の質よりも話題性等で客を呼ぶのではなく、ちゃんと監督が、素材である出演者を料理して、魅力的な作品に仕上げていて、ある意味、真面目というかまともな作品です。