凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『戦国自衛隊』まさに時代を超えた名作です!!

 この映画映画『戦国自衛隊』は、芸能生活20周年の千葉真一がアクションを監督し、主演した1979年の日本映画です。原作は半村良SF小説戦国自衛隊』です。誰もが驚くのが、この「戦国時代に自衛隊を送り込む」という発想です。原作をみてまた驚くのがその薄さです。

 

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この発想は、とても独創的でありながら、誰もが思いついてしまえば書きたがるジャンルでもあって、作者はこういっています。
「この作品が短編であったのには理由がある。本来ならもっと長い小説になるはずだったが、とにかく発表を急がねばならなくなったからだ。雑誌の編集部から急かされたわけではなく、この種の作品はアイディア本位で、早い者勝ちだと思ったからだ。もともとミステリーやSFにはそういう傾向が強く、まだ内容的に不十分だと思っても、一番乗りをした方がよかったのだ。」(世界文化社 漫画版『戦国自衛隊』「ふたたびのあとがき」より)

かく、原作者自身が浮足立ってしまうほど魅力的な発想であることに間違いはありません。

 

そして、力を持つことがラッキーとは限らないかもしれない。力を持ったところで、その力をちゃんと使えるのか・自分にとっては正義だけど、他の人が同意してくれるしは限らないし、その重みに耐えられるのだろうか。と問いかけています。

 

戦国時代へのタイムスリップによって、そんな力を持ってしまった自衛隊の小隊のストーリーです。千葉真一が演じる伊庭大尉以下、21名の隊員は演習中に戦国時代にタイムスリップしてしまいます。時は戦乱の世の中、現代の最新兵器をもつ自衛隊は当然圧倒的な存在となります。

 

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最初は時代に干渉することを恐れて行動を渋っていた伊庭大尉でしたが、夏八木勲演じる上杉謙信と意気投合し。「現代人のオレたちが天下を獲ったら、歴史の復元力が働いてタイムスリップが起こり、現代に帰れるだろう」という、まぁわけのわからない考えから一緒に天下を目指すことになってきます。

 

この時点では、伊庭大尉をふくめて隊員たちはこの時代を舐めているわけで、それもそのはず、相手が弓矢とか打ってきても、機関銃でダダダと撃てば一瞬にして相手は全滅。上杉と組んで銃をぶっ放し、城の中で斬り合いをしてる最中にヘリコプターで脱出するなどやりたい放題の連戦連勝となります。

 

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ついに上杉・伊庭は川中島武田信玄との対決に臨むことになりますが、伊庭は前夜の作戦会議で援軍を断り、数十倍規模の武田信玄の軍勢は自分たちだけで倒す、と言い放ちます。「信玄は手強いですぞ」という声を笑い飛ばす伊庭。自分たちの力に絶対の自信をもっていたのですが。

 

この映画のようなジャンル、いわゆる架空戦記ものの醍醐味と言えば、スポーツでいうプロレスVsボクシングのような異種格闘技のおもしろさであって、銃Vs弓矢、戦車Vs騎馬隊など、兵器や戦法の対決もあるが、人間の部分もあって、現代人Vs戦国時代人という視点です。

 

この川中島の合戦、武田軍は自分の命を捨てて突っ込んできます。銃で撃たれても撃たれても次々と戦車や機関銃を撃つ人間へ突撃してきて、現代人とは命の考え方がまるで違うのです。圧巻は戦車が待ち伏せをくらうシーン。戦車の前に、槍をもつ部隊が立ちはだかり、命をかけて進軍を開始します。その部隊の顔はあまりにも幼い少年兵たち。無情の光景に戦車を操縦するものも、銃を撃つ隊員も、言葉がつまり動くことができなくなるという名シーンが展開します。

 

現代人が甘いとか言ってるのではなく、むしろ戦国時代の人間と対決することで、現代人が今持ってる価値観の尊さを感じさせてくれ、現代の我々が過去から何を学び、何を反省し、何を大事にしているかを思い起こさせるような、心に突き刺さる感覚がわいてきます。そして圧倒的な力を持っていながら、油断と傲慢さで追い詰められてパニックになっていく自衛隊の悲哀に、人間臭いドラマを感じさせてくれるのでした。

 

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この川中島の合戦シーンですが、なんと30分もあって、爆発、チャンバラ、銃撃から肉弾戦のてんこ盛り。加えてヘリからジャンプする真田広之、騎馬隊相手に一人で迎え撃つ千葉真一など名シーンがぞくぞく出てきます。最近はスタイリッシュとかクールとか言いますが、このアクションシーンはそんなの微塵も感じさせない泥臭さ。しかしこの泥臭さ、男っぽさがかっこ良く、それにサービス精神を感じます。とにかく日本映画史上に残るアクションシーンとなりました。

 

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この作品はアクション娯楽作品の体をとりながら、続々と出てくる理不尽なシーンをもって、戦争、時代、価値観、力を持つと言うこと、など様々なものを雄弁に語っている映画で、わかりやすい説教シーンはありません。しかしながら、よくできた物語世界は、台詞以外にも多くのものを感じさせてくるもので、この作品もそのひとつといえるでしょう。