凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『オデッセイ』は火星独りぼっちのサバイバル映画です!!

この映画『オデッセイ』(原題: The Martian)は、アンディ・ウィアーの小説『火星の人』(2011年)を原作として、2015年に公開されたアメリカ合衆国SF映画で、監督はリドリー・スコット、主演はマット・デイモンが務めています。

 

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邦題を『オデッセイ』としていますが、オデッセイとは「古代ギリシャの詩人ホメロスが書いた叙事詩」で、そこから発生した意味として「長期の放浪。 長い冒険。」となります。原題の「The Martian(火星人)」よりは抒情的で好もしくはありますが、それでもピタッときません。

 

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パンフレットにあるマット・デイモンのインタビューによれば、「リドリーはロビンソン・クルーソーの映画を以前から作りたいと思っていたそうで、それと本作との共通点をあげ、本作はその思いを遂げるチャンスだと言った」そうで、火星に一人置き去りにされた宇宙飛行士の生存をかけた孤独な奮闘は、無人島でのサバイバル生活に通じるものがあります。

無人島といえば、2000年のトム・ハンクス主演作品で『キャスト・アウェイ』があります。やはりサバイバル生活が映画の約半分のシャクをとっています。

本作『オデッセイ』は9割以上がマット・デイモン扮する主人公ワトニーの一人芝居で見せる映画になっています。一方、『キャスト・アウェイ』は無人島サバイバル生活ばかりでなく、主人公日常生活の社会環境と帰還後の浦島太郎状態を描いている分一人芝居のシャクが短くなっています。

どちらにしても、トム・ハンクスは第58回ゴールデングローブ賞では主演男優賞(ドラマ部門)を受賞し、第73回アカデミー賞では主演男優賞にノミネートされました。

マット・デイモンの方は、第73回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(ミュージカル / コメディ部門)と作品賞を受賞、第88回アカデミー賞では主演男優賞と作品賞がノミネートされていて、この一人芝居競争(?)は客観的には互角の評価を受けているといえるでしょう。

 

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ちなみに、マット・デイモン演じるワトニーのサバイバル能力の中で、リドリー・スコット監督が特に強調しているのは、ワトニーのユーモア心で、日々の活動をビデオに残すについて、対外的にアピールしたりサービス精神やユーモア心を見せるのは当然ですが、本作ではそれ以外の完全なプライベートな生活でも、ワトニーのユーモア心みせていて、下手すると退屈になりがちな本作前半の一人芝居でも観客を楽しませることができたからこそ、9割のシャクの一人芝居を成立させたわけです。

物語は、火星探査中、不運が重なりひとり取り残されてしまった飛行士のワトニーは、次の探査機が来る4年後まで残されたわずかな物資をやりくりして生き延びるハメに陥りました。地球との連絡手段がなくなって情報源は自分の頭の中だけ、生死に関わる四面楚歌の中、ワトニーは決して悲観的にならず次善の策を考え続けるのでした。生物が生きるにはあまりに過酷な惑星環境での一縷の望みは、彼が植物学者であったことでした。

 

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ドキュメンタリータッチかつ現実感ある映像で、描写についての考証は映画としてはかなりな線の部類に入るといえ、なにしろNASA全面協力の下、映画の公開に合わせるように関連の話題まで提供し、探査機の高精細な火星表面画像しかり、劇中の展開そっくりな宇宙作物の栽培ニュースしかり、長期間の疑似火星環境における居住実験などなど、いたれりつくせりのバックアップがありました。

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もっとも、この映画の中で、結構現実の実験結果などそれなりに根拠があるものが少なくなく、むろんフィクションはたぶんに織り交ぜてありますが、基本的には現時点で想像、予想できる範囲のもので、マット・デイモンの達者な一人芝居も相まって、見事に本格的な火星独りぼっちサバイバルドラマになっています。

無人島生活とやらでサバイバルをするリアリティショーが日米ともに人気ですが、その究極版みたいなものといってもいいのかも知れません。