目次
1.紹介
仇討ちの追ってが迫る、時間を追った緊迫感のあるストーリーや、主人公リンゴを取り巻く人間模様、ガンマン志望の青年に稼業の空しさを説きながら死んでいく男の生き様など、多くの見所があるドラマに仕上げたヘンリー・キングの演出や、それを大いに盛り上げるアルフレッド・ニューマンの音楽も印象深いものです。
『怒りの葡萄』(1940年)などのシナリオライターのナナリー・ジョンソン製作というところも注目です。
第23回アカデミー賞では、原作賞にノミネートされました。
2.ストーリー
1)プロローグ
1880年代のアメリカ南西部、無法者の中でも、最も早撃ちと噂される、テキサス人のジミー・リンゴ(グレゴリー・ペック)は、足を洗い妻と息子の元に帰ろうとしていました。
リンゴは、立ち寄った町の酒場で、若造エディ(リチャード・ジャッケル)に絡まれ、仕方なく彼を撃ち殺してしまいます。
正当防衛は認められましたが、エディには3人のならず者の兄がいて、客達はリンゴにその場を立ち去ることを勧めました。
リンゴは、追手の先手を打ち、3人の兄達を威嚇し、時間をかせぐために彼らの馬を放ちました
2)カイエンヌの酒場
その後、リンゴは、妻子のいるカイエンヌに向かい、酒場の主人マック(カール・マルデン)に再会します。
マックは、即刻、連邦保安官のマーク・ストレット(ミラード・ミッチェル)に通報しました。
ストレットは、知人であるリンゴに、妻は身を隠し生活をしているため、彼には会いたがらないであろうと言いました。
町は”早撃ちリンゴ”の話題でもちきりになり、リンゴに息子を殺されたと思い込むマーロー(クリフ・クラーク)は、仇を討とうと酒場の入り口を銃で狙います。
3)かなわぬ再会
学校の教師をしている、リンゴの妻ペギー(ヘレン・ウェスコット)は、男の子がリンゴーを見るために学校にこないため、女の子からリンゴーが来たことを知らされています。
ペギーの元に向かったストレットは、彼女がリンゴに会わないということを確認して酒場に戻りました。
リンゴに彼女の意思を伝えたストレットは、外の野次馬の中に、彼の息子がいることを伝えますが、どの子が息子かわからないリンゴは、酒場の歌手モリー(ジーン・パーカー)から、妻ペギーを連れてくると言われて待つことにしました。
モリーは、リンゴが以前とは人が変わったことをペギーに告げて彼と会うように言いますが、彼女にそのつもりはありませんでした。
4)危険な男たち
功名心に捕らわれたハント・ブロムリー(スキップ・ホメイヤー)がは、無謀にも酒場のリンゴの前に現れました。
ハントはリンゴに簡単に追い払われますが、一方、弟エディをリンゴに殺された3人の兄達は、馬と銃を調達してカイエンヌに向かいました。
ストレットはハントを事務所に呼び出し、町を出て行くよう警告し、必要ならガンマンを全て留置することを保安官補チャーリー(アンソニー・ロス)に伝え、酒場を見張らせました。
酒場の入り口を狙うマーローに気づいたリンゴは、彼を捕まえて留置場に拘留し、濡れ衣を晴らそうとします。
5)旅立ちの前に
無法者を野放しにする、ストレット保安官に抗議に来たペニーフェザー夫人(ヴェルナ・フェルトン)らは、リンゴとは知らずに居合わせた彼の意見を聞き入れるのですが、目の前にいるのが本人だと知らされ驚いて退散しました。
リンゴは、かつて無法者仲間だったストレットが、どうやって連邦保安官になったかを聞き、自分も一緒に足を洗い、ペギーのところに帰るべきだったと述懐しました。
リンゴが酒場に来たことで客が増える分の分け前を、町一番の美人だという”学校の先生”に渡すことに決めたリンゴは、それがペギーとも知らずに、マックに託して別れを告げるのでした。
6)かなった再会
その時、モリーが、ペギーをリンゴの元に連れてきました。
牧場を買い、平穏な暮らしをする提案をペギーにしたリンゴでしたが、彼女は息子のことを考え、一生逃げ回る生活はできないと頑なにそれを断ります。
リンゴは、1年後に再び会い、自分が変わっていれば考え直してくれとペギーに伝え、息子に会おうとしますが、その頃、3兄弟が町に到着します。
息子に会ったリンゴは、自分の正体は明かさずに町を去ろうとしました。
7)因果応報
3兄弟は、納屋で待ち伏せしてリンゴを襲おうとしますが、保安官補チャーリーが彼らを見つけ、ストレットが拘束しようとします。
しかし、旅立とうとしたリンゴを、隠れていたハントが背後から銃撃しました。
傷を負ったリンゴは、粋がるハントにガンマンの成れの果てを教え込みながら息を引き取るのでした。
ストレットはハントを叩きのめし、街から追い出すことを告げました。
8)エピローグ
リンゴの葬儀の日、ペギーは堂々とリンゴ夫人を名乗って参列し、新たに”無法者”になったハントは街を出てゆきました。
3.四方山話
1)無法者
まだ30代前半のグレゴリー・ペックは髭を貯え、日本の吹き替え(城達也)のイメージとは全く違う太くて低い声で、年齢以上に貫禄がありますが、悪党稼業から足を洗うという設定なので、その役にかろうじて収まっているという感じは否めません。
髭やコスチューム、そして雰囲気が無法者には見えず、端正な品格が見えてしまうのは仕方がありません。
2)ジミー・リンゴ役
この役はジョン・ウェインが切望し、コロンビアのハリー・コーンが、彼に主演をさせるために映画化権を買い取りましたが、ウェインはコーンのために働くことを拒否し、結局20世紀FOXに権利が売られてしまったという経緯がありました。
3)尺
物語はプロローグの後、カイエンという町にリンゴが朝7時50分に訪れてから、8年前に別れた妻と息子に再会する10時15分までの短い時間の出来事となっています。
主要場面となる酒場、保安官事務所、妻ペギーが教師として勤める教会、そして床屋など限られた場面に色々な人物が絡んで、登場し、追手から逃げるリンゴの焦りと別れた妻子への恋慕を巧みに演出しています。
サスペンスの効いた舞台劇の趣向を凝らした異色西部劇です。
4.まとめ
早撃ちガンマンという名声の裏にある苦悩を描いた名作です。はでな銃撃戦は一切ありませんが、全体を通して緊張感が漂っており、一瞬も油断できない主人公をグレゴリー・ペックは素晴らしく演じ切っています。
それにしても、時代とは言え何ともダサい邦画題名なことでしょう。