この映画『地獄への道(Jesse James)』は、1939年に製作・公開されたアメリカ合衆国の西部劇映画です。実在したガンマンのジェシー・ジェームズをタイロン・パワーが演じ、ヘンリー・キングが監督しました。
目次
1.紹介
西部開拓史で名高い無法者ジェシー・ジェームズの波乱の人生を描いています。無法者が暴れ回るだけの内容ではなく、悪党ではあるものの人々に愛された、主人公ジェシー・ジェームズの人間性を中心に、ユーモアをまじえた軽快で切れ味鋭いヘンリー・キングの演出が見どころの作品です。
豪華スター競演の中で、撮影当時24歳主演のタイロン・パワーは、人間味あふれる主人公ジェシー・ジェームズを魅力的に演じています。
2.ストーリー
1)プロローグ
南北戦争後、大陸横断鉄道が西へと敷かれ、その際に、時として強引な方法で土地が奪われました。
鉄道会社”セントルイス・ミッドランド”の代理人のバーシー(ブライアン・ドンレヴィ)は、無知な農夫の弱みに付け込み、土地をタダ同然で手に入れていました。
2)鉄道会社の横暴
作業中のジェシー・ジェームズ(タイロン・パワー)に声をかけたバーシーは、農場の持ち主が母親のサミュエルズ夫人(ジェーン・ダーウェル)だと聞きます。
バーシーから鉄道のことを聞き、契約書のサインを求められた夫人は、弁護士と話してから決めるといいました。
夫人の息子フランク(ヘンリー・フォンダ)は、強引にサインさせようとするバーシーを不審に思って、彼を殴り倒して追い払おうとしました。
バーシーの指示でフランクに襲い掛かろうとした部下でしたが、ジェシーが銃で彼らを脅します。
一対一で対決すると言うフランクはバーシーと格闘になり、彼を叩きのめしますが、バーシーは、隙を見てカマで襲い掛かろうとしますが、ジェシーが手を撃って彼らを追い払いました。
その様子を見て動揺した心臓が悪い夫人は気分が悪くなり、フランクは医師を呼ぶようジェシーに言いました。
ジェシーは、使用人のピンキー(アーネスト・ホイットマン)に医師を呼びに行かせ、その足で農夫が集まるようにふれさせました。
3)懸けられた嫌疑
新聞社”リバティ・ウィークリー”の編集長ルーファス・コッブ少佐(ヘンリー・ハル)は、姪のゼレルダ(ナンシー・ケリー)と共に、農民を苦しめる鉄道会社の批判記事を考えていました。
そこにバーシーが現れ、何かあったと考えるコッブは、特ダネを求めて保安官事務所に向かいます。
バーシーは、フランクとジェシーを殺人未遂罪で逮捕するように連邦保安官(アーヴィル・アルダーソン)に迫り、コッブは彼の手の傷を確認しました。
戻ったコッブがジェシーの話をしたため、ゼレルダは、恋人である彼に何かあったのではないかと考え心配しました。
4)懸けられた賞金
農夫を集めてフランクと共に集会を開いたジェシーは、金を出し合い弁護士を雇うことを提案します。
そこへ現れたたコッブから、逮捕状が出たことを知らされたフランクとジェシーは、とりあえず逃げて身を隠すようにと言われ、心配する母の身を案じながら出発することにします。ピンキーに居場所を知らせたフランクとジェシーは、馬に乗り農場を離れました。
連邦保安官と共に農場に着いたバーシーは、兄弟は逃がしたと言うコッブの言葉を信じず、バーシーは家の中にダイナマイトを投げ込み、中にいた夫人は死亡しました。
謝罪するバーシーにコッブは、兄弟の母親が死んだので、気の毒なのはお前だと言い放ちました。
山で隠れていたフランクとジェシーは、現れたゼレルダから、母がバーシーに殺されたことを知ります。
ゼレルダをフランクに任せたジェシーはリバティに向かい、酒場にいたバーシーを殺してその場から逃げました。
セントルイス・ミッドランドは、1000ドルの賞金を懸けてジェシーを捜すことになりました。
5)自主と結婚
その後フランクとジェシーは、セントルイス・ミッドランドに復讐するために強盗団を組織して汽車を襲います。
セントルイス・ミッドランドの社長マッコイ(ドナルド・ミーク)は、連邦保安官のウィル・ライト(ランドルフ・スコット)に、犯人はジェームズ兄弟に違いないと伝えました。
ジェシーの賞金は5000ドルになっていました。
現れたジェシーの身を案ずるゼレルダだったが、コッブは彼の行動を支持します。
ゼレルダに惹かれているウィルが現れ、彼女はジェシーを”トーマス・ハワード”と言って紹介しました。
ウィルは、相手がジェシーだと知りながら、彼を牽制してその場を去ります。
外でジェシーが出て行く姿を見ていたウィルは、結婚しない理由が彼であることをゼレルダに問いました。
郊外でジェシーに会ったゼレルダは、自首すれば減刑するというマッコイからの手紙を見せ、ジェシーを説得しました。ジェシーは、自首する前に結婚することを申し込み受け入れられるのでした。
フランクと共に教会へ向かったジェシーとゼレルダは、かつて鉄道会社に農場を奪われた牧師(スペンサー・チャーターズ)に歓迎され、結婚式を挙げました。
6)仕掛けられた罠
自首したジェシーは、友好的なウィルに連行されてマシューズ判事(ジョン・エリオット)の元に向かい、留置場に入れられました。
軍隊を呼んだマッコイが、約束を破ってジェシーを絞首刑にしようとすることを知ったウィルは、強盗に同情するマシューズ判事をランキン判事(エドワード・ルセイント)代えたと言われ、ジェシーを助けようとします。
コッブと話したウィルは、ゼレルダがピンキーと共に山に向かったことを知りました。
マッコイとランキンは、ピンキーが届けたフランクからの手紙を確認し、ジェシーの釈放を要求する内容に思わず笑ってしまう。
看守(スリム・サマービル)は、フランクが計画したことを必ず実行するとマッコイにいいました。
レンガ造りの留置場と兵士が守っているために、マッコイは不可能だと考えますが、兄弟は本気だと言うウィルは警戒します。
兄弟が脱獄を実行して、マッコイを痛めつけるという賭けで盛り上がる酒場で、ウィルはマッコイと共に助手を集めました。
7)始まった逃亡生活
予告した時間が迫り、コッブとゼレルダは、新聞社社員のロイ(ジョージ・チャンドラー)から、フランクが森の中で捕らえられたことを知らされました。
連行されてきたフランクに声をかけたウィルは、自分の差し金ではないことを伝えて理解してもらいます。
マッコイは、知事に話して解雇させることをウィルに伝えました。
その時、フランクの仲間だった保安官の助手が兵士たちに銃を向けました。
解放されたジェシーは、マッコイに約束した手紙を見せて、命乞いをする彼にそれをのみ込ませました。
看守に協力させたフランクとジェシーは、その場から逃げ、コッブは、ジェシーの元に向かうゼレルダに別れを告げるのでした。
追われるフランクとジェシーは現金をバラまき、追跡する男たちがそれに気をとられる隙に逃れました。
ジェシーの賞金は2万5000ドル、フランクは1万5000ドルとなりました。
ピンキーと共に森の小屋にいたゼレルダは、現れたジェシーとの愛を確かめますが、付近を通る馬車に乗る家族を警戒したジェシーは、その場を去ることにしました。
8)妻子との別れ
ジェシー息子を産んだゼレルダを、ウィルとコッブが見守っていました。
ゼレルダは、ジェシーを待ち怯えながら過ごす日々に疲れ果てています。絶望しかけるゼレルダを気の毒に思うコッブは、彼女の希望通りリバティに戻ることにしました。
家に戻ったジェシーは、ピンキーから、出産したゼレルダがリバティに向かったことを知らされます。
この生活を続けて行くことはできないので戻らない、子供には自分の名前を付けたというゼレルダからの手紙を読んだジェシーは、ウィルが一緒だと知り、ピンキーと共に彼女を追いますが、ゼレルダに辛い思いをさせたことを後悔するジェシーは、自分といても幸せに離れないと判断して引き返しました。
その件と自分のことを子供には話すなとゼレルダに伝えるようピンキーに指示したジェシーは、その場を去りました。
その後、ジェシーはセントルイス・ミッドランドや会社の銀行、急行列車を襲うことになります。
9)卑怯な大赦
5年後、リバティでは、コッブは、成長したジェシーJr.(ジョン・ラッセル)を可愛がっていました。
訪ねて来た染物会社の”ジョージ・レミントン”(J・エドワード・ブロムバーグ)から、知事の大赦を知らされたコッブは、仲間がジェシーを殺しても罪に問わないという内容を聞き驚きます。
それを知り動揺するゼレルダに、何かの間違いだと伝えたウィルは、ジェシーのことは忘れたと言う彼女を気遣います。
ジェシーの仲間であるボブ・フォード(ジョン・キャラダイン)の家を訪ねた”レミントン”は、妻(クレア・デュ・ブレイ)に大赦のことが書かれた新聞を渡します。
大赦の内容を知ったボブは、新聞を渡した男ジョージ・ラニアンの名刺とメモを確認し、彼が探偵でありホテルに滞在していることを知りました。
10)最後の襲撃
ミネソタの銀行を襲おうとする無謀な行動に、仲間達が不満を抱いていることを知ったジェシーは苛立って、フランクから家を出た後、心が乱れていることを指摘されます。
冷静になったジェシーはフランクに謝罪し、考えを改めさせてくれたことに感謝するのでした。
そこに現れたボブは、背後からジェシーを撃とうとするものの思い留まりました。
仲間たちに謝罪したジェシーは、次の襲撃に備えます。
ミネソタ州、ノースフィールドでは、銀行の頭取ヘイウッド(チャールズ・ハルトン)に会ったラニアンは、ボブから知らされた銀行襲撃の情報を知らせました。ラニアンは、取り乱すヘイウッドを落ち着かせました。
町に着いたフランクとジェシーは銀行に向かうものの、迎え撃つ準備をしていた者たちに襲われ、その場から逃げました。
撃たれたジェシーと共に川に飛び込んだフランクは、岸に上がります。ジェシーを見失ったフランクは、追手が迫るためにその場を離れました。
川の中で身を潜めるジェシーは、溺死したと思われるのでした。
事件のことを知ったゼレルダは、昔とは変わってしまったジェシーのことを思っても自分のためにはならないと言う、ウィルの意見を聞き入れるしかありませんでした。
傷を負いながらセントジョセフの家に戻ったジェシーは、その場で待っていたゼレルダに介抱され、成長した息子を見て驚き、自分の話はしていないことを知りました。
その後、一味の捜査は打ち切られて、ジェシーは死亡したと思われた。
11)裏切り
訪ねて来たボブに弟のチャールズ(チャールズ・タンネン)を紹介されたジェシーは、フランクが銀行襲撃を考えていることを知らされます。
ゼレルダと息子と共にカリフォルニアに向かう予定のジェシーは、それを断ります。
ジェシーが仲間の元に戻るのではないかと考えるゼレルダは、出発を前に気が気ではありません。
所持金がないジェシーは、ボブに誘われて迷います。
外で友達と騒ぐ息子の元に向かおうとしたジェシーは、チャールズから子供たちの前だと言われて拳銃を外しました。
遊んでいた息子を家に戻したジェシーは、午後の列車に乗ることをゼレルダに伝えます。
フランクにカリフォルニアから手紙を出すと伝えほしいと言って、ジェシーはボブとチャールズを見送りましたが、その後、出発の準備をするジェシーは、ボブに背後から撃たれてしまいました。
ジェシーの死を知ったゼレルダは泣き崩れました。
12)エピローグ
その後コッブは、無法者ではあったが、ジェシーを愛する者は多くいたことを葬儀に参列した人々に話します。
自分が知る限り、ジェシーは最高に魅力的な強盗だったと語るコッブは、記念碑を披露するのでした。
それには、
”1882年4月3日、34歳と6か月28日で、ジェシー・ジェームズは裏切り者の手により殺された。”
という文字が刻まれていました。
3.四方山話
1)続編
本作は好評価を得て、翌年、ヘンリー・キングに代わりフリッツ・ラングが監督して、本作でフランク・ジェームズを演じたヘンリー・フォンダが主演した続編『地獄への逆襲』が公開されました。
制作は前作と同じくダリル・F・ザナックが担当し、ジェシー・ジェームズを暗殺したボブ・フォード役のジョン・キャラダインも同じ役で出演しています。
2)モノクロ
本作は『西部魂(1941)』と同じく、テクニカラー映画として製作されましたが、輸入されたのは黒白版でした。
3)関連映画
『地獄への道』(1939年、ヘンリー・キング監督、演:タイロン・パワー)
『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』(1957年、ニコラス・レイ監督、演:ロバート・ワグナー)
『ミネソタ大強盗団』(1972年、フィリップ・カウフマン監督、演:ロバート・デュヴァル)
『ロング・ライダーズ』(1980年、ウォルター・ヒル監督、演:ジェームズ・キーチ(英語版))
『ワイルド・ガンズ』(1994年、ロバート・ボリス監督、演:ロブ・ロウ)
『アメリカン・アウトロー』(2001年、レス・メイフィールド監督、演:コリン・ファレル)
『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007年、アンドリュー・ドミニク監督、演:ブラッド・ピット)
4)ジェシー・ジェイムズ入門映画
時系列で言えば本作『地獄への道』が1番古く、この作品から入れば、ジェシー・ジェイムズを描く作品が何本も撮られた理由がすぐにわかってきて、まさに、ジェシー・ジェイムズ入門映画とも言えるでしょう。
本作がどのくらい事実に基づいているのかわかりませんが、強盗になるきっかけを描いていて、盗人で人殺しのジェシーの人生を、最も受け入れる事が出来き、民衆に英雄扱いされたわけが理解できる作品になっています。
鉄道会社に土地を安くで搾取された地域住民にとって、列車強盗を働くジェシーは英雄だったでしょうし、おまけに、鉄道会社が雇った男に母親を殺されています。
どうして、アメリカ人は無茶苦茶な男が好きなんだ?そんな思いが先行していましたが、他の作品は、いきなり英雄的悪党で描かれるので意味がわかりませんでした。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』を思い出せば、彼の伝説を知っている人向けだと気付き、演出も本作を踏襲しているいます。『ミネソタ大強盗団』にも描かれるミネソタ遠征も、本作にちゃんと描かれています。
4.まとめ
なるほど、ジェシー・ジェイムズの人生は波瀾万丈で冒険に満ちています。善悪を含有した稀有な男。西部劇映画にはよく似合います。