凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『バファロー大隊』ジョン・フォード監督の異色の西部劇です!!

 

この映画『バファロー大隊(Sergeant Rutledge)』は、監督ジョン・フォード、主演ジェフリー・ハンター、ウディ・ストロード出演の1960年のアメリカ映画です。西部劇ではありますが、法廷ドラマであり、一級のサスペンスせあり、黒人差別を扱った作品でもあります。

目次

 

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1.紹介

物語の舞台は法廷内だけに留まらず、フラッシュバックで見せるアパッチとの戦いや、見事なモニュメントバレーの景色なども堪能でき、超一級の娯楽作品に仕上がっています。

人種差別を絡めた少女の暴行殺人という、現代にも通ずる社会問題を、ユーモアを交えた、ジョン・フォードらしい切れのいい見事な演出で描く、彼の晩年の作品の中でもベストと言っていい傑作です。
当時、日本でも第9騎兵隊を称えるハワード・ジャクソンの主題歌である「Captain Buffalo」もヒットしました。
1956年の『捜索者』でフォードの期待に応えた主演のジェフリー・ハンターは、その時とは全く異なる実直な将校役を熱演しています。


2.ストーリー

1)エピローグ

物語の舞台は1881年アメリカ、アリゾナの合衆国陸軍南西地区本部。ここである軍法会議が開かれることから、物語は始まります。被告人はラトレッジ先任曹長(ウディ・ストロード)といい、屈強な黒人でした。ラトレッジは大勢の黒人兵からなる第9連隊、通称バファロー大隊の一員であり、勇敢な兵士として仲間に慕われていましたが、今彼は白人の親子殺害の容疑がかけられていました。


2)軍法会議

ラトレッジの弁護人を務めることとなったのは、ラトレッジの上官である若き白人将校カントレル中尉(ジェフリー・ハンター)でした。カントレルは軍法会議の場に着くと、大勢の将校夫人や市民が傍聴するために集まっていることに気づきました。その中には、今回の軍法会議の議長フォスゲート大佐(ウィリス・ボーシェイ)の妻コーディリア(ビリー・バーク)の姿もありました。

 

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開廷を前に、カントレルはフォスゲートに軍法会議の非公開を要求しました。軍法会議が見せものになる恐れがあり、また、夫人方が聞くには不向きな内容でもあったからです。フォスゲートはカントレルの言い分を聞き入れ、すぐに傍聴席から市民を追い出し、証人である若い娘メアリー(コンスタンス・タワーズ)だけがその場に残りました。

その後軍法会議は開始され、まず検察側の証人尋問が行われることとなりました。証人席に座ったメアリーは当時の出来事を思い出して震えながら証言を始めました。


3)検察側メアリーの証言

事件があった日、メアリーは東部から故郷のアリゾナに戻るところでした。その列車にはカントレルも乗り合わせており、カントレルはメアリーの美しさに魅了され、熱心にアプローチしますが、メアリーはスピンドル駅で途中下車し、カントレルとはすぐに別れることとなりました。

駅に降りると、メアリーは迎えに来てるはずの父(クリフ・ライオンズ)がおらず、また、駅長の姿がないことにも気づきました。不審に思ったメアリーが駅長室に行くと、そこには矢を胸に受けて死んでいる駅長の姿がありました。メアリーは恐怖に怯え、叫び声を上げようとしますが、そのときラトレッジが突然現れ、メアリーの口を塞ぎました。ラトレッジの話によれば、アパッチの戦士がこの駅を襲撃したといいます。

その後、ラトレッジはアパッチの戦士二人を倒しましたが、ラトレッジは腹部に大怪我を負い、ひどく衰弱していました。メアリーはラトレッジを介抱しようとしますが、ラトレッジはメアリーの好意を拒みました。白人の若い女性が黒人男性と接することは、なにかと誤解を生んでしまうことをラトレッジはよく理解していたのです。それでもメアリーはラトレッジを放っておけずに、可能な限り彼の世話をしました。
その一方で、メアリーは父の安否が気がかりでした。メアリーの父は町外れの荒野に牧場を持っていましたが、ラトレッジの推測によれば、そのあたりの地域に別のアパッチの集団が向かっているというのです。アパッチにより通信線は切られていたため、メアリーは父に連絡を取ることすらできず、ただ心配することしかできませんでした。

メアリーはあの夜に起きた出来事をありのままに語りますが、検察官のシャタック大尉(カールトン・ヤング)はラトレッジが不利になるような証言を引き出そうと誘導的な質問を繰り返しました。シャタックは黒人に対して差別的な考えを持っていたのです。カントレルはそんなシャタックの印象操作を防ごうとしますが、その後シャタックが呼んだ証人の証言によりラトレッジは一気に不利な状況に追い込まれてしまいました。


4)フォスゲート大佐夫人コーデリアの証言

次に証人として呼ばれたのは、フォスゲートの妻、老貴婦人コーディリアでした。コーディリアはチャンドラー・ハブル(フレッド・リビー)という中年男性の雑貨屋で生前のルーシーの姿を目撃していたといいます。そのとき、ルーシーは金の十字架のペンダントを身につけており、ハブルの息子クリスから言い寄られていました。また、その場にはラトレッジの姿もあって、ルーシーと親しく会話をしていました。ルーシーは子どもの頃からラトレッジと仲良くしており、他の白人のように差別的な感情を持っていなかったのです。

その日の夜8時に、ルーシーと父親のダブニー少佐が殺されました。近所に住むコーディリアはダブニーの家から銃声が聞こえた直後、家から腹部を負傷したラトレッジが出てくるのを目撃したと証言しました。


5)エックナー医師の証言

次に証人として呼ばれたのは、ダブニー親子の検視を担当したエックナーという老医師でした。エックナーの話によれば、ダブニーは心臓を撃たれて死亡、ルーシーは性的暴行を受けた後、絞殺されたといいます。このとき、検視の場に居合わせたカントレルはある違和感を持ちました。裸のルーシーの体を覆うように布がかけられており、首元には金の十字架のネックレスを引きちぎった傷痕が残っていました。カントレルはなぜ逃げる前に犯人が布をかけたのかと疑問を口にしますが、エックナーは変質者の心理はわからないと憤慨するだけでした。

その後、カントレルは犯人を探すため、ラトレッジを呼ぶよう部下の黒人の老兵士スキッドモア(ファノ・フェルナンデス)に頼みました。すると、スキッドモアはラトレッジが姿を消したと返答しました。スキッドモアの話によれば、このときアパッチの襲撃が始まっており、その危機を報告するためにラトレッジは上官のダブニーの元を訪れていたといいます。ラトレッジを信頼しているカントレルは思わぬ事実に驚愕しました。


6)証人カントレルの証言

エックナーの証言が終わると、シャタックは事件関係者としてカントレルの証人尋問を希望、カントレルは素直にこの求めに応じました。カントレルはダブニー親子の死体を発見した後、アパッチ偵察のためにすぐに第9騎兵隊を率いてスピンドル駅に向かったことを明かしました。

 

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カントレルたちがスピンドル駅に着いたのは、夜明けのことでした。ラトレッジはライフルを持って駅の中に立てこもっていましたが、カントレルたちはラトレッジを抑えつけて手錠をかけました。それを見たメアリーはショックを受け、ラトレッジは命の恩人で人間的に扱って欲しいと訴えましたが、カントレルは責務上ラトレッジを容疑者として扱わざるをえませんでした。

 

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当のラトレッジはアパッチの情報は口にしても、ダブニー親子殺しについては何も語ろうとせず、カントレルを困惑させました。カントレルは6年もの長い間ともに戦ってきたラトレッジを友人とみなし、第9騎兵隊の黒人兵たちも変わらずラトレッジに敬意を表していました。しかし、ラトレッジ自身は黒人が白人殺しの現場に居合わせてしまったことを深刻に捉え、ひどく絶望しているようでした。そんなラトレッジが大切そうに持っていたのは、ある一枚の紙でした。それは、ラトレッジが奴隷から解放されたことを証明する書面でした。

その後、カントレルはラトレッジを砦まで護送する余裕がないと判断し、ラトレッジを連れてこのままアパッチ偵察に向かうことを決断しました。部隊が向かう方向にはメアリーの父が暮らす牧場があったため、メアリーも同行することとなりました。


スピンドル駅を出発する直前、カントレルはラトレッジと二人で話す時間を持ちました。ラトレッジはカントレルにも害を及ぶことを恐れ、誰も自分の言葉を信じないとうなだれました。奴隷解放がされたとはいえ、実際は黒人が軍法会議で正当に扱われるわけがないと考えていたのです。そんなラトレッジにカントレルはこう声をかけました。「それでも、私は君を信じる」…ラトレッジは思わず顔を上げ、このカントレルの言葉に驚きの表情を浮かべました。

その後、カントレルたちはスピンドル駅を出発、しばらくすると、アパッチによって焼き殺された死体を岩陰で発見しました。死体から顔の判別をすることは不可能となっていましたが、現場には雑貨屋の息子クリスの服がありました。カントレルは遺品から何か手がかりを探ろうとしますが、何も見つけ出せず、その後も部隊を前進させました。
カントレルの証言はここまでで、その続きの証言はスキッドモアが述べることとなりました。


7)スキッドモアの証言

クリスの遺体を埋葬した後、スキッドモアは周囲にアパッチの気配を感じ、襲撃の危険があることをカントレルに進言しました。カントレルもこの意見に賛同し、ラトレッジの手錠を外して襲撃に備えながら進んでいきました。

 

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この予感は的中し、間もなく偵察に行っていたモファット伍長がラッパを吹いて戻ってきました。第9騎兵隊は岩陰から現れたアパッチの小集団に一斉に銃撃を加えますが、その最中にモファットがアパッチの集中攻撃を受けてしまいました。重傷を負ったモファットは馬の手綱を握ることが困難となり、どんどん第9騎兵隊から遠ざかっていきました。ラトレッジはその状況をただ見ていることはできず、馬に飛び乗ってモファットの後を追いかけました。

ラトレッジがモファットの馬に追いついたとき、すでにモファットは息絶えようとしていました。ラトレッジに抱き抱えられながら、モファットは「白人の戦争に加わるなんて愚かだよな」と口にしました。「白人のためじゃない、我々の誇りのためだ」…ラトレッジはそう返答しますが、すでにそのときにはモファットは息を引き取っていました。ラトレッジはモファットの顔に帽子をかぶせ、遠くにいるカントレルたちに合図をしてモファットの死を伝えました。

その直後のことでした。ラトレッジは馬に乗ってライフルを手に脱走、カントレルはとっさに発砲しますが、この弾は命中しませんでした。次にカントレルはライフルでラトレッジを狙いますが、メアリーの妨害に遭い、またも銃弾を外しました。


8)被告人ラトレッジの証言

次に証言席に座ったのは、被告人であるラトレッジでした。ラトレッジは無表情のまま淡々と脱走した後のことを語り、北に向かったことを告白しました。

 

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その途上、ラトレッジはアパッチの一団がある牧場を襲撃する光景を目撃しました。それは、メアリーの父サムが経営する牧場でした。ラトレッジはサムがアパッチたちに射殺されるのを目の当たりにし、大きなショックを受けました。

その後、ラトレッジはこのまま自由のために逃げるべきか、それとも、カントレルたちと協力してアパッチを倒すべきなのか、頭を悩ませました。すぐそこでは、アパッチの一団がカントレルたちを奇襲しようと川の草陰に隠れていたのです。

迷った末、ラトレッジは再び第9騎兵隊に戻ることを決断、アパッチが隠れていることをカントレルに教えました。このラトレッジの働きにより、第9騎兵隊は後退しつつ攻撃、見事にアパッチたちを撃退してみせました。

この証言を聞いたシャタックは、勇敢さを盾に罪から逃れようとしているとラトレッジを痛烈に批判しました。それに対して、ラトレッジは感情を露わにして反論しました。「逃げてしまうのはまた奴隷に成り下がるのと同じだった。でも違う、私は奴隷じゃない、人間だ」…ラトレッジは目に涙を溜めながらこう語りました。


9)弁護側メアリーの証言

検察側の尋問はここで終わり、一時休廷した後に弁護側の尋問が始まることとなりました。軍法会議が再開されると、傍聴席にはコーディリアを始め大勢の市民の姿がありました。その中には、アパッチに殺されたクリスの父で雑貨屋の主人ハブルの姿もありました。カントレルはまずメアリーを証人席に座らせ、アパッチとの戦いの後に野営したときの出来事について尋ねました。

 

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その夜、メアリーはカントレルから父の死を知らされて悲しんでいると、その後ろで第9騎兵隊の黒人兵たちが歌を歌い始めました。「彼こそ有名なバファロー大尉さ」…メアリーがその歌詞の意味を尋ねると、カントレルはその昔第9騎兵隊が真冬にバファローの皮をかぶって先住民と戦ったことを教えました。そこから第9騎兵隊はバファロー大隊と呼ばれるようになり、バファロー大尉は体が大きくて思いやりのある理想の兵士という意味を持つようになったといいます。第9騎兵隊の黒人兵たちは皆ラトレッジを鼓舞しようとこの歌を歌っていたのです。メアリーはその光景を見て、「すばらしいわ」と微笑みました。

その翌朝、カントレルは見回り中に昨日の戦闘で死んだアパッチの死体を発見しました。所持品を調べると、「C・H」と焼き印が押された上着と、金の十字架のネックレスが見つかった。カントレルは証人になってもらうためにメアリーにもそのネックレスを見せました。

その後、一行は砦に戻ることとなりましたが、その出発の前にカントレルは再びラトレッジに手錠をつけました。隊の窮地を救ったラトレッジに対して容赦ない対応をするカントレルの姿に黒人兵たちが落ち込む一方で、メアリーは激しい怒りを覚えました。

メアリーは金の十字架が確かにアパッチの所持品から見つかったことを証言した後、ラトレッジが皆の命を守ったのであり、カントレルはその恩に報いるべきだと語って証言を終えました。


10)証拠品

その後、カントレルは死んだアパッチの所持品二点を証拠品としてフォスゲートに提示しました。一つは金の十字架のネックレス、もう一つは「C・H」の焼き印の上着でした。カントレルはすでにネックレスについて大勢の証人からこれがルーシーのものという証言を得ていることを明かし、上着の方は雑貨屋の息子クリス・ハブルのものだと推測しました。
この証拠から、カントレルはダブニー親子殺人事件をこう推測しました。ルーシーを暴行して殺したのはクリスであり、ラトレッジはちょうどクリスが逃げた後にダブニーの家にやって来たというのです。ラトレッジが強姦されたルーシーに布をかけてあげていると、そこに事情を知らないダブニーが現れ、ラトレッジを犯人と勘違いし、発砲。そのため、ラトレッジは自らの身を守るためにダブニーを殺す結果となり、それは正当防衛に該当する、というのがカントレルの主張でした。

これに対して、即座にシャタックは反論、ルーシーのネックレスはありふれたデザインのものであり、このネックレスをルーシーのものとは断言できないと主張しました。さらに、上着の焼き印のイニシャルに該当する人物は大勢おり、クリスと結びつけることも難しいと指摘しました。カントレル自身も自らの主張が決め手を欠くことは承知していました。見つかった上着は大柄の男用のものであり、小柄のクリスが着るのは考えづらかったのです。

カントレルが頭を悩ませていると、シャタックはラトレッジを「黒人ごとき」と表現して侮辱し始めました。カントレルはシャタックの差別的な言葉に激怒し、両者は喧嘩腰になりますが、フォスゲートはカントレルたちに冷静になるように指示しました。

その後、フォスゲートが証拠の上着に話題を変えようとすると、突然クリスの父親ハブルがルーシーのネックレスを判別できると言い出しました。そのネックレスをルーシーの父ダブニーに売ったのはハブルであり、特徴的な傷が十字架についているというのです。フォスゲートは特別にハブルを証人として認め、カントレルは尋問を始めました。

ハブルは息子の罪でラトレッジが罰せられるのは耐えられないと口にしていましたが、カントレルはそんなハブルに疑いの目を向けていました。元々、ハブルはネックレスの証言を拒否しており、また、先ほども上着の話題を遮るようにネックレスの証言をしたことにカントレルは違和感を持ったのです。

ハブルの話によれば、ダブニー親子殺しがあった夜、クリスは突然家に戻ってアパッチ襲撃があったことを告げると、また家を出て行ったといいます。そのとき、クリスがハブルの上着を着て行ったという証言を聞き、カントレルはすべてを理解しました。ハブルの名前はチャンドラーといい、クリスと同様、イニシャルは「C・H」でした。

あの夜、ルーシーを襲って殺したのはハブルであり、そのとき引きちぎったネックレスを上着に入れっぱなしにし、その後クリスが誤ってその上着を着た…カントレルはこう推理し、息子に罪を着せようとしているとハブルに詰め寄ると、ハブルはあっけなく自白しました。「あの体つき、自制などできなかった」…ハブルはそう語り、神に助けを求めますが、フォスゲートはそんなハブルを拘束するよう命じました。


11)エピローグ

軍法会議が閉廷すると、カントレルはメアリーの元に向かいました。ラトレッジへの疑惑が晴れ、カントレルとメアリーはわだかまりのない関係に自然に戻っていました。カントレルはメアリーに美しいと言葉をかけ、キスをしました。そんな二人のすぐ横をラトレッジら第9騎兵隊の面々が敬礼をしてニヤニヤしながら通り去って行きました。

その後、ラトレッジは再び第9騎兵隊に復帰、大勢の仲間とともに荒野を駆けるラトレッジの姿を映し出しました。

 

3.四方山話

1)ウディ・ストロード

アメリカ映画界を代表する、黒人俳優の始祖、黒人男優の父と呼ばれています。彼の知名度が上がる一方で、スクリーンでも黒人男優の存在感が次第に注目され始め後年、動のストロードとは対照的なシドニー・ポワチエデンゼル・ワシントンらに代表される知のイメージの後継者たちが台頭してゆきました。

本作では、主役と言っていいウディ・ストロード、キャリア最高の演技を見せてくれる彼は、とにかく素晴しいの一言で、長身(194cm)に引き締まった肉体と鍛え抜かれた筋肉は40代半ばとは思えず、美しささえ感じます。

ドラマの中で、彼を尊敬し称え”バファロー大尉”に見立てて歌われるように、”山のようで大木よりデカい、鉄の拳で雄牛をも倒す、どんな豪傑も歯が立たない”という歌詞の表現にぴったりの、実に見栄えのする俳優さんです。

いつもは脇役の彼が、本作では、差別され涙しながら、人間として扱ってほしいと訴えるシーンなど、演技者としての確かな実力も見せてくれました。


2)ウィリス・ボーシェイ

前年の『騎兵隊』(1959年)にも出演している、裁判を仕切る大佐役のフォード一家の一員のウィリス・ボーシェイは、フォード作品によく登場するタイプのキャラクターであり、ガミガミ言いながら法廷内で酒を飲み、休廷した途端に裁判を忘れてポーカーに興じるあたりの脚本と演出も、いかにもフォードらしく仕上がっています。
この役は、本来ならウォード・ボンドあたりの役柄ですが、彼はこの年の11月に亡くなっています。


3)ジャック・ペニック

そして、フォード一家のお馴染み、法廷の軍曹ジャック・ペニックの大佐との「水」と称するウィスキーや規定書のやりとりが面白く、軍法会議の雰囲気をみごとに和らげています。

 

 

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4.まとめ

西部劇かと思いきや実は法廷ものという変わり種な作品でした。まだ差別の強い社会で黒人が法廷で裁かれますが、騎兵隊所属の登場人物たちがみんなあまりに高潔で勇敢すぎるために、最初のほうで無罪か有罪かは簡単にわかってしまうのは仕方ないでしょう。真犯人捜しのほうは、第一級のどんでん返しでした。