凸凹玉手箱

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映画『12人の優しい日本人』三谷幸喜の傑作舞台劇の映画化作品です!!

この映画『12人の優しい日本人』は、三谷幸喜の戯曲を自ら主宰する劇団・東京サンシャインボーイズのために書き下ろしし、1990年7月30日に東京・シアターサンモールで初演したものを、1991年に、三谷幸喜東京サンシャインボーイズの脚本、中原俊の監督で映画化され、公開されました。

目次

 

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1.紹介

映画『十二人の怒れる男』(1957年、アメリカ)へのオマージュとして、「もし日本にも陪審制があったら?」という架空の設定で描かれる法廷劇・密室劇です。『十二人の怒れる男』での展開や設定が基になったパロディが各シーンでみられます。

ある殺人事件の審議に奮闘する12人の陪審員の姿をユーモラスに描いた、東京サンシャインボーイズにの同名戯曲の映画化で、脚本は同劇団主宰の三谷幸喜が執筆。監督は「櫻の園」の中原俊。撮影監督は「風の国」の高間賢治がそれぞれ担当しておます。


2.ストーリー

1)プロローグ

すぐ終わるはずの陪審員会議の事件は、被告人は21歳の美人な女性で、事件当日、被害者の夫は、酔って妻に掴みかかっていたことから、被告人は正当防衛を主張していました。そこから、集まった12人の陪審員、ほとんどは、「無罪」に手を挙げ、即決で終わるはずでした。


2)異論から対立へ

しかし、陪審員2号(相島一之)が無罪の根拠を一人一人問い詰めていった所、審議は七転び八起きしていきます。有罪派と無罪派に別れ、陪審員たちの感情までもヒートアップします。

被告人が有罪の線が強くなってきて、有罪派は、「被告が外出前に子供にピザを注文していた」「その日、自分が家には帰れないことを予想していた」「計画的殺意があった」という3点を主張します。

一方で無罪派は、「ドミソピザの大きさにもよる。宅配ピザのような大きなものを、たった子供一人のために注文するものだろうか?自分も帰って食べる予定だったのかも」と主張。両意見は平行線で、実際にドミソピザ(一番小さいサイズ)を注文することにしました。


3)ピザが届く間

ピザが届く間、奇抜な服装を着ている11号(豊川悦司)が、事件の謎解きをし始めます。証言者の主婦は、遠くから見ているだけで、周囲は暗く、もみ合っている程度しかわからないはずである。そのため、「突き飛ばした」という証言は、あてにはならない。という主張をしました。

さらに、「トラックの運転手は、クラクションを本当に鳴らしていたのか」という疑問を提示しました。実際にクラクションが鳴らされたのならば、証言者の主婦は、そこで振り返って、事件を見ているはず。「急ブレーキの音で振り返った」と主張しています。

11号は、「急ブレーキの音で振り返った」事を証明するため、銀のお盆を床に投げつけると、その大きな音に、その場にいる全員が振り返りました。


4)無罪派の結論

無罪派の結論は、「三行半をつきつけられた被害者が、被告人(妻)にヨリを戻して欲しいと頼みに行った。逃げまわった被告人を追いかけていったが、人生に悲観し、走ってくるトラックに飛び込んだ。

そして、証言者の主婦は、聞き間違えが多く、『死んじゃえー!』と、聞こえたと言ったのも、被告人が被害者に送った、『ジンジャーエール!』だったのではないか。また、トラックの運転手は、居眠り運転を隠すために、偽証した」と、結論しました。注文したピザはあまりにも大きすぎ、被告人も帰って一緒に食べるつもりだったのではない。という結論に達しました。


5)最終結論へ

一番最初に戻り、11対1で「無罪」が多数派になった時、2号が、依然として、「有罪」を主張しています。彼自身、妻と別居しており、今回の被告と彼の妻とオーバーラップして、憎んでいただけでした。そこに、11号(豊川悦司)が、「被告人は、あなたの奥さんじゃないですよ」と、冷静に言うと、2号は、押し黙るしかありませんでした。


6)エピローグ

こうして、無罪で満場一致となり、それぞれ、陪審員証を、返していき、無事に、陪審員会議は終わりました。

 

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3.四方山話

1)Hommaged work(オマージュされた作品)

十二人の怒れる男(12 Angry Men)』は、レジナルド・ローズ原作の、1954年製作のアメリカのテレビドラマ、またそのリメイクである1957年製作のアメリカ映画で、さらに、これらを原作にして制作された舞台作品です。

この作品の発端は、レジナルド・ローズが実際に殺人事件の陪審員を務めたことで、その約1ヶ月後には、作品の構想・執筆に取りかかったそうです。

そして、映画は「法廷もの」に分類されるサスペンスドラマ・サスペンス映画であり、密室劇の金字塔として高く評価されています。ほとんどの出来事がたった一つの部屋を中心に繰り広げられていて、「物語は脚本が面白ければ場所など関係ない」という説を体現する作品としてよく引き合いに出されます。

日本では、アメリカの陪審制度の長所と短所を説明するものとして、よく引用されてきました。


2)キャスト比較

こうして舞台と映画のキャストを並べると面白いものです。

役名 初演 再演 三演 パルコ公演 オンライン版 映画
  (1990年) (1991年) (1992年) (2005年) (2020年) (1991年)
陪審員1号 小原雅人 甲本雅裕 浅野和之 甲本雅裕 塩見三省
陪審員2号 相島一之 生瀬勝久 相島一之 相島一之
陪審員3号 阿南健治 小林隆 伊藤正之 小林隆 上田耕一
陪審員4号 小林隆 阿南健治 筒井道隆 阿南健治 二瓶鮫一
陪審員5号 かんみほこ 岡崎淑子 横田由和 石田ゆり子 吉田羊 中村まり
陪審員6号 一橋壮太朗 近藤芳正 堀部圭亮 近藤芳正 大河内浩
陪審員7号 梶原善 温水洋一 梶原善 梶原善
陪審員8号 斉藤清子 鈴木砂羽 妻鹿ありか 山下容莉枝
陪審員9号 西村雅彦 小日向文世 西村まさ彦 村松克己
陪審員10号 宮地雅子 堀内敬子 宮地雅子 林美智子
陪審員11号 野仲功 江口洋介 野仲イサオ 豊川悦司
陪審員12号 伊藤俊人 山寺宏一 渡部朋彦 加藤善博
守衛 福島三郎 小原雅人 不登場 小原雅人 久保晶
青年 甲本雅裕 不登場
裁判長(声) 山本亘 不登場 小原雅人 不登場
ピザ屋の配達員 不登場 一橋壮太朗 近藤芳正

 

 

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4.まとめ

三谷幸喜らしいユーモアでコメディ風になりましたが、ネタ元の『十二人の怒れる男』がとんでもなく素晴らしく、これを超えた超えないは別として、まさにリスペクトされた最高級のオマージュ作品なのでしょう。