目次
1.概要
1にも2にもカーチェイスのために作られた映画で、南仏マルセイユの坂道を疾走するスピード感が見どころです。車のキャラもきちんと色分けられ、ダニエルの愛車はプジョー406、強盗団はメルセデス・ベンツ500E、それぞれ改造車が登場します。
ジャン・ラニョッティのドライブする、ダニエルが乗るプジョー・406の改造車は、イングランドツーリングカー選手権仕様です。
疾走感はCGエフェクトで表現され、制作費を抑えるため同じシーンが数回使われています(特にカーチェイスと銃撃戦のシーン)。
また、上映時間が1時間30分足らずと短く、製作費を節約し、劇場での上映回数を増やすためのベッソンの成功の方程式みたいです。
改造車のカーチェイスといえばポール・ウォーカーの出世作で、遺作となった『ワイルド・スピード』シリーズを連想しますが、『TAXi』の方が3年ほど早く、さすがベッソン、先見の明がありました。
このシリーズは喜劇王ルイ・ド・フュネスが間抜けな憲兵隊長を演じた『大混戦』シリーズという格好のお手本があり、そこにカーチェイスを加えてアクションに仕立てたところが目の付け所で、泥臭いほどベタな笑いはフランスの伝統でもあります。
2.ストーリー
1)ストリートヒーロー
フランスの港町マルセイユ。スピード狂のダニエル(サミー・ナセリ)は、恋人リリー(マリオン・コティヤール)との生活を始めるために、趣味と実益を兼ねたタクシー運転手の仕事を始めます。ダニエルは改造車を猛スピードで走らせるので、警察は彼をスピード違反として呼び止めることさえできませんでした。
2)ドジ刑事
一方、マザコン気味新米刑事のエミリアン(フレデリック・ディーファンタル)は、8回も運転免許試験に落ち続け、何をやっても失敗ばかり。美貌の上司ペトラ(エマ・シェーベルイ)に夢中ですが、全く相手にされません。
3)2人の出会い
そんなある日、ダニエルの初めての客のカミーユ(マニュエラ・グラリー)が、エミリアンの母親だったことがきっかけで、刑事だと知らずにエミリアンを乗せたダニエルは、得意のスピード全開で車を走らせました。彼こそスピード違反常習者のタクシー運転手だと気づいたエミリアンは、ある取引を思いつきます。
4)コンビ成立
目下署内で一番の問題になっている、ベンツに乗った銀行強盗団のメルセデスを逮捕するのにダニエルの才能を借りて、見事逮捕にこぎつけたあかつきには、免許証を返すというものです。
かくしてダニエルとエミリアンはコンビを組み、メルセデス逮捕を目指します。しかし敵は手ごわく、一筋縄ではいきません。ドジなエミリアンの力では中々つかまえられないのですが、ダニエルが主動権を握ると、ことは良い方へ動き出します。
5)カー・チェイスの果てに
メルセデスを挑発し、まんまと街中へおびき出したダニエルとエミリアンは、時速250キロの派手なカー・チェイスを繰り広げながら、マルセイユ中を駆け抜けていきます。激しいデッドヒートの末に、見事メルセデスを逮捕。ふたりは勲章をもらい、ペトラはエミリアンのことを見直しました。そしてダニエルは警察後援ですが、夢のフォーミュラレーサーになるのでした。
3.キャスティング
1)ダニエル・モラレース
=サミー・ナセリ=
本シリーズの主人公。根っからのスピード狂で、物語開始当初はデリバリーピザの従業員であり、スクーターによるスピード記録を更新していましたが、念願の個人タクシーの認可が下りたため多くの仲間達に惜しまれつつも退職し、かねてより強化改造していた406を愛車に、晴れてタクシードライバーとなりました。
リュック・ベッソンの監督作品『レオン』のちょい役からはじまり大ヒットシリーズとなった本作で一気に人気者になり、2006年のカンヌ国際映画祭では男優賞を受賞しましたが、素行が問題でそれ以降の活躍は聞こえてきません。
2)エミリアン・クタン=ケルバレーク
=フレデリック・ディーファンタル=
マルセイユ警察所属の警察官ですが、生来のドジで捜査ではいつもヘマばかり起こすダメ刑事です。そのため、同僚や愛するペトラからはほとんどバカにされており、人望も無きに等しいのでした。
ダニエルと正反対に運転技術はからっきしダメであり、作中では8回目の路上試験に臨んでいたが、教官の「左に回れ」という指示が判らずに肉屋に車を突っ込ませるという致命的なミスを犯して教官から怒鳴られていました。
サミー・ナセリとのコンビでこの人気シリーズを盛り立てましたが、以降はフランス国内での活躍にとどまっているようです。
3)リリー
ダニエルの恋人。その仲はダニエルの旧友たちから派手に祝福されるほど睦まじいものですが、ダニエルの仕事がタイミングよく入り、お互いが求めあっているのになかなか結ばれません。
本作は23歳での出演ですが、キャリアは十分で、オルレアンの演劇学校を首席で卒業し、16歳の時に映画デビュー。その後、本作から『TAXi』シリーズに出演して知名度を上げました。
熟女となった今も美しいのですが、若くぴちぴちとしてキュートながら際どい濡れ場もいやらしくなく本作でブレイクするのも当然でした。
「世界でもっとも美しい女優ランキング」の常連となるチャーミングで特出した美貌も相まって、2007年公開のフランス映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』でエディット・ピアフ役を演じて第80回アカデミー賞主演女優賞も受賞し、アカデミー賞の演技部門ではシモーヌ・シニョレに続いて史上2人目、49年振りのフランス人女優の主演賞受賞者となりました。
4.まとめ
本作の見どころは、いうまでもなく猛スピードで疾走する改造タクシーによるカーチェイスです。もちろん凸凹コンビのやりとりのべたなフレンチユーモアも見逃せません。
監督は2作目からジェラール・クラヴジックに交代しますが、製作と脚本はずっとリュック・ベッソンで、この成功の方程式はベッソンのもう1つのドル箱ヒットシリーズ『トランスポーター』にも踏襲されています。