凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『君の膵臓を食べたい』感動の大ヒット青春ドラマをもう一度!!

 

この映画『君の膵臓をたべたい』は、住野よるによる日本の青春小説を原作として同名タイトルの映画が、2017年7月28日に公開されました。

監督は月川翔、脚本は吉田智子、高校生時代の主演は浜辺美波北村匠海のダブル主演で、高校生時代のエピソードは過去として扱われていて、原作にはない12年後の世界が描かれており、こちらは、小栗旬をメインに、北川景子上地雄輔が共演しています。

目次

 

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1.ストーリー

1)プロローグ

高校教師の志賀春樹(小栗旬)は母校に赴任してきて一年になろうとしていました。彼はあるきっかけで教師になったものの、生徒たちとちゃんと向き合えているのか悩み始めており、退職を考えるまでになっていました。

高校には古くから存在する大きな図書館がありましたが老朽化のために近々取り壊す予定となりました。志賀はその図書館の蔵書の整理を頼まれます。12年前の在校中、膨大な蔵書のラベル整理をした過去があったためでした。


2)回想

久しぶりに図書館を訪れた志賀は当時のことを思い出します。図書委員だった志賀はナンバリングで本を細かく管理したのですが、それを行ったのは自分ひとりではなく面倒くさい助手がいたのでした。一緒に蔵書整理を手伝う生徒の栗山(森下大地)を相手に、志賀はその助手であった山内桜良(浜辺美波)のことを話し出しました。


3)共通の秘密

山内桜良は志賀春樹(北村匠海)とは真逆のような存在でした。桜良はクラスの人気者で春樹は友達もいないネクラな読書オタク。しかし、二人はあることで共通の秘密を持つことになのです。盲腸の手術後に病院へ行った時、春樹は「共病文庫」と名付けられた文庫型の日記を拾います。その中には、書き手が膵臓の病気で数年後には死んでしまうと書かれていました。その本の持ち主が桜良だったのです。

 

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病気のことを知られた桜良は少し焦りましたが、春樹は他人に興味を示さない性格でした。誰にも言わないでとお願いしても、話す相手もいないからと素っ気ありません。そのドライな反応が気に入った桜良は、彼なら病気のことを知っていても自分に今までと変わらない日常をくれるのではないかと興味を示すのでした。


4)急接近

それ以来、桜良は春樹に近づいてくるようになり、挙句には図書委員になって蔵書の管理までするようになりました。しかし、彼女は番号通りに本を戻さないことも多く、春樹は困ってばかりでしたが、頑張って探したほうが宝探しみたいで楽しいと桜良は言って笑うばかりだったのです。

桜良は、他人に興味を示さないことがもったいないと言い、これを読んで勉強しなさいと自前の本である「星の王子さま」を春樹に渡しました。本には桜良のサインとスマイルマークの落書きがしてありました。


5)初デート

桜良は春樹に「君の膵臓を食べたい」と言ってきました。昔の人は体に悪い部分ができると他の動物のその部分を食べたのだと言う桜良に、春樹は呆れるばかりでした。

残りの人生を謳歌するべきだと口にしてしまったせいで、春樹は桜良の行動に付き合わされることになりました。「死ぬまでにやりたいことリスト」を作ったと言う桜良は、春樹を連れて焼肉店を皮切りに女性客ばかりのスイーツ店へ。

 

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6)噂の二人

仲良くする二人の噂はあっという間にクラスに広まりましたが、人気者の桜良とネクラな春樹では釣り合わないとやっかむ者も少なくなかったのです。二人は付き合っている訳でもなかったのですが、面倒が嫌いな春樹は何も言おうとはしませんでした。

桜良の中学時代からの親友・恭子(大友花恋)は二人が仲良くしているのを見て嫉妬心を露にし、春樹を睨みつけるようになっていました。だが、そのことがきっかけで春樹はいつもガムをすすめてくれる同級生ガム君に声を掛けられるようになります。

 

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7)秘密の遠出

連休に遠出したいと桜良は言い、春樹はそれに付き合わされることになりました。二人は新幹線で博多へとやってきます。ラーメンやホルモンを食べ、観光地を回った桜良は大いに楽しそうですが、その日は博多で一泊すると聞いた春樹は動揺します。

 

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ホテルの手違いで二人は最上級の同じ部屋に泊まることになってしまいました。春樹は焦りますが桜良はその状況を楽しんでいました。そんな中、春樹はひょんなことから桜良のバッグに大量の薬が入っていることに気づいてしまいます。死の影を目の当たりにし、春樹は複雑な気持ちになるのでした。


8)真実と挑戦

お酒を飲んで少し酔った桜良と「真実と挑戦」ゲームをした春樹は、お互いのことを少しずつ知っていきますが、いつも笑顔でいる桜良が本当は死ぬのを怖がっていることを感じ取り、言葉を失ってしまうのでした。

博多旅行は春樹も楽しんだようでした。そのことを素直に桜良に告げると彼女は喜び、私が死んだら私の膵臓を食べてもいいと言って笑いました。誰かに食べてもらうと、魂がその人の中に生き続けるという言い伝えもあるのだそうです。桜良は、大切な人たちの中で生きていきたいと呟いたのでした。


9)いけないこと

桜良と仲良くするのが原因か、春樹の上履きが誰かに捨てられてしまいます。それはガム君が見つけてくれたのですが、今度は桜良から借りていた「星の王子さま」が無くなってしまいました。

二人の関係に嫉妬した恭子をなだめるため、図書館に行けないと桜良からメールがありました。かわりに今日は自宅に来てほしいとの。戸惑いながらも桜良の自宅を訪れた春樹は、桜良と二人きりという状況に緊張しますが、突然に彼女は抱きつき、やりたいことリストの最後のひとつを実行したいと言いだします。それは「恋人じゃない男の子といけないことをする」というものでした。

親密な空気が流れるが寸前のところで桜良は冗談だと笑いました。しかし、彼女の遊び半分な態度に怒った春樹は、思わず彼女を押し倒してしまいます。驚いた桜良の涙を見た春樹は我に返り、家を飛び出していきました。


10)謝罪と運命

道の途中、春樹はクラス委員長の浜家に声を掛けられます。桜良が以前付き合っていたのは彼で、春樹に嫉妬心をむき出しにしてきました。浜家は衝動的に志賀に殴りかかり、盗んでいた「星の王子さま」を投げつけます。そこへ桜良が追いかけてきました。状況を理解した彼女は浜家に、もう近づかないでと厳しく言うと春樹を連れて自宅へと戻りました。

二人はお互いにしてしまったことを正直に謝罪します。春樹は、自分は流されるように君のそばにいるだけ、恭子や浜家のように君を大切に思う人たちと一緒にいるべきだと言いましたが、桜良はそれを否定します。流されているんじゃない、私たちはそれぞれ自分の意思で選択した先で出会ったと告げました。


11)再入院

二人の関係に怒りながらも恭子から桜良が盲腸で入院したと聞かされた春樹は病院へと向かいました。桜良は驚きましたが嬉しそうでした。勉強を教えてくれる春樹の姿を見た彼女は、教師に向いていると志賀に告げました。

桜良は春樹と恭子に仲良くなってほしいと思っていました。病院で鉢合わせするように仕向けていましたがなかなか上手くはいきませんでした。ある日、恭子から声を掛けられた春樹は、彼女と桜良の関係について話をされます。中学時代の恭子は友達がひとりもいなかったのですが桜良だけは気さくに話しかけてくれたのだそうです。そのおかげで今の自分がいる、彼女を傷つけたら許さないと恭子は春樹に言うのでした。


12)真実を聞く権利

相変わらず春樹は他人とは話そうとしませんでした。そのせいで、彼が桜良のストーカーをしていると噂になります。それを聞いた桜良は、もっと他人とコミュニケーションを取るべきだと春樹にアドバイスするのでした。桜良は、自分が死んだら君だけに共病文庫を読む権利をあげると言い、二人は約束の指切りをしました。

ある夜、桜良が突然に電話してきました。様子が少しおかしかったのが気になった春樹は、病院に忍び込んで彼女の元へ。来てくれたことに喜ぶ桜良は、もう一度だけ「真実と挑戦」ゲームをやりたいと言いだします。桜良は春樹に聞きたいことがあったが負けてしまい、春樹が真実を聞く権利を得てしまいます。

春樹は、君にとって生きるとはどういうことかと尋ねました。桜良は、誰かと心を通わせることだと答えました。人間関係はまどろっこしいけれども、それこそが私の生きていた証明になるのだと。君と過ごせたことは私の宝物だと言う桜良に、僕は君に生きていてほしいと正直に気持ちを伝える春樹でした。

桜良は喜んで春樹に抱きつきました。二人は退院したら、また旅行に行こうと約束したのでした。

 

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13)おめでとうの言葉

季節は六月でしたが春樹は桜を見に行こうと考えていました。ガム君の協力でまだ桜が見られる場所を見つけた春樹は、桜良との旅行を計画し始めます。桜良の退院が決まり、志賀はいつかのスイーツ店で彼女が来るのを待ちました。

「退院おめでとう」とメールすると「もっと気持ちを込めて私を褒めて」と桜良から返事が来きます。春樹はありったけの称賛の言葉を並べましたが、その時、自分は彼女のような人間になりたいのだと気がつきます。春樹は今までの言葉を全て削除し、その思いをひとつの言葉にして送信しました。「君の膵臓を食べたい」という言葉で。


14)突然の別れ

しかし、桜良からの返信は来ませんでした。彼女はスイーツ店にも現れません。不審に思った帰り道、彼女が通り魔に刺されて死亡したことを知った春樹は呆然とします。まだ時間が残されていると勝手に思っていた春樹は落胆し、立ち直るまでに一ヵ月もかかりました。桜良の葬式にも行くことはできませんでした。

意を決し、桜良の実家を訪ねた春樹は彼女の母親に共病文庫のことを話しました。桜良から聞いていた母親は春樹に本を渡します。そこには桜良が表には見せなかった心境が書かれていました。彼女の心に触れた春樹は我慢できず、その場で号泣するのでした。


15)12年後に届いた手紙

図書館の蔵書の整理が終わりに近づいた頃、志賀は落書きされた図書カードを発見します。それは桜良の「星の王子さま」に描かれたスマイルマークと同じだったのです。それを見て志賀は彼女が言っていた宝探しのことを思い出しました。蔵書を探し回った志賀は、本の中に桜良からの手紙が挟まれているのを発見しました。

手紙は志賀の分と恭子の分がありました。恭子は結婚する予定で志賀のところにも招待状を送っていました。しかも今日は式の当日だったのです。

 

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志賀は手紙を持って会場へと急ぎました。会場で新郎と出会った志賀に新郎はガムを差し出しました。ガム君が新郎であることを知り、花嫁姿の恭子の元へ案内されました。志賀は招待状の返事を出さなかったことを詫びると、桜良からの手紙を渡しました。

 

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16)明かされた真相

手紙を読んだ恭子は桜良が膵臓の病気だったという真実と自分への思いを知って号泣します。そんな彼女に向かって、志賀は桜良の願いを叶えるために勇気を出して言いました。僕と友達になってくださいと。それに対し、恭子は、はいと返事を返したのでした。

 

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桜良が志賀に宛てた手紙には「真実と挑戦」ゲームで聞きたかったことが書かれていました。彼女は、なぜ志賀が私のことを名前で呼ばず「君」と呼ぶのか、それが気になっていたのでした。だが、それは志賀が桜良を自分の中で特別な存在にしたくないからだと彼女は気がついていたのです。

桜良は手紙の中で志賀のことを「春樹」と呼び、誰とも関わらずに生きていける強い春樹に憧れていたと綴っていました。その強さを周りの人たちに分けてあげてほしい、私の分まで生きてほしいと手紙には書かれていました。それを読んで勇気づけられた志賀は、教師を辞めることを考え直し、まどろっこしい人間関係を続けていくことを選んだのでした。


17)最後の言葉

手紙の最後はこんな一文で締めくくられていたのです。「春樹のようになりたい。春樹の中で生き続けたい」。だが、桜良はそんな言葉では表現できないとし、あるひとつの言葉でその気持ちを伝えようとしていました。「君は嫌がるかもしれないけど」と前置きしたその言葉は、「私はやっぱり、君の膵臓を食べたい」というものだったのでした。

 

2.原作との違い

1)12年後

原作小説と今回の映画版とでは、大幅に変更された点が存在します。その中の一つ、それは本来原作には登場しない主人公の12年後の姿が描かれるというこで、のっけから教師となった春樹が登場します。

ただ、ネットの反応は概ね好評の意見が多く、実際今回の映画化においては、現在の登場人物を演じるキャストと、高校時代を演じるキャスト達との間に違和感が無いため、12年の歳月を経ての再会シーンでも、観客には一目で同一人物だと分かる程です。

ただ、12年後の恭子の北川景子は美人過ぎて、好演しているものの美貌が邪魔しています。それに控え、素晴らしかったのは、原作には登場しない現在の春樹を演じた小栗旬の演技です。過去のある時点で時間が止まったまま生き続けている主人公を見事に演じていて、抑制された演技は12年後の春樹に他ありません。


2)「僕」の名前

原作ではラストまで明らかにされない「僕」の名前が、早い段階で明らかにされることです。

確かに映画版では、原作に無い現在の描写=母校の教師として勤務する「僕」と、結婚式を控えた恭子の姿、が冒頭から描かれるため、彼らの名前を隠したままでは、あまりにストーリーが不自然になってしまいます。


3)大人の登場

主人公の名前が早い段階で明らかにされた映画版ですが、その代わりと言おうか、実は映画の中で「ある存在」が徹底して隠されていました。最初は、ちょっとした違和感しか感じなかったのですが、映画が進むにつれてそれは疑問に変わってきて。

映画で描かれる高校時代のシーンでは、終盤に至るまで二人の親や学校の先生など、彼らよりも年長者の登場人物が一切登場しません。

確かに気付かなければ、そのまま最後まで見てしまいかねない要素なのですが、たまたまそこに気付いてしまうと、もはやその異常さが気になってしょうがない。もちろんこれは意図的なものであり、何かしらの意味と効果を狙ったのは間違い無い筈です。

原作では冒頭から「僕」の母親が登場し、図書室のシーンでも先生との会話がありました。更には、二人が旅行に行った先で、偶然会った「おばちゃんグループ」とのエピソードも登場するなど、少なくとも原作小説には、映画版の様な不自然すぎる描写や設定はありませんでした。

尺の問題もありましょうが、人間関係や会話を桜良と春樹に凝縮させ、余分なものを徹底的に排除して、二人の時間の刻一刻がもったいなく思えるかのようなストーリー展開になりました。

閉じた世界の中で生き、余命1年の桜良と過ごす春樹には、未来を連想させる存在(=大人)が見えていなかったのかもしれません。

桜良の葬式の後に突然、大人たちが登場するのは、春樹の世界が開かれたことを表現しているのでしょう。今を大切に生きようとした桜良と変わっていった春樹の世界、そしてお互いへの気持ち。2人の強い思いを、視覚的に強調する効果があったと言えます。


3)12年後の手紙

図書館の改築にともなう蔵書の整理の作業で図書カードに残された見覚えのあるスマイルマークが春樹の目に飛び込んできます。必死で探した「星の王子さま」の装丁の間に桜良が残した春樹と恭子への手紙がありました。

桜良が暴漢に襲われる直前に借りていた本を図書館に返しに行きました。おそらくこの時に手紙を差し込んだものでしょう。「頑張って探して見つけた方がうれしいでしょ。宝探しみたいで」と桜良が冒頭で春樹の気を引くためにいったのが浮かんできます。

この手紙で桜良の思いが明らかになるのですが、原作では、「共病文庫」で明らかになっています。

桜良の死後の12年の挿話によって物語が一層昇華され厚みが増すことになりました。

 

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3.まとめ

余命一年と宣告されている桜良が、春樹に伝えるセリフ。

「私も君も、もしかしたら明日死ぬかも知れないのにさ。そういう意味では私も君も変わんないよ、きっと。一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたいのかで私の今日の価値は変わらない。」

病気だから、余命が後何年だからと言ってその人とそうでない人との一日の価値って差ができるのではなくて、一日の価値は何にも変えることのできない大切な時間なのです。

本作は、誰しも今の時間が明日も当たり前にやってくるとは限らないということを、考えさせられるセリフです。

本作を観て、今の自分でいられるこの時間を後悔しない様、1日1日を大切に生きていかねばと気づかされる映画でした。