凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『バレット』やっぱり面白い古典的アクション映画です!!

この映画『バレット』(原題: Bullet to the Head )は、ウォルター・ヒルが監督し、主演はシルベスター・スタローンで2012年のアメリカ合衆国のアクション映画です。

 

目次

 

 

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1.序章

この映画で一番の見どころは、スタローンのポートレートが年齢順に5枚示されるところです。ストーリーに準じているわけでもなく主人公の過去を自分でナレーションしているのですが、何かスタローン自身の生涯の姿を映しだしているようにも思えます。
5枚のポートレートの最初は、画面通りなら1968年1月29日、21歳6ヵ月の時となります。何と元ビートルズポール・マッカートニーにそっくりです。まだスクリーンデビュー前の若々しいスタローンです。
次第に歳を重ね、逞しくなり、老いていくのを見るのは味わい深くもあり、痛々しくもありますね。


2.背景

この頃のスタローンは『ロッキー・ザ・ファイナル』(2005年)や『ランボー/最後の戦場』(2008年)など、かつての当たり役にオンタイムの自分を反映させることでシリーズ再生を果たし、また彼と同世代のアクションスターが一堂に会する『エクスペンダブル』シリーズ(2010年〜)でシニア・アクションをまさに先導するなど、マーケットを絞った活動で俳優としての最盛期を再び迎えていました。

そしてこの『バレット』も、こうしたスタローンのマーケティング戦略が顕著に出た映画となっていて、作り手が現代アクションの流儀に適応させようとせず、80年代後半から90年代初頭のアクション映画への回帰を示しているからです。

もともと『バレット』は、フランスの漫画原作者マッズ(本名アレックス・ノラン)がストーリーを手がけ、コリン・ウィルソンが絵を担当したグラフィックノヴェルシリーズをベースとしています。同作は2004年にベルギーの栄誉あるコミックアワード「サン=ミッシェル漫画賞」でベストシナリオ賞を獲得し、その後、英語による翻訳版が出版され、映画化の運びとなりました(映画の原題である”Bullet to the Head”は、そのときの英語タイトルを受け継いだものです)。


3.あらすじ(ネタバレ注意)

海兵隊員のジミー・ボノモ(シルベスター・スタローン)と相棒のルイス(ジョン・セダ)は、ある日、いつものように依頼を受けて殺し屋としての仕事をこなしていました。
しかし、この日は、依頼主にはめられ相棒のルイスは殺され、ジミーも殺し屋に襲われましたが、なんとか撃退することに成功しました。
ジミーは、ジミーが唯一心を許していたルイスが殺されたことにより、依頼人に復讐することを誓います。

一方ルイスの死体を見た首都警察から来たテイラー刑事(サン・カン)はすぐさまジミーが相棒であることを突き止めコンタクトをとります。
テイラーはジミーが殺し屋であることを理解したうえでその裏に潜む悪をたたくためにジミーと手を組むことにしました。

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テイラーの調べにより殺しの依頼をしてきたのはロニー・アール(ブライアン・ヴァン・ホルト)という男であることがわかります。すぐにロニー・アールのもとに向かったジミーはロニー・アールから全てを聞き出すと問答無用で殺してしまいます。

ロニー・アールはただの仲介人で自分に仕事を依頼してきたのはマーカス・バプティストクリスチャン・スレーター)という大物弁護士であることがわかります。

2人はバプティストが主催する仮面舞踏会に潜入し、バプティストを連れ出すことに成功します。バプティストをアジトに連れ帰り尋問を行ったところ依頼人はロバート・ヌコモ・モレル(アドウェール・アキノエ=アグバエ)という政治家であることが分かってきました。

ところがここで最初に襲ってきた殺し屋であるキーガンジェイソン・モモア)が部下を引き連れて攻め込んできます。銃弾の嵐の中ジミーとテイラーはなんとか湖づたいに水中を進み無傷で生還しました。そしてなんと、ジミーは自分のアジトにしかけていた爆弾を起爆させてしまいます。しかしながら、この時キーガンだけは窓から飛び出し生きながらえました。

ジミーたちは依頼人がモレルであることが分かりましたが、ジミーの娘であるリサ(サラ・シャヒ)を人質にとられてしまいます。解放の条件はバプティストが持っていたモレルの不正が記録されているUSBとの交換でした。

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ジミーは取引に応じて、テイラーとは別の経路で取引場所に向かい娘を助け出します。
ジミーとモレルのやり取りを別の場所から記録していたテイラーでしたが、ジミーがリサを連れて出ていくとなんとキーガンがその取引に不満を抱きモレルを殺害してしまいます。

こうなったら取引現場の廃ビルは戦場状態になりました。そしてジミーとキーガンの一騎打ちになりました。どう見てもキーガンの方がうわ手のように見えるのに実力は拮抗していてなかなか決着がつきません。

しかし徐々にジミーの方が押され出して、いよいよというところでテイラーが助けに来て後ろからキーガンを撃ちます。隙ができたキーガンにジミーはルイスのナイフを突き刺しジ・エンドとなりました。

一見落着かと思いきやテイラーはジミーを逮捕しなければいけないと言いだします。するとジミーはテイラーに向けて発砲します。

テイラーは病院送りになりましたが、ジミーをかばい一切この事件に関わりのない報告書を提出したのでした。ジミーとはそれ以来あっていませんでしたが、テイラーが数ヵ月後にジミーを呼び出し、もしまた悪事を働くようなら自分が逮捕しに行くと言い渡しましたが、ジミーは軽く受け流して立ち去りました。

 

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4.ウォルター・ヒル監督とスタローン

ヒルは、チャールズ・ブロンソン主演の『ストリートファイター』(1975年)で監督デビューし、いまだカルト的な人気を誇る『ザ・ドライバー』(1978年)や『ウォリアーズ』(1979年)を手掛け、『48時間』(1982年)以降はハリウッドのメインストリームでメガホンを取る機会も増えてきたウォルター・ヒル監督ですが、黒澤明の『用心棒』(1961年)リメイク企画だった『ラストマン・スタンディング』(1996年)あたりから、そのキャリアに陰りが見え始めます。起死回生の一発にもなり得たSFスリラー『スーパーノヴァ』(2000年)ですが製作途中に監督の座を追われて批評・興行共に惨敗し、いつしか主な活躍の場をテレビへと移し、気付けば最後の劇場用長編作『デッドロック』(2001年)から約10年が経過していました。

そんなヒル監督の苦境を救ったのが、『エクスペンダブルズ』シリーズ(2010年、2012年、2014年)で80年代筋肉アクション・スターたちの復権を助力したシルヴェスター・スタローンです。自身もキツいスランプ期を経験した彼は、過去の遺物扱いされる苦しみはよく分かっています。
携帯電話やパソコンが当たり前のように小道具リストに記載されるようになった現代都市アクションでも、監督の気骨はとにかくブレません。ちょっとばかし説明不足気味だったり、理屈に合わない箇所があったとしても、そんなのは勢いとハードボイルドな雰囲気で強引に押し切ってしまいます。
何たって30歳そこそこで暴れ馬サム・ペキンパー監督の『ゲッタウェイ』(1972年)の脚色をやった男です。『レッドブル』(1988年)でも見せた「走行中の車内で股間にコーヒーをこぼす」ベタネタに始まり、立場も人種も超えた凸凹コンビという設定は『48時間』から拝借、さらに『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984年)でのマイケル・パレウィレム・デフォーの決闘を彷彿させる斧を使ったバトルと、懐かしいシーンが連続で現れます。

ただ自作を焼き直しているだけかもしれません。だが今日、互いの実力を認めあったライバル同士が銃を放り捨て、斧でガッチンゴッチンと斬り合う映画なんてまさに絶滅危惧種級です。流行り廃りに関係なく、良いものは守っていかなければならないのです。したがって決闘の最中、飛び道具で茶々を入れてくるテイラー刑事は無粋極まりないということになります。

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一方、ヒル監督の男気に触発されたスタローンはと言えば、双肩から背中にかけてビッチリ彫られた自前のタトゥーも露わに年齢不相応の大ハッスルします。俳優が私生活でタトゥーを入れた場合、演じる役柄によっては撮影現場で面倒なメイクや照明調整の手間が増えてしまうケースもあります。ゆえにスタローンがタトゥーを背負った時、少しくさびしく思いましたが、今回は「社会からのはみ出し者」という理由に加え、「娘が彫師」というしょーもない設定が足されているのでノープロブレムとしましょう。それにしても御大スタローン、この時あとひと月足らずで古希(70歳)です。やっぱり凄すぎますね。


5.まとめ

作品自体は全体的に、80年代の典型的なアクション映画です。しかしながら圧倒的にタフな犯罪者であるジミーに対し、刑事のテイラーは携帯で何でも調べる今時の若者みたいな所が辛うじて現代に通じていて良いですね。